「リファラル採用の落とし穴」との記事に触れて 醸造#6

以下の記事(「リファラル採用の落とし穴」2022年11月7日日本経済新聞電子版)に触れた所感を記しておきたい。

昨今では、優秀な人材を採用するために、自社の従業員からの紹介・推薦に基づき採用を基づきリファラル採用が行われることが少なくない。

リファラル採用は、採用する側にとっても採用される側にとっても、メリットが大きいが、この記事は、多様性という観点から、リファラル採用のデメリットに触れている。

具体的には、リファラル採用にて、紹介される人物は、紹介者である従業員と属性が似るため、組織の多様性を損ねるというデメリットが指摘されている。

以前、多様性は、次の2つに分類できることに触れた(以下のnoteご参照)。

形式的多様性:生物学上の性別、年齢、人種など外形的に容易に認識可能な多様性
実質的多様性:個々人の考え方、価値観、職歴、スキルなど外形的には認識困難な専ら当該者の内面的な多様性

リファラル採用にて、紹介者である従業員は、自らと親しい者を紹介することが想定される。また、人は、自らと似た性質を有する者と親しくなりやすい。

これらのことから、紹介される人物は、紹介者である従業員と形式的・実質的いずれの多様性の観点からも、近い属性である可能性が高い。

そのため、リファラル紹介は、組織の多様性との関係で問題があるということである。

また、上記のnoteでは、「組織文化と多様性のパラドックス」に触れた。
具体的には、多数派の構成員と異なる属性を持つ構成員(「新規構成員」)に対して、組織が期待するのは、新規構成員による多様性の醸成であるところ、新規構成員が、当該組織にある程度「染まる」ことによって、新規構成員による多様性の醸成が限定的になりかねないというパラドックスである。

組織が外部から新規構成員を採用する際には、新規構成員による多様性の醸成(新しい視点や価値観の導入)を多かれ少なかれ期待している側面がある。

リファラル採用は、組織の既存構成員と属性が近い者を採用することになるため、多様性の醸成という側面からは、デメリットがある。

このデメリットを克服するには、多数派の構成員によるリファラルのみならず、少数派の構成員によるリファラルにも積極的になることが考えられるだろう。


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