安田菜津紀(フォトジャーナリスト)

認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。TBS「サンデーモーニング」出演。 https://d4p.world/

安田菜津紀(フォトジャーナリスト)

認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。TBS「サンデーモーニング」出演。 https://d4p.world/

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    国籍と遺書、兄への手紙

     なぜだろう。30代になってからふと、亡くなった家族のことを思い出すことが増えたように思う。もしかするとそれは、当時の兄の年齢を、私が追い越してしまったからかもしれない。  兄が亡くなったのは、中学卒業を間近に控えた春だった。「前を向いて歩きなよ。過去は変わらないんだから」。当時の友人たちが、私にそんな言葉をかけてくれたのを覚えている。落ち込んでいる私を、何とか励まそうという精いっぱいの言葉だったと思う。その気持ちには今でも大きな感謝を抱いている。  けれども「過去は変わ

      • 「こっちだって辛いんだ」という言葉と「特権」

        女性差別に声をあげると、こんな言葉が跳ね返ってくることが少なくない。 「男性だって辛いんだ」 「男性の辛さをまず理解ようとするべきだ」 私は男性の生きづらさをなきものにしたくて声をあげているのではない。むしろその生きづらさが、男性中心主義的な社会の中から生み出されてしまうものなのであれば、共に声をあげてほしいと思っている。 そしてそもそも差別の問題は、力の不均衡の中で起きる。「その不平等を変えたい」と声をあげているのに、構造的に権力を持っている側が「まず、自分たちのこ

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          10月31日、衆院選の投開票日に、TBSラジオの総選挙スペシャルにお邪魔し、直接各政治家に質問する機会を得ることができました。 長い番組ですが、どの政治家へ、どの時間帯に質問したのかは、概要欄のタイムスタンプを参考にして下さい。 気になった点をピックアップしていきます。 《①公明 山口那津男氏》今回、公明党の女性候補者の比率は7.5%に留まり、他党と比べて最低でした。しかも2017年の衆院選では9.4%であり、前回よりも比率が下がっています。この点についての山口氏の返答

          • 皇室と結婚を巡る「呪縛」のような報道

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            『イカゲーム』とジェンダー

            Netflixで、『イカゲーム』が記録的なヒットとなっている。 多額の借金を背負う者、人生の終焉が近い者、社会に行き場のない者たちが、ある日突然、謎の男に声をかけられ、「一攫千金」のゲーム大会に誘われる。破格の賞金に目がくらむ参加者たちだったが、彼らが足を踏み入れたのは、脱落すれば生きては外に出られない、命がけのゲームだった。 それでも彼らがこのゲームにかけたのは、一歩外に出たところで、そこが「地獄」だと分かっていたからだ。 ひとつひとつのゲームは、「だるまさんが転んだ

            皇室と結婚の「報道」に感じる理不尽さ

            「両性の合意に基いてのみ」婚姻が成立するはずのこの社会で、生まれながらにして「国民」扱いされず、寄ってたかって自身の結婚を「認める」「認めない」と言われ続けなければならない立場に置かれてしまう不条理…報道に触れる度、そんな違和感を抱いていた。 「こっちは税金払ってるんだから」という乱暴な声さえ耳にする。自ら立候補した国会議員と違って、彼女は生まれながらにして今の立場にある。「お金が絡むんだから結婚にも口を出されて仕方がない」かのような立場に誰かを追いやっていること自体が、非

            「9.11」とアフガニスタンで起きてきたことを知るための4本の映画

            2001年9月11日、米国同時多発テロから20年という月日が経ちます。当時中学生だった私は、崩れ落ちていくビルの映像が現実のものとして受け止められず、しばらくは「映画の宣伝映像だろうか?」と考えていたほどです。 その後、当時のジョージ・W・ブッシュ政権は、この事件の首謀者は国際テロ組織「アルカイダ」の指導者オサマ・ビン・ラディン氏だと断定し、容疑者らをタリバン政権がかくまっているとしてアフガニスタンに「報復攻撃」を開始します。連日のように星条旗とアメリカ国歌で埋め尽くされて

            「在留資格がない方が悪いでしょ」という声に

            なぜこれほど、「真相解明」から遠のいていくのだろうか。 3月6日、スリランカ出身のウィシュマ・サンダマリさんが名古屋入管の収容施設で亡くなってから、半年が経とうとしている。 8月10日に入管庁が公表した、ウィシュマさんの死についての「最終報告書」は、「最終」というにはほど遠いものだった。施設の医療の制約の問題など、表面的な問題をなぞるに留まり、そもそもの収容のあり方や制度の見直しには切り込んでいない。 さらに、ウィシュマさんの居室の監視カメラのビデオ映像2週間分を、入管

            ホロコーストを知るための映画、本、児童書

            東京五輪・パラリンピックの開会式・閉会式で「ショーディレクター」を務めるはずだった小林賢太郎さんが、過去に「ユダヤ人大量虐殺ごっこ」など、ホロコーストを揶揄するコントを制作していたことが問題視され、解任されました。 私は小林賢太郎さんの独り舞台を見に行ったことがあり、影や音を駆使して小さな空間を巨大に見せる手法に感銘を受けたことがありました。今回、「彼のような才能をつぶしてはいけない」と小林さんをかばう声もあがりましたが、クリエイティビティがあらゆる発言の「免罪符」になるわ

            置き去りにされた五輪の「そもそも」を問う

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            「撮らずに助けるべきだ」について

            警官に抑え込まれるジョージ・フロイドさんを撮影したダルネラ・フレーザーさんが、ピューリッツァー賞の特別賞に選ばれました。 彼女の撮影した動画はSNSを通して拡散され、全米、そして世界で「BLACK LIVES MATTER」のスローガンの元、構造的な差別の問題に抗議活動が広がるきっかけの一つとなりました。 「権威」としてのピューリッツァー賞のあり方自体に疑問はありますが、それについては別の記事で触れています。ただ、この受賞によってふたたび、フロイドさんの事件に光が当てられ

            「わがままだ」「生意気だ」「迷惑だ」が声をかき消してしまう前に

            大坂なおみ選手が5月31日、「私は邪魔になりたくなかった」などというコメントと共に、全仏オープンを棄権する意向を表明した。大坂選手は自身のツイッターで「アスリートの心の健康状態が無視されている」と発信し、試合後の記者会見に応じない方針を示していた。また、2018年の全米オープン優勝後からうつ病になり、その後も苦しみが続いていることも明かしていた。 大坂選手に対し、大会主催者は1万5000ドル(約165万円)の罰金を科したほか、規定違反が繰り返されれば大会出場停止処分の可能性

            cakesの人生相談連載に思うこと。

            「cakes」での写真家、幡野広志氏による相談連載「幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。」で、4月26日に公開された記事に多くの批判の声が寄せられました。 記事は、14歳の中学生から寄せられた相談への回答で、幼馴染が家庭内暴力や金銭搾取を受けているなどといった悩みに対するものでした。 これに対して幡野氏は「キミの友達が悪いとはまったくおもいません。ただ若いだけ。そして環境に恵まれなかったというだけ。友達が自分で解決できる環境でもないし、解決する力も知識も行動力もまだ持って

            「身近ではない」から報じないのかー「JAM THE WORLD」終了に寄せて

            6年間、お世話になってきたJ-WAVE「JAM THE WORLD」が、3月31日で幕を閉じることとなりました。番組自体が積み上げてきた歴史は20年近く。リスナーさん、出演者さんには大きな感謝を抱いています。 私が担当している水曜日は、スタッフさんたちと相談をしながら、社会的マイノリティーの方々のこと、福祉の問題に重点的に取り組んできました。 それは、芸能ニュースやスポーツの話題のように、必ずしも数多くの人が「身近」に感じる話題ではないかもしれません。 以前、あるテレビ

            「なんだ、彼氏のことか」と言われて

            10年前の3月、海辺からどこまでも広がる瓦礫を前に、ただ茫然と立ち尽くした。岩手県陸前高田市は、市街地が壊滅的な被害を受けていた。私自身は神奈川県の出身だ。ただ、あの当時、夫の父、母が暮らしていたのがこの街だった。 義理の父は病院の4階で津波にのまれながらも、なんとか助かることができた。けれども義理の母は、震災から1ヵ月後、川の上流9キロ地点の瓦礫の下から発見された。 震災当時、私たちは婚姻届けを出していなかった。元々「形」にこだわりがなかったため、書類上での「結婚」をす

            森喜朗氏の「女性がたくさん入っている会議は時間かかる」発言を「下支え」しているものは何か

            東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が2月3日、JOC(日本オリンピック委員会)の臨時評議員会で下記のような発言をしたことが報じられました。 「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」 「女性の理事を増やしていく場合は、発言時間をある程度、規制をしないとなかなか終わらないので困ると言っておられた。だれが言ったとは言わないが」 全文はこちらの記事に記載されています。