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小説『EGOILL』Chapter.1
あらすじ「〈エゴイル〉というのは、私が発見したウイルスの名前なんです」と彼女は静かに口を開いた。「エゴイルは人間をゾンビに変えてしまうんです」
予想だにしなかった回答に私は首をひねった。「ゾンビ……?」
『EGOILL』Chapter.5より
社畜(ゾンビ)人生をおくっていた滝夫は、ある女性との出会いをきっかけに、かつて志していた芸術の道を再び歩み出す。
芸術の道とは、真に人間たろ
万年筆回顧録『羽毛のタッチ』第六回
六、パイロッ党への誘い「国産万年筆の強み」と言えば、まずは特殊ペン先の存在が挙げられると思う。PILOTなら16種類、SAILORなら14種類のペン先がラインナップされている(舶来万年筆の場合、8~5種類が一般的だ)。※PULATINUMは8種類なので除外する。
この連載をお読み下さっている方なら、既にお気づきかもしれないが、僕はカリグラフィタイプの――つまり、縦線が太く横線が細くなる――ペン
万年筆回顧録『羽毛のタッチ』第五回
五、KING OF 万年筆 パイプ界には、「いつかはダンヒル」というフレーズがある(僕はシャーロキアンなので、パイプ煙草を嗜む。ちょっとしたパイプコレクターでもあるのだ)。その言葉を万年筆に置き換えるとするなら、「いつかはモンブラン」ということになるのだろうか、――そう言えば、ダンヒルとモンブランには共通点がある。どちらも本業(ダンヒルなら煙草、モンブランなら万年筆)を疎かにして、ファッションブラ
もっとみる万年筆回顧録『羽毛のタッチ』第四回
四、先生と僕 僕が川口先生と初めてお会いしたのは、2006年〜2007年頃だったと記憶している。その頃、「スローライフ」がどうとやらで、万年筆が静かなブームを呼んでいた(ムック本『趣味の文具箱』のナンバーがまだ一桁台だった頃だ)。PIOTからは色彩雫シリーズが発売されたり、WAGNERの『ペン!ペン!ペン!ファウンテンペン 私が選んだ一本の万年筆』が出版されたり、私の地元に万年筆コーナーを前面に押
もっとみる短編ミステリー『アムネシアの夜』事件簿その1
1.カヴェコのシャーペンを追え『アムネシア(記憶喪失)の夜』とは、過去にタキオンが購入したものの、買ったことさえ忘れてしまっているような――いわば、お蔵入りになった――アイテムたちをピックアップして、「いつ、なぜ購入したのか」を読者と一緒に思い出そう、というセルフ推理小説である。
今回の依頼物は、ご覧の通りだ。素敵な缶ペンケースに入った銀色のシャーペンである。
KAWECO(カヴェコ)社を知
万年筆回顧録『羽毛のタッチ』第二回
二、羽毛のタッチとPelikanフィーバー 前回の続き――PARKERソネットを購入する際に、興味本位でPelikanスーベレーンM400を試し書きしたこと――を語る前に、万年筆について予め話しておかなければならないことがある。万年筆の構え方(持ち方)についてだ。
万年筆で筆記する際には、鉛筆やシャープペンシル、ボールペンと同じように構えてはならない。万年筆用の構えとは、これ即ちペンの中ほどを持
万年筆回顧録『羽毛のタッチ』第一回
一、至高の筆記具・万年筆
万年筆のことを書こうと思う。
僕は、今では万年筆を30本以上所有している。万年筆歴は32年だ。マニアとまではいかないまでも、万年筆について人に語れるぐらいの知識は持ち合わせているつもりだ(文房具全般については、マニアを名乗ってもいいかもしれない)。
正直なところ、僕の身近な人たちの中に、万年筆を愛用している人は一人もいない。僕から受けた影響によって、万年筆を使い始め