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雑文ラジオポトフ

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今田の雑文です。
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#雑文

はちのみつうまくいかないこともある

はちのみつうまくいかないこともある

 現代川柳と400字雑文 その80

 俗に、はちみつはのどにいいとされる。わたしが脚本と演出を務めた舞台公演の楽屋に、大きなボトルのはちみつが置かれていたことがあった。絶叫に近い発声が多くあった作品で、のどのケアが必要と考えた誰かが用意したのだろう。やがて、ボトルを掲げて口を開け、のどにはちみつを直接流しこむ者たちが現れた。Uさんもそのひとりだった。Uさんは演出の指示に全力で応えようとしてくれる

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ゆるキャラの中で時計の音がする

ゆるキャラの中で時計の音がする

 現代川柳と400字雑文 その79

 ハローキティはゆるくはない。が、いわゆる「ご当地キティ」はどうか。いまもあるのかわからないが、かつて見た屋久島のご当地キティは、屋久杉に包まれたキティがまぶたを閉じているという、どこか植物の反乱を思わせるデザインだった。ゆるさとは真逆のアプローチにも思えるが、そうしたデザインがひょいと商品化されること自体になにかしらゆるさを感じる。鹿児島県には屋久杉キティの

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スラッシャー映画のロケ地弓道場

スラッシャー映画のロケ地弓道場

 現代川柳と400字雑文 その78

 慣れ親しんだジャンル映画は落ちついて観ることができる。本来ハラハラさせるのが主目的のはずのスラッシャー映画も、ハラハラさせてくれるのがわかっているからハラハラせずに落ちついて観ることができる。ハラハラせずにハラハラを観て楽しいのか。楽しい。というか安らぎの感覚に近い。これは矛盾した欲求ではない。「難解な映画が好き」という知人にその真意を訊くと、映画を観て過度

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ひとつぶのお米が街にやってきた

ひとつぶのお米が街にやってきた

 現代川柳と400字雑文 その76

 過去の自分に勇気づけられることがある。もう20年ちかく前、いまも付き合いのある大学時代の後輩のセーターの袖口に、柿の種が付いていたことがあった(ちょうど柿の種にハマってた時期だったらしい)。それを指摘したわたしは、顔を赤らめる後輩にこう言ったという。「いや、好きならいいと思うよ」なんだそれは。おもしろいじゃん。かつて書いた作品(脚本)を読み返し、まあ悪くない

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これからのことを切り絵で示される

これからのことを切り絵で示される

 現代川柳と400字雑文 その75

 歌は伝達手段のひとつだ。大事なことを歌詞にして、メロディに乗せて伝える。愛は大事。友情も大事。もちろん戦争は良くない。しかし落ちついて考えると、歌にする時間があるならさっさと口で言ってしまったほうが確実なのではないか。いや、それだとロスが大きいのかもしれない。つまり伝達内容が「心に刺さらない」と。加えて、歌は内容を不特定多数に同時に伝えるのも得意だ。すこし前

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夢のなかDIYが終わらない

夢のなかDIYが終わらない

 現代川柳と400字雑文 その74

 厳密に言えばDIYは日曜大工のみを指す言葉ではない。むろん厳密に言ってどうなるということもない。自主的、自己的、自作的。よし、それらの概念をざっくりひっくるめて Do It Yourself ということにしようよ〜。どこかの段階でだれかがなんとなくそう決めた。その決定プロセスにはあなたも関わっていると思う。いや、厳密に言えば決定すらしておらず、「いつのまにか

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ケルベロス相談できる人がいて

ケルベロス相談できる人がいて

 現代川柳と400字雑文 その77

 3つの頭を持つ「地獄の番犬」ケルベロス。キャッチフレーズはおどろおどろしいが、3つの頭が交代に眠って残りの2つが見張りをするらしく、想像するとかわいらしいとすら思えてくる。よし、ここはいっそ「寝るの大好き!」ケルベロスにしてはどうか。あるいは「3頭なかよし!」ケルベロス、とか。もはや相手を威嚇したり、恐怖心を利用してコントロールするような時代でもない。それに

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もうくまにあえないつらいくまいない

もうくまにあえないつらいくまいない

 現代川柳と400字雑文 その73

 処方せん薬局。ちがうのはわかっているが、どうしても「処方しない薬」の意味に読んでしまう。処方箋。たしかになじみのない字だ。ほかにもニュース等においてひらがなにひらかれがちな漢字は多くあり、いずれもふだんはほとんど見かけることのない字である。だ捕(拿捕)、警ら(警邏)、猛きん類(猛禽類)………あと、割ぽう(割烹)というのもある気がするが、これは割烹料理店が店名

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犬に月見せて月には犬見せて

犬に月見せて月には犬見せて

 現代川柳と400字雑文 その30

 先日(2022年11月8日)の月食は楽しんでいただけたでしょうか。欠ける月そのものより、誰もが外へ出て月に向けスマホをかざしていたあの光景が印象に残った方も多かったようだ。わたしも驚いた。しかし、わたしは見た。スマホをかざす人々の中に、犬をかざしている人も何人かいた。どういう状況だ? わたしは犬を飼ったことがないのでイメージできないが、月食を写真におさめたい

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ダルマ置きあるならすぐにでも置くさ

ダルマ置きあるならすぐにでも置くさ

 現代川柳と400字雑文 その33

 大学1年生のころ、PowerPointを習う授業があった。かんたんなグラフを作り、授業の最後に人前でプレゼンまでさせられる授業だ。個人的には、とくに訴えたい内容もないのに無理やりグラフを作らされるという体験が興味深かった。よし。1秒だけ考えると、わたしは、群馬県のダルマの生産量の推移を示すグラフ作成に着手した。なぜダルマか。そこに理由は無い。なんとなくのダル

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いい幅にはまった赤子光りだす

いい幅にはまった赤子光りだす

 現代川柳と400字雑文 その31

 わけのわからない書き出しだが、ここ最近、街で見かけた赤子を描写しておもしろがることに凝っている。やっぱりわけがわからないと思う。ツイッターでハッシュタグ「赤子がよかった」を検索してもらうのがいちばん早いと思う。わたししか使っていないタグである。ひとことで説明すれば、これは赤子の「かわいさ」を「おもしろさ=笑い」に変換する遊びだ。ルールは事実ベースで書くこと。

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ダイイングメッセージでのマヨビーム

ダイイングメッセージでのマヨビーム

 現代川柳と400字雑文 その72

 幼いころはマヨネーズが苦手だった。酢の酸味がだめで、酢の物など直接的なものはいまもかなりだめだ。マヨネーズはかなり克服できた。克服? 正確には「どうでもよくなった」というのが近い気がする。ときに人は苦手な食べ物が食べられるようになることを「克服」と言いがちだが、それはたんに感覚の鈍磨が引き起こした現象とは考えられないだろうか。だとすれば、克服どころか「衰退」

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あらわないあらがわないとわけないと

あらわないあらがわないとわけないと

 現代川柳と400字雑文 その47

 幼いころよく観ていたアメリカの医療ドラマ『ER』には、手術の前に医者たちが手を洗うシーンがよくあった。なにか小さいブラシのようなもので爪の先をシャカシャカと洗いつつ、患者のことや私生活について語りあうのだ。そういえば『ER』には生放送の回があって(もちろん現地での話。西海岸と東海岸の時差にあわせて1日2回やっていた、と記憶している)、アメリカのドラマの底力に

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自治会に行ってくるよと霧になる

自治会に行ってくるよと霧になる

 現代川柳と400字雑文 その66

 失踪して行方不明になることを「蒸発する」と言うのは言い得て妙だ。たしかに人間は水分でできているから蒸発することもあるだろう。つまり気化である。気体として大気中に広がり、これまで見慣れた人間としての姿ではなくなる。しかし物理的にはそこにいるのだ。ただ、その後ふとした拍子にまたもとの形をとってあらわれることを「凝縮する」とは言わない。言えばいいのに。「ほら、3年

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