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(エッセイ)キユーピーの3分クッキング
最近、とつぜん人に声をかけられることが多い。だいたいが道を訊かれたり、キャッチだったり。そのとき、あまりにもとつぜんなものだから「わ、びっくりした」と言ってしまう。それで向こうも「驚かせてすいません…」みたいになったり、向こうも向こうでびっくりしたり。
それにしても道を歩いている際の、死角から人が現れることの怖さと言ったらない。雑多な風景の中に、顔、あるいは声が現れるのである。ぼやーっとした中
絶対にパーティを抜け出したい男VS絶対にパーティを抜け出したくない女
パーティが開かれていた。会場には「パーティ」と書かれた文字が、いたるところに記されていた。招かれた客たちは、口々に「パーティだ」「わあ、パーティだ」「パーティ楽しいね」と浮かれていた。だが田中は白けていた。なにがパーティだよ。バカどもが。はしゃいでいるやつらはみんなバカだ。周囲を見渡すと、壁にもたれかかるようにして女がワイングラスを傾けていた。細身で色白、高身長、猫顔、まさに田中のタイプだった。
もっとみるニヤニヤが止まらない太田vsニヤニヤを止めたい谷口
青山通りに面したカフェのオープンテラス、そのうちもっとも通りに近い一席に座り、太田は口角をわずかに上げる。だがここは表参道、不用意に込み上げてくる、しかも理由のわからない笑みは、絶対におさえなければならない。そもそもこれはデートだ。表参道でのデート。だが、どうしても笑みが溢れてしまう。理由はわからない。まったく分からない。思い出し笑いなどではない。なにも思い出していない。痙攣も疑ったが、これは完
もっとみるBFC落選展「風船」
風船を持って、車に走っていくんだ。車はベンツかセンチュリーか、わからないけど黒く光ってて、後ろの扉が開いてる。僕は風船の紐を持って、走っていく。車に乗ろうとすると、手に風船がないの。見上げたら、赤い風船が、空を上がっていくところで。僕は風船を持ったまま、車に乗りたいのに。「泣かないで」うん。「風船が飛んでいったのに気づいたとき、どんな気持ち」わかんない。悲しい、とか、怖い、とか。「風船の紐が抜け
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