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【兎角が紡ぐ】絶望を愛せよ、少女
純潔と共に奪われた右腕。
散らした純潔の残り香は生臭い血の臭い。
私を愛した歪な彼は、満足げに私を見て微笑む。
「大丈夫、僕が君の右手になるから」
止血帯を手に、彼は続けた。
「だから、ずっとずっと、そばに居ておくれ」
「嫌よ」
「そんな連れないところも魅力の一つさ」
反吐が出る。
―――
潰され、もはや人体としての機能を失った右腕が疼く。痛みはもう、麻痺した。
左手は自由だ
【兎角が紡ぐ】高架下の秘密
頭上でガタンゴトンと列車が走り去る音の響く高架下。
影の濃くなる壁際に、その少年は座り込んでいた。
目の前に広がる海の入口にはテトラポッドが点々と浮いており、微かに波の音が響く。
ぼーっと視線を地平線へ向けたまま、身じろぎ一つしない。
刻限は18時を跨ぐ頃か。
通りかかる人も居ない中、少年は一人、座り続ける。
よく見ればその頬は擦り傷で汚れ、眼の周囲には痣らしきものが浮かんでいた。
【霧雨兎角のお絵描き備忘録】
【初めに】
初めましての方は初めまして。
既知の方は適当に日頃の愚痴をどうぞ。兎虐も良いぞ!
さてさて、本記事(?)では、2022年7月21日からお絵描き(デジタル・板タブ)の世界に急遽飛び込むことになった霧雨兎角が、イラストを描く練習の過程で感じたことなどをタイトル通り、備忘録として記録していきたいと思います。
文面等はいずれ整えるとして、取り敢えず忘れない内に形だけ作っておくことにしま
【兎角が紡ぐ】猫様【徒然文筆家】
この世界は猫様の見る夢である。
創造主たる猫様が夜な夜な想像に耽る世界が、この世界の真実。
猫様を讃えよ。猫様はいつでも貴方を見ている。
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曇り時々雨、今夜も世界は灰色一色。月明りも届かぬ部屋の中、ただ虚空を眺め、ため息一つ。
傍らには愛猫の猫様。私の相方。手で触れていなければ、そこに「在る」ことすら認識できないほど静かに、ただそこに「在る」。
猫様を見習った生活
【兎角が紡ぐ】素直になれない【我が子お披露目のお話】
「お前、好きな奴とかいねーの?」
遠くに聴こえるは祭囃子。
微かに鼓動を速める、焦燥を孕んだ夏の香り。
他愛のない会話がそこに在った。
「健司には関係ないじゃん」
「相変わらず愛想が無いな、醒」
「……それでも一緒に居てくれるよね」
醒と呼ばれた細身の少年はそっぽを向きながらそう呟き、健司と呼ばれた体格の良い男は何が面白いのか、微かに笑みを浮かべる。
「なにさ」
「さて、なんだろうな?」