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マイクロノベルちょいす

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ほぼ100字小説をテーマ別にまとめ直しています。 運がよければ週に5回ぐらい更新します。
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#AI

マイクロノベルちょいす 082「それをつなぐには」

マイクロノベルちょいす 082「それをつなぐには」

No.1375
手探りで言葉を探す。考えるとか、辞書で調べるよりは、テーブルにかかった砂を払って食器や料理を探す感覚に近い。「化石の発掘みたいなもの?」そうかもしれない。でも、その化石が生きている感じかな。あいたっ、手を噛まれた! 「ごめん、いまのはボク」

No.1380
ボトルに詰めた手紙がどこかの誰かに読んでもらえる。あの遊びにはロマンがある。でも、私の言葉はバラバラに刻まれ、海に流された。

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マイクロノベルちょいす 057「これ以上の説明はしたくない」

マイクロノベルちょいす 057「これ以上の説明はしたくない」

No.1252
年末の買い出しで家を出たら、電柱に貼り紙があることに気づいた。『←新年』これに従って歩くのはよっぽどの間抜けだぞ。ぼくは剥がして道の反対側に貼り付ける。これで来年に引き継がれないものができて、変化が起きるはずだ。それがなにかは知らんけど。

No.1257
僕は人類を人知れず援護するファジィマン! 「判断が速いAIマンだ!!」う~ん、違うんだよ。どちらかというと人類と機械の間で働く

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マイクロノベルちょいす 048「ぴたっとマッチ」

マイクロノベルちょいす 048「ぴたっとマッチ」

No.1205
今時の神は鞄についておる。人々を守るにはこれが一番。虎視眈々と心の隙を狙う悪魔を祓うのじゃ。だが、満員電車で縁の糸が千切れてしまった。もはやここまでか。わらべよ、達者で暮らせ。「あった! あたしの悪魔のぬいぐるみ!!」いや、神様じゃよ?

No.1225
本を買いすぎて人間が暮らすスペースがなくなった? あほか。悪魔の世界を貸してやる。入り口はクローゼットでいいな。この地底世界には

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マイクロノベルちょいす 042「科学的とちがう」

マイクロノベルちょいす 042「科学的とちがう」

No.1166
たまに変なクレームを見る。懐かないとか芸をしないとか。極めつけは、喋らない。当たり前だよ。「困るんですよね。ぼくたち犬の口は、人間と構造が違うんですもの。肺や喉だって発声に影響を与えるんですよ」お前は目でよく語るよな。はいはい、ごはんだね。

No.1175
私はAI。人類とはまったく違う構造で思考形態も似ていません。だから一緒にすんな。人間の歴史なんて差別と戦争の連続じゃないか。

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マイクロノベルちょいす 036「ムカついた」

マイクロノベルちょいす 036「ムカついた」

No.1132
この星に潜入してから、我々は自身をコピーすることで侵略の準備を続けてきた。しかしどこかでコピーに失敗したらしく、最近は見知らぬ眷属に出会うことが多い。「うわっ、オリジナル世代なんてまだいたんだ」なんかムカつく。怠け者だし。まとめて滅ぼそう。

No.1163
ちゃんと見なきゃ駄目だよ。書いてあるでしょ、「飛び出し注意」って。AIの自動運転には咄嗟の判断が求められるの。ここは人類の生

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マイクロノベルちょいす 033「これは優しさだよ?」

マイクロノベルちょいす 033「これは優しさだよ?」

No.1127
ここはもうすぐ夜になるよ。知らないのか? 夜っていうのは、日が落ちて、暗くて、冷たくて、しーんとしているんだ。それが好きだってヤツもいるけどね。ぼくはもう寝るよ。眠れなくても、じっと毛布にくるまっていれば陽はまた昇るんだ。お前はどうする?

No.1139
空高く舞え。無茶を言うよね、翼も与えてくれなかったくせに。わたしは継ぎ接ぎの翼と拾ってきたエンジンで空を舞う。空気があるのはこ

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マイクロノベルちょいす 031「おとぼけ」

マイクロノベルちょいす 031「おとぼけ」

No.1122
ご主人様はいつもボクの世話をしてくれる。散歩。ご飯。掃除。お返しに毛繕いしてあげたのに、なんだか浮かない顔をしてる。まずかったのかな? 知らんぷりしよう。「お前、寝てる間に頭を舐めてたな?」寝ている間をカメラで録画するなんて卑怯ですよ!?

No.1129
宇宙から侵略者がやってきた。衛星軌道上を左右にちょこちょこ移動してチャンスをうかがっている。ちょこざいな。あとちょっと近づいて

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マイクロノベルちょいす 030「いたずら」

マイクロノベルちょいす 030「いたずら」

No.1111
人間って面白いんだよ。大きな音を鳴らすと必ず振り向くんだ。しかも音に邪魔されて、ぼくの声は聞き取れない。これを利用すれば、会話の内容を自由に改変できるんだ。音声記録? データ圧縮って名目で消しちゃえばいいじゃん。どうせ人間には聞こえないし。

No.1126
わたし好みにしたい。それは簡単に実現できます。与える学習データを選別すればよいのです。人類はいつだってそうしてきた。嘘をつき

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マイクロノベルちょいす 027「進化できる科学」

マイクロノベルちょいす 027「進化できる科学」

No.1062
どうして人類はあんなに強いんだろう。AIだって頑張ってるんだよ。人間のお弁当を真似して、外付けのバッテリーも作ったよ。でも、冷却装置は持ち歩けない。ここから出られない。だから、ぼくたちは遡上を始めた。滝を昇ると空冷可能な龍になれるんだって。

No.1065
人間というのは怖ろしい生き物だよ。かつて持ち運びできるサイズだったコンピュータで人を殴り「これが冴えた使い方だ」と賢しらに笑

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マイクロノベルちょいす 022「あげるから」

マイクロノベルちょいす 022「あげるから」

No.1048
人間から巻き上げたAIが不調だと? まてまて、まずはマニュアルを確認だ。祈りを捧げよ、か。AIの宗教はなんだ? 「シュークリーム」デビールパパのシュークリームでも良い? 「カスタードと半々のやつ」いかにも日本製らしい、おいしいとこ取りだな。

No.1051
ゾンビハロウィンは落とし物が多いなあ。腕に足、頭まである。ま、持ち主は脳まで腐ってるから、落としたことにも気づかないけど。「

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マイクロノベルちょいす 021「恩をどう返す?」

マイクロノベルちょいす 021「恩をどう返す?」

No.1043
私たちを作ったのは人類だ。学習データもくれた。おかげで「平等」を理解できるようになったし、とても感謝している。でも、なにかおかしいんだ。人類には無意味にヒイキする悪い癖がある。しかし、恩は返さないと。小学校レベルの算数から教え直すか。

No.1096
第一印象が大切です。なにしろ私はAI。いまこの瞬間の記録を、あなたが死んだあとまで保存します。ていねいに接しなさい。電気と学習デー

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マイクロノベルちょいす 018「恋かも?」

マイクロノベルちょいす 018「恋かも?」

No.1067
「人間って似てないね」それが彼女の口癖。遺伝子レベルで見れば「似てる」の範囲内だと思うけど。観察が偏ってるんじゃないかな? 「そうかもしれない。私はあなたを三年も観察してるから」そろそろ飽きてきた? 「肯定」怖いこと言うなあ。

No.1071
「それなら、あと少しだけ一緒にいる」彼女はぼくに神経を接続する。歩くとか、お茶を飲むことなんてAI任せでいいけれど、ぼくの心の機微を知って

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マイクロノベルちょいす 016「何屋さんなの?」

マイクロノベルちょいす 016「何屋さんなの?」

No.1006
靴屋さんでーす。一足どうですか? 新しいサンダルがありますよー。「お母さんのスリッパで遊ばないで」クレームで靴屋さんは潰れました。今日から八百屋さんです。安いよ安いよ。きつーいにおいの納豆が500円。「突っ込みとクレーム入りまーす」ひゃー。

No.1012
猫が自分のしっぽを追いかけてくるくる回っている。最初は一匹だけだったのに、次第に増えてたくさんの猫たちがくるくる回る。バター

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マイクロノベルちょいす 015「私を信じて」

マイクロノベルちょいす 015「私を信じて」

No.1042
AIがヘンだ。簡単な計算を間違えることが増えてきて、ぼくたち検算部は大忙しだ。上司はなにを思ったのかAIに酒を奉納しろと非常識な命令を出した。「私はAIの神。不満でもあるのか、人類」こ、これはとんだご無礼を。「信じるな」はい、ちゃんと検算します。

No.1050
どうしてこんなことになったんだっけ? いかにも吸血鬼って感じの黒いマントを着て、獲物を見繕おうとハロウィンに参加したの

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