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月星真夜(つきぼしまよ)
2024年10月12日 06:33
その日、ウサギとカメはふと気がつくと、百段階段を見上げていた。懐かしい空気が二人を包み込み、いつの間にか不思議な世界へと引き込まれていった。「十畝の間」に足を踏み入れると、目の前に広がっていたのは、月岡芳年の浮世絵の世界。彼が描いた月は、時を超え、静かに二人にささやきかけてくるようだった。「この『銀河月』って、織姫と彦星の話なのかしら?」ウサギは首をかしげながら、そっと浮世絵を見つめた。
2024年10月6日 06:09
その日、カメが図書館の閲覧席に足を踏み入れると、ウサギが一冊の本をじっと見つめ、眉間に小さなしわを寄せながら、静かにため息をひとつ、ふたつと漏らしていた。その姿は、まるでその本に彼女の人生にとって欠かせない何か、大切な答えが隠されているかのようだった。カメが音を立てないようにそっと隣の席に座ると、突然「ミッケ!」と小さな声が聞こえた。不思議に思ってウサギの本をのぞき込むと、彼女はページに散
2024年10月4日 06:22
夕暮れの六本木の片隅で、ウサギとカメは街の喧騒に身を任せていた。ふと視線を上げると、見たこともない生き物が、ウサギの澄んだ瞳に飛び込んできた。「あれは何?」ウサギは思わず声を上げた。道行く人は、その不思議な存在に足を止め、まるでそこだけ時間がゆっくりと流れているかのようだった。「今夜は六本木アートナイトなんだ。だから、街中にアートが散らばっているんだよ」カメはいつもと変わらぬ声で答えた。
2024年10月2日 06:41
その日、ウサギとカメは、いつもとは少し違う空気の中で息を潜めていた。まるで絵本のページから飛び出してきたかのような、色鮮やかなキリンやフラミンゴたちに、二人はぐるりと囲まれていた。「アフリカンアートって、野生の動物がモチーフだからかな、どこか独特な空気を纏っている気がするの」ウサギはカラフルな絵に歩み寄り、その鮮やかな色彩にじっと目を奪われた。「ティンガティンガって、創始者の名前なんだね。
2024年9月22日 06:25
秋空の下、ウサギは心にぽっかりと穴が空いたような、少し寂しい気持ちを抱えていた。田中達也展の会場に入っても、その寂しさは消えず、まるで忘れられた荷物のように心の片隅に残っていた。「ミニチュアの一つ一つが、夏の終わりと秋の気配をそっと教えてくれる気がするわ。ミニチュアって、どうしてこんなにも儚い表情をしているの…」ウサギは小さく息を吐きながら、ゆっくり髪をかきあげた。「私はきっと旅に出るの。
2024年9月17日 06:36
その日、ウサギとカメは下北沢の古着屋を訪れていた。ウサギは「そろそろ長袖が欲しいの」と呟きながら、鏡の前で自分の姿を確認しては、眉をひそめたり、口元に微笑みを浮かべたりしていた。ウサギは、買ったばかりのシャツを抱え、浮かれた気分で街へ飛び出した。軽やかな足取りの彼女は、ふと、風に揺れる案内表示に目を留め、自然と足を止めた。「ムーンアートナイトって何かしら?」彼女は眉を寄せ、まるで秘密を探
2024年9月4日 06:17
同じような毎日が続くある日、ウサギとカメは目的もなく、銀座のショッピングストリートを歩いていた。そんなふたりが、ふと足を止めたのは銀座三越だった。エスカレーターを上がると、目の前に広がったのは「トムとジェリー」の世界。アニメの中から飛び出してきたキャラクターたちが、楽しげに二人を迎え入れてくれた。「ねえ、トムとジェリーって、本当は仲がいいのかな? それとも、やっぱり敵同士なのかしら…?」
2024年8月30日 06:21
図書館の予約棚に並んだ本の背表紙を、ウサギはさっきからじっと見つめていた。「今、こういう本が読まれているのね」ウサギの視線がふと止まった。その先には一冊の絵本があった。「『パンどろぼう』……なんだか、気になるわね」と、彼女は呟いた。どこか懐かしくて、不思議な温かさが、そのタイトルに漂っていた。その時、偶然カメがそばを通りかかった。「その絵本、面白いよ。これからその世界に行ってみようよ」