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組織でどう生きるか:『はじめての経営組織論』(有斐閣、2019) ブックレビュー#5

組織でどう生きるか:『はじめての経営組織論』(有斐閣、2019) ブックレビュー#5

我々は、生まれたときから「組織」と共に生きている。

生まれて間もないころは家庭という組織に守られて。
保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学といった教育機関で社会の構成員になるための手ほどきを受ける。教育機関も組織である。
そして、教育機関を離れ、会社などの営利団体その他の組織に属して生計を立てる。あるいは、家庭という組織の運営メンバーになる。

「組織」における自らの立ち位置や組織構成員と

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私たちは正しく考えているのか:『考える方法 中学生からの大学講義2』 ブックレビュー#4

私たちは正しく考えているのか:『考える方法 中学生からの大学講義2』 ブックレビュー#4

スマートフォンでSNSを開けば、瞬時に読める量の文章で、問題に対する“答え”らしきものが数多く提示されている。
殊更に、特定のSNSをやり玉にあげたいわけではないが、世界は140文字(今はそれ以上の文字数での投稿も可能になっているので、短時間で読める文字数)で記述可能であるとの神話を、我々は受け入れ始めてはいないか。

映像と文字・音声をセットにされると、すぐにわかった気になることができる。隙間時

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あなたも私も聞いているようで聞いていない:『プロカウンセラーの聞く技術』 ブックレビュー#3

あなたも私も聞いているようで聞いていない:『プロカウンセラーの聞く技術』 ブックレビュー#3

「あなたは人の話を聞くことができますか」
と問われたら、大抵の方は「はい」と答えるのではないかと思います。

では、
「あなたは人の話を聞くのが得意ですか」「あなたは聞き上手ですか」
と問われたらどうでしょうか。
この質問にも、「私は人の話をきちんと聞くことができます」と答える方が多いのではないでしょうか。

ところで、
・あなたの部下は、仕事でのミスやトラブルを適時に情報共有してくれるでしょうか

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仕事で感情との板挟みに苦悩する方へ:『のびのび働く技術』(早川書房、2020) ブックレビュー#2

仕事で感情との板挟みに苦悩する方へ:『のびのび働く技術』(早川書房、2020) ブックレビュー#2

「働く」という言葉から連想する言葉を挙げてください。
と問われたら、どんな言葉が浮かんでくるだろうか。

・生産性
・効率的
・論理、ロジック
・統計、客観的な数値
・裏付け、エビデンス

上記のような言葉は比較的すぐに浮かんでくるのではないだろうか。

一方で、「感情」という言葉はなかなか出てこないのではないだろうか(財務・会計・経理の素養がある人は「勘定」という言葉が浮かんだかもしれない。)。

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心を亡くすほどの忙しさを感じる現代人にとっての必読書:ミヒャエル・エンデ『モモ』(岩波書店、1976) ブックレビュー#1

心を亡くすほどの忙しさを感じる現代人にとっての必読書:ミヒャエル・エンデ『モモ』(岩波書店、1976) ブックレビュー#1

「現代人は忙しい。」
というのは、日常的によく聞くフレーズだ。また、それは日々の生活の大前提となっている。

忙しい毎日の中で時間を効率的に使うためのテクニックがもてはやされ、私たちの時短をサポートする様々なサービスの広告が流れる。娯楽のためのコンテンツも倍速で見る時代だ。

時短テクやサービスの利用によって、時間を節約しているはずなのに、忙しさはちっとも変わらない。それどころか、テクノロジーの発

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