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診察室の扉を開けたら、予想外の出会いが待っていた話

診察室の扉を開けたら、予想外の出会いが待っていた話

6年ほど前のこと。鬱で夫が倒れてしまったことがあった。

家から出ることもままならない彼に、今自分がかけている言葉が、やっていることが正しいことなのか、私自身も日に日に分からなくなってしまっていた。

悩みを抱えている本人はもちろん、それを支えようとする人もまた、孤独になりやすいと聞いたことがある。

悩んだ末に、義父が知っている精神科に伺うことになった。

といっても、「精神科に行こう」と声をか

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死の知らせを聞く側

死の知らせを聞く側

「〜の結婚式の新婦さんが亡くなった」と仲間からのLINE。「ひゃっ」と小さな悲鳴と共に、携帯を落としそうになる。というよりも、私自体が世界の隙間に落ちてしまいそうな気持ちになる。「何で?なんで?」そうすぐ返信するも、その仲間も理由はわからない、という。この1ヶ月でそんな風に2人の死の知らせを受けた。死の外側で急に死の知らせをもらった側に、その死に関する情報はあまりにも少ない。近くにいる人たちは、急

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弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった

弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった

高校から帰ったら、母が大騒ぎしていた。
なんだなんだ、一体どうした。

「良太が万引きしたかも」

良太とは、私の3歳下の弟だ。

生まれつき、ダウン症という病気で、知的障害がある。
大人になった今も、良太の知能レベルは2歳児と同じだ。

ヒトの細胞の染色体が一本多いと、ダウン症になるらしい。
一本得してるはずなのに、不思議ね。

「良太が万引き?あるわけないやろ」

ヒヤリハットを、そういう帽子

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高校の卒業式で遺書を読んだ話

高校の卒業式で遺書を読んだ話

3月1日でございます。もう2週間もすれば福岡は桜が咲き始めるようです。わたしは今日も足先を冷やしながらパソコンデスクに向かっていて、どうも春になりきれずにいます。

みなさんこんにちは。村谷由香里です。
noteをご覧いただきありがとうございます。

今日は高校の卒業式だった方が多いのでしょうか。ツイッターのタイムラインでもちらちら見かけたような気がします。
ご卒業おめでとうございます。3年間高校

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「スカートめくり?なんだそれだけのことか」のすりこみ

「スカートめくり?なんだそれだけのことか」のすりこみ

「Stop it at the Start」…そんなタイトルのTVCMがオーストラリアで反響を呼んだ。

セリフはこうだ。

Father: C’mon then, what happened?
(父:さあ、何があったんだ?)

Son: I got detention just for flicking up a girl’s skirt.
(息子:居残りさせられた。女の子のスカートをめくっただ

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美意識のある経営を。

美意識のある経営を。

「美意識のある経営」というのを、生涯のテーマに掲げていきたいと思っています(大げさですが)。それはもちろん「自社」もそうだし、「他社」に対しても普及していきたいテーマです。

「美意識のない企業」の仕事はしないし、「美意識のない提案」はしないようにしていきたい。そして「美意識のない企業」は淘汰されていくような社会になればいいなと思っています。

ここでいう「美意識」とは、「物理的な審美眼」だけでは

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ママを探す、お父さんとの冒険。

ママを探す、お父さんとの冒険。

妻はぼくのことをお父さんとよび、ぼくは妻をお母さんと呼んでいる。

でも息子の生きる世界では、だれかにぼくたちのことをパパママと呼ばれることが圧倒的におおい。だから息子はぼくのことをおとーさん、妻のことをママと呼んでいる。

ぼくのことをパパと呼ばないのは、だれかにパパと呼ばれる回数よりも、妻が息子にぼくの話をしている回数がおおいからだとおもう。

この日は職場の食事会が夜にあり、18時す

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【私は私を幸せにする】

【私は私を幸せにする】

旦那と入籍をして、今年で13年目を迎える。5年ほど付き合って結婚したので、トータル18年も一緒にいる。私が実家で過ごした年数を越すくらい一緒にいたんだなぁ、と感慨深くもある。

当たり前だが、好きで結婚した。愛し合ったうえで一緒になった。おそらく旦那の側も、そのときの気持ちに偽りはなかっただろうと思う。

どこですれ違ったのか、思い返せば行き当たるのは、やはり妊娠がきっかけだった。入院するほど酷い

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箱庭あそび

箱庭あそび

わたしの家にはSwitchが一台しかないので恋人と一緒に使っているんだけど、わたしが先にどうぶつの森を始めたので彼は強制的にわたしの作った島に住むことになりました。

村谷由香里です。
noteをご覧いただきありがとうございます。

「狂い女が妄想によって未開の地を怪異の孤島にしたてあげる」というコンセプトで箱庭あそびを楽しんでいたんだけど、そこに「何も知らない一般男性」が強制的に連れてこられたこ

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死ぬかもしれないから、言っておきたいこと。

死ぬかもしれないから、言っておきたいこと。

ガン患者になってちょうど一年がたつ。
この一年はまさに激動だった、充実していたともいえるのであっという間に過ぎたようにも感じた。このペースで進んだらあっというまに人生が終わってしまいそうだ。

去年とおなじように今年も病院でクリスマスと年末年始も過ごすことになった、じつは肺炎で入院している。肺炎ってはじめてなったけどけっこうヤバい。

いつもの仮病とは明らかにちがう様子に妻が異変を感じ、大学病

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とあるダメな新米コピーライターの昔話。

とあるダメな新米コピーライターの昔話。

先日、博報堂の先輩と飲みながら「昔話」をした。とある「コピーのかけないコピーライターの話」だ。

そのコピーライターは、本当にダメなコピーライターだった。広告のイロハもわからず、きちんとした文章を書く訓練もされていない。出身が理系だったからか「間違ってはいないが、おもしろくもない」そういうやつだ。

そんな中、新規プロジェクトが始まった。上司のCDが言った。「この仕事はお前がメインのコピーライター

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最愛の母に「死んでもいいよ」と言った日

最愛の母に「死んでもいいよ」と言った日

「ママ、死にたいなら死んでもいいよ」

大好きな母に、私が放った言葉です。
高校2年生の時でした。

ひどい娘だと思いますよね。
私もそう思います。
でも、母を救う唯一の言葉でした。
それしか見つからなかった。

話は少しさかのぼりまして。

私が中学2年生の時、父が突然死しました。
働きすぎによる、心筋梗塞でした。

父は建築系ベンチャー企業の経営者で、めちゃくちゃカッコいい存在でした。めちゃく

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お葬式のあと、母は一度も泣かなかった #あの日のLINE

お葬式のあと、母は一度も泣かなかった #あの日のLINE

昔から、細かい数字を覚えるのが苦手だ。

自分の身長、50m走のタイム、友人の誕生日、恋人の記念日、宿題の提出期限。
すべて覚えていた試しがない。

そんな私が唯一、細かく覚えている数字がある。

2005年6月9日18時42分。
父が亡くなった時間だ。

「娘さんが中学校から到着するまで、頑張って待っていらしたんですよ」

時間を読み上げたあと、病院の先生が言った。
むしろ私の記憶は、そこからお

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