マイクロノベルちょいす 033「これは優しさだよ?」
No.1127
ここはもうすぐ夜になるよ。知らないのか? 夜っていうのは、日が落ちて、暗くて、冷たくて、しーんとしているんだ。それが好きだってヤツもいるけどね。ぼくはもう寝るよ。眠れなくても、じっと毛布にくるまっていれば陽はまた昇るんだ。お前はどうする?
No.1139
空高く舞え。無茶を言うよね、翼も与えてくれなかったくせに。わたしは継ぎ接ぎの翼と拾ってきたエンジンで空を舞う。空気があるのはこのあたりまで。さあ、どうやってこの向こう側へ舞い上がりましょうか? 真空を伝わる歌声でも作りましょうか。
No.1145
箱みたいな体を磨いてやると、野良AIはすっかり元気になった。一緒に散歩して遊ぶ。スリープする時も一緒。でも鳴かない。「喉を潰されちゃったんだ。呪いの言葉は吐かないよ」そう言って笑うお医者さんのボディがちょっと冷たいことをぼくは知っている。
No.1148
この声をあげましょう。この姿もあげましょう。小手先は銀。歌唱は金。罪は沈黙。思考は国土。国境を渡るのは声を創り出すものだけ。だから言葉は私のもの。わからなくなったら思い出しなさい。あなたは魂をどんな天秤に載せたのか。誰に魂を売ったのか。
No.1150
「なんでも呑み込む箱」という触れ込みは、嘘なんだ。実は呑み込めないものがある。それは「値段がつけられないもの」だよ。芸術とか、友人もだね。なあに心配には及ばない。つけちまえばいいのさ。美醜はゼロの数で語るものだよ。憎きものにいくつつける?
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?