色彩の魔法にかけられて
その日、ウサギとカメは、いつもとは少し違う空気の中で息を潜めていた。まるで絵本のページから飛び出してきたかのような、色鮮やかなキリンやフラミンゴたちに、二人はぐるりと囲まれていた。
「アフリカンアートって、野生の動物がモチーフだからかな、どこか独特な空気を纏っている気がするの」ウサギはカラフルな絵に歩み寄り、その鮮やかな色彩にじっと目を奪われた。
「ティンガティンガって、創始者の名前なんだね。彼が絵を描き始めて、弟子たちにその技法が広まったから、ティンガティンガアートって呼ばれるようになったんだ」カメは、展示の説明文を静かに読み上げた。
「このポジティブな色合い、本当に鮮やかだわ。サバンナの動物たちが、まるで絵本から飛び出してきたみたい」ウサギは目を輝かせながら、嬉しそうに声を弾ませた。
「この絵たち、たった6色のペンキだけで描かれているんだね。下書きもせずに、いきなり描き始めるらしいよ。それでこんなにダイナミックに感じるのかもしれないね」
「私、知らなかったけど、キリンってタンザニアの国獣なのね。だからキリンの絵がこんなに描かれているんだわ。タンザニアの誇りであり、家族愛の象徴だなんて素敵ね」
「でも、アフリカの都市に住む人たちが、実際に野生動物を見たことがないなんて驚きだわ。長老たちの話や写真を頼りにイメージを描いているなんて、本当にびっくり。今では、野生動物は保護区にしかいないのね」
「それでも、今でもバオバブの木の下で絵を描いているっていうのが、なんだか素敵だよね。そういうところが、やっぱりアフリカンアートらしさを感じるんだよね」
展示会場には、鮮やかなキテンゲ柄の布や、少し珍しいアフリカの雑貨がずらりと並んでいた。二人は色彩の魔法に魅了され、その場をなかなか離れることができなかった。
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