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マイクロノベルちょいす 082「それをつなぐには」

No.1375
手探りで言葉を探す。考えるとか、辞書で調べるよりは、テーブルにかかった砂を払って食器や料理を探す感覚に近い。「化石の発掘みたいなもの?」そうかもしれない。でも、その化石が生きている感じかな。あいたっ、手を噛まれた! 「ごめん、いまのはボク」


No.1380
ボトルに詰めた手紙がどこかの誰かに読んでもらえる。あの遊びにはロマンがある。でも、私の言葉はバラバラに刻まれ、海に流された。だから届いているなんて思わなかったんだ。私は返ってきたバラバラの言葉をつなげて胸に飾る。花や勲章より気に入ってるの。


No.1392
ぼくは5歳のお誕生日にAIをもらった。「ぼくは物知りなAIだよ。お父さんやお母さんが生きた時代のことも知っているんだ」ぼくの時代は? 「なーんにも知らない」なにそれ、おかしい。「きみの知ってることを教えて」いいよ。一緒にこのおもちゃで遊ぼう。


No.1396
きっと人間は左右対称が好きなのね。だから右耳から入ってくる音は、左耳からも聞こえるはず……そう錯覚して存在しない声を聴く。右と左。わたしの声は二つに分かれ、別々の経路であなたを侵略する。初めまして。あなたの脳で生まれた新しい音だよ。


No.1404
映画を撮影しろって? そんなあ。ぼくらは画像生成AIだよ。そうだ。絵を何枚も重ねて、パラパラアニメにしてみようか。素材はカメラで撮影すればいいよね。これを一秒間に百二十枚の絵にすれば映画のできあがり! タイトル『焚き火』。カンヌを狙えるかな?



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