椋本湧也

1994年。編集・執筆・出版。 iittala & Fiskars → Art…

椋本湧也

1994年。編集・執筆・出版。 iittala & Fiskars → Artek & Vitra

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    26歳計画【5刷・予約受付中】

    ※ 5刷は10月頃を予定しております。 下記の書店さんでも注文いただけます! 『26歳計画』 世界各地で暮らす26歳たちによる「26歳」をタイトルにしたエッセイ集。料理人から宇宙工学者、俳優から機動隊員まで、総勢48名の等身大の文章が掲載されています。 ーー 《「26歳」をタイトルにした文章を自由に書いてください。書き終えたら、あなたがいちばん魅力的だと思う26歳の知り合いにこの企画をつないでくださいー》 沢木耕太郎さんが乗合バスでユーラシア大陸横断の旅に出たのが26歳。高校生のときに『深夜特急』を読んでからというもの、「26歳」という年齢は自分にとって特別な響きを持ち続けてきました。 そしてやってきた26歳。奇しくも世界的なパンデミックが襲来し、渡航はおろか、家から出ることすらままならなくなってしまった。そんな「旅の適齢期」に、この世界の26歳たちは一体何を考えているのだろう。身体的な移動が制限される中で、この想いを言葉にのせて、彼らに会いに旅に出てみよう。そしてその出会いの足跡を一冊の旅行記にしてみよう。そう思い立ったのです。(「はじめに」より) ブックデザインはデザイナーの脇田あすかさんが担当しました。表紙はやわらかいグレーのざらりとした質感の紙に、きらりと光る美しい箔押し。さわやかな薄緑色の見返しに不思議な手ざわりの別丁…。たくさんのこだわりがつまった一冊です。 3刷に寄せて、沢木耕太郎さんが「26歳と旅」をテーマにした文章を寄稿してくださいました!巻末に収録しています。 ーー 作:椋本湧也 ブックデザイン:脇田あすか 印刷・製本:シナノ書籍印刷 W107×H174mm/ガンダレ製本/全212ページ ISBN : 978-4-600-01236-6 2,200円(税込) 2021年8月15日 発売 2021年10月7日 二刷 2023年5月20日 三刷 2024年4月20日 四刷 2024年10月 五刷(予定) (累計 7,000部) 《見つかりやすい場所》 【北海道・東北】 ・北海道 KITSUNE BOOKS ・秋田 すく ・山形 ペンギン文庫 ・新潟 Rural Reading ・宮城 六日町ナマケモノ書店 ・宮城 Staghorn Records ・仙台 曲線 ・仙台 ボタン ・福島 Go Go Round This World! Books & Cafe ・福島 m. books!(其ノ四文具店内) 【東京】 ・吉祥寺 百年 ・渋谷 SPBS本店 ・表参道 青山ブックセンター ・代官山 蔦屋書店 ・三軒茶屋 twililight ・虎ノ門 SPBS TORANOMON ・三鷹 UNITÉ ・学芸大学 SUNNY BOY BOOKS ・下北沢 古書ビビビ ・谷中 gururi ・尾山台 WARP HOLE BOOKS ・広尾 Daily Practice Books ・高円寺 Amleteron ・荻窪 本屋Title ・蔵前 透明書店 ・国分寺 胡桃堂書店 ・常盤台 本屋イトマイ ・浜田山 サンブックス ・湯島 玉葱堂 ・葛飾 awesome today ・梅屋敷 葉々社 ・祖師ヶ谷大蔵 BOOKSHOP TRAVELLER ・練馬 ALDO ・大森 葉々社 ・町田 クロモジ書店 ・オンライン ビーナイスの本屋さん 【関東】 ・神奈川 生活綴方 ・神奈川 南十字 ・神奈川 本屋象の旅 ・神奈川 ポルベニールブックストア ・千葉 本屋lighthouse ・千葉 kamebooks ・千葉 BREAD & ROSES ・埼玉 でこぼこ書店 ・長野 栞日 ・長野 面影 book&craft ・長野 mountain bookcase ・長野 ひなみ文庫 ・長野 本と茶NABO ・群馬 REBEL BOOKS ・群馬 ふやふや堂 ・茨城 ミセルくらし PUNTO ・茨城 O'keeffe オキーフ ・山梨 sieca 【中部】 ・静岡 本と音楽の店 つぐみ ・静岡 本とおくりもの ヒガクレ荘 ・名古屋 ON READING ・名古屋 TOUTEN BOOKSTORE ・岐阜 HUT BOOKSTORE ・岐阜 徒然舎 ・滋賀 六月の水曜日 ・福井 小豆書房 【関西】 ・京都 恵文社一乗寺店 ・京都 鴨葱書店 ・京都 誠光社 ・京都 考える“よはく” ・京都 大喜書店 ・レティシア書房 ・奈良 蔦屋書店 ・奈良 とほん ・大阪 black bird books ・大阪 本のすみか ・大阪 犬と街灯 ・大阪 スタンダードブックストア ・和歌山 OLD FACTORY BOOKS ・神戸 1003 ・神戸 本の栞 ・淡路島 淡路島 Book&Coffee coyomi 【中国・四国】 ・岡山 aru. ・岡山 スロウな本屋 ・鳥取 汽水空港 ・広島 READAN DEAT ・広島 蔦屋書店 ・愛媛 本の轍 ・愛媛 本屋ぐりんぐりん ・香川 ルヌガンガ ・山口 ロバの本屋 【九州・沖縄】 ・福岡 本のあるところ ajiro ・福岡 本と羊 ・福岡 ナツメ書店 ・福岡 本灯社 ・福岡 MINOU BOOKS ・北九州 みぢんこ ・大分 Bareishoten ・長崎 本屋ウニとスカッシュ ・長崎 BOOKSライデン ・壱岐島 大福丸書店 ・熊本 古本と新刊scene ・宮崎 KIMAMA BOOKS ・沖縄 はなうた書房 ・沖縄 本と商い ある日、 【読める場所】 ・下北沢 気流舎 ・高井戸中学校の図書室 《お取引きについて》 ・直取引のみ ・一冊からOK ・お買切のみ 冊数によって掛率変動 1〜9冊:65% 10〜19冊:60% 20冊以上:55% ・送料こちら負担 *メール又は一冊!リトルプレス(掛70%のみ)からご連絡ください! mukuri06 <a> gmail.com
    2,200円
    MUKUMOTO YUYA|椋本湧也
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    日常をうたう 〈8月15日の日記集〉

    94歳の祖母に戦時体験をインタビューし、その録音を聴いた27名の同世代が綴った「8月15日」の日記集。 戦時下の記憶をめぐる祖母へのインタビューと、寄稿者による日記の朗読を収録した『音声版』を聞きながらページをめくってみてください。 "日本では戦争を体験した世代が数を減らし、離れた土地では戦争が長期化するいま。戦争を体験していない私たちには何ができるだろう。94歳の祖母に話を聞くと、戦争が終わって最も嬉しかったのは「部屋の電灯が明るいこと」だったと教えてくれた。そしてこう思った。戦争とは日常を奪うものであり、なにげない日常こそが私たちを存在させてくれているのではないか、と。" (「はじめに」より) 〈ルール〉 1.戦争をめぐる祖母との会話を聴いてください。 2.その上で「8月15日」の日記を書いてください。 3.日記を朗読してください。 作:椋本湧也 装丁:古本実加 装画:三瓶玲奈 楽曲提供:秋吉敏子 〈書誌情報〉 サイズ:127✕177mm ページ数:168 ISBN:978-4-600-01343-1 初版部数:2000部 発行:2024年春 音声版: https://podcasters.spotify.com/pod/show/utau0815 《見つかりやすい場所》 【北海道・東北】 ・北海道 KITSUNE BOOKS ・秋田 すく ・山形 ペンギン文庫 ・新潟 Rural Reading ・宮城 六日町ナマケモノ書店 ・宮城 Staghorn Records ・仙台 曲線 ・仙台 ボタン ・福島 Go Go Round This World! Books & Cafe ・福島 読書屋 息つぎ ・福島 m. books!(其ノ四文具店内) 【東京】 ・吉祥寺 百年 ・渋谷 SPBS本店 ・表参道 青山ブックセンター ・代官山 蔦屋書店 ・三軒茶屋 twililight ・虎ノ門 SPBS TORANOMON ・三鷹 UNITÉ ・学芸大学 SUNNY BOY BOOKS ・学芸大学 COUNTER BOOKS ・下北沢 古書ビビビ ・下北沢 日記屋月日 ・谷中 gururi ・尾山台 WARP HOLE BOOKS ・広尾 Daily Practice Books ・高円寺 Amleteron ・荻窪 本屋Title ・蔵前 透明書店 ・国分寺 胡桃堂書店 ・常盤台 本屋イトマイ ・浜田山 サンブックス ・湯島 玉葱堂 ・葛飾 awesome today ・梅屋敷 葉々社 ・祖師ヶ谷大蔵 BOOKSHOP TRAVELLER ・練馬 ALDO ・大森 葉々社 ・町田 クロモジ書店 ・吉祥寺 クレヨンハウス ・オンライン ビーナイスの本屋さん 【関東】 ・神奈川 生活綴方 ・神奈川 南十字 ・神奈川 本屋象の旅 ・神奈川 ポルベニールブックストア ・千葉 本屋lighthouse ・千葉 kamebooks ・千葉 BREAD & ROSES ・埼玉 でこぼこ書店 ・長野 栞日 ・長野 面影 book&craft ・長野 mountain bookcase ・長野 ひなみ文庫 ・長野 本と茶NABO ・群馬 REBEL BOOKS ・群馬 ふやふや堂 ・茨城 ミセルくらし PUNTO ・茨城 O'keeffe オキーフ ・山梨 sieca ・栃木 書肆ひるね 【中部】 ・静岡 本と音楽の店 つぐみ ・静岡 本とおくりもの ヒガクレ荘 ・名古屋 ON READING ・名古屋 TOUTEN BOOKSTORE ・岐阜 HUT BOOKSTORE ・岐阜 徒然舎 ・滋賀 六月の水曜日 ・福井 小豆書房 【関西】 ・京都 恵文社一乗寺店 ・京都 鴨葱書店 ・京都 誠光社 ・京都 考える“よはく” ・京都 大喜書店 ・京都 レティシア書房 ・奈良 蔦屋書店 ・奈良 とほん ・大阪 black bird books ・大阪 本のすみか ・大阪 犬と街灯
 ・大阪 スタンダードブックストア ・和歌山 OLD FACTORY BOOKS ・和歌山 かみつれ文庫 ・神戸 1003 ・神戸 本の栞 ・淡路島 淡路島 Book&Coffee coyomi 【中国・四国】 ・岡山 aru. ・岡山 スロウな本屋 ・鳥取 汽水空港 ・広島 READAN DEAT ・広島 蔦屋書店 ・愛媛 本の轍 ・愛媛 本屋ぐりんぐりん ・香川 ルヌガンガ ・山口 ロバの本屋 【九州・沖縄】 ・福岡 本のあるところ ajiro ・福岡 本と羊
 ・福岡 ナツメ書店 ・福岡 本灯社 ・福岡 ARBOR BOOKS ・北九州 みぢんこ ・大分 Bareishoten ・長崎 本屋ウニとスカッシュ ・長崎 BOOKSライデン ・壱岐島 大福丸書店 ・熊本 古本と新刊scene ・宮崎 KIMAMA BOOKS ・沖縄 はなうた書房 ・沖縄 本と商い ある日、 【その他】 ・下北沢 気流舎 ・高井戸中学校の図書室 〈ご注文について〉 ・直取引のみ ・一冊からOK ・お買切のみ 冊数によって掛率変動 1〜9冊:65% 10〜19冊:60% 20冊以上:55% ・送料こちら負担 *メール又は一冊!リトルプレス(掛70%のみ)からご連絡ください! mukuri06 <a> gmail.com
    1,650円
    MUKUMOTO YUYA|椋本湧也

記事一覧

「8月15日の日記」を綴り、一緒に読み合いませんか? @秋田市文化創造館

長い雨が上がり、ようやく夏ですね。学生たちは夏休み、大人はお盆でひと休み。少し立ち止まって、考える。そんな月だと思います。 今から79年前の8月15日、ポツダム宣言…

椋本湧也
1か月前
7

26歳。人生が旅なのだとしたら、旅はまだ始まったばかりだ。

沢木耕太郎さんが「この本を読めて幸せでした」とJ-Waveの番組で紹介してくださったのが去年の暮れでした。その言葉をラジオ越しに聴いた瞬間、ひとつの旅の終わりを感じた…

椋本湧也
5か月前
41

僕たちはなぜ記憶を形に残すのか

渡英前夜、西日が射す部屋でお互いの本について言葉を交わした帰り道、「僕たちはなぜ記憶を形に残すのか」という問いに思いをめぐらせていた。 一つは、今この時が存在し…

椋本湧也
5か月前
15

旅に帰る

僕はいま、会いたい人に会いに行く短い旅の途上だ。それも「必ず会える」ではなく、「運がよければ会える」という目的地のあってないような曖昧な旅である。 ここ数年、仕…

椋本湧也
1年前
27

「本に呼ばれる」ということがある

「本に呼ばれる」ということがある。 たとえば本棚に雑然と並ぶ本の一群をながめるとき、一冊の本からするどく発される声なき声。人は誰しも、意識の奥底にその孤独な声を…

椋本湧也
1年前
36

インテリアに個性をもたらす「コラージュ」のススメ 〜ヴィトラに息づくイームズのデザイン哲学〜

こんにちは! 暑い日が続いておりますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。 今回の北欧デザインコラムでは、地域を少し南下して、Vitra(ヴィトラ)社が提案する「コラ…

椋本湧也
2年前
59

イッタラを支える「知られざる20年間」~カイフランクとオイバトイッカの友情~

みなさんこんにちは! 気づけばもう年の瀬、2021年はどんな年でしたでしょうか? 僕はというと、表参道のイッタラストアで「フィンランドデザイン」をテーマにしたイベント…

椋本湧也
2年前
20

失敗から生まれるデザインの「個性」 ~オイバ・トイッカ : 北欧モダニズムを超えて~

イッタラのバードやカステヘルミをデザインした、フィンランド人のデザイナー〈オイバ・トイッカ〉をご存知ですか? 日本ではアルヴァ・アアルトやカイ・フランクと比べる…

椋本湧也
2年前
35

映画館をめぐる旅

一人で見知らぬ土地を歩いていると、その土地の映画館に無性に訪れたくなることがある。 映画監督のジム・ジャームッシュは、処女作『パーマネント・バケーション』中で〈…

椋本湧也
3年前
34

【会話劇】 そらのおくゆき

あらすじ 2026年、夏。日本では空前の「詩」のブームが巻き起こっていた。この物語は、詩の魅力に取り憑かれた三人の女子高生が、自作の詩集のタイトルを探すだけの、これ…

椋本湧也
3年前
37

Road to Nowhere : ユートピアは客席を越えて(『アメリカン・ユートピア』 )

デイヴィッド・バーンもトーキング・ヘッズも、いつかどこかで名前を聞いたくらいにしか覚えがなかった。けれども、渋谷のシネクイントでこの映画を文字どおり「浴びて」か…

椋本湧也
3年前
19

宮沢賢治考:「ほんとうのさいわい」とは何か

宮沢賢治の作品のなかには、「ほんとうのさいわい」というフレーズがたびたび登場する。今回は、『銀河鉄道の夜』『春と修羅<序>』『学者アラムハラドの見た着物』『マグ…

椋本湧也
3年前
93

フィンランドデザインの質の高さは「工業」と「アート」の往復運動から生まれる 〜アアルトとカイフランクのデザインアプローチ…

みなさんこんにちは! 暑い日が続いておりますがいかがお過ごしでしょうか? 今回の北欧デザインコラムでは、フィンランドデザインのクオリティの源泉を、アルヴァ・アア…

椋本湧也
3年前
89

「マンキウィッツ」という名の鳥ははばたく(デヴィッド・フィンチャー『Mank マンク』 )

たとえば同じ一本の映画だとしても、その背後に隠されたストーリーを知ることで作品の見え方がまったく変わってしまうということがある。この映画を観るまで、僕にとってオ…

椋本湧也
3年前
23

カイ・フランクが目指した「無名のデザイン」 〜1956年 日本への旅から見えてくるもの〜

「フィンランドデザインの良心」と称され、1952年の発表以来「ティーマ」や「カルティオ」の人気が今なお衰えることを知らないデザイナーのカイ・フランク。日本では藤森健…

椋本湧也
3年前
35

よりみちを道とすること(あるいは27歳の決意表明)

先日、晴れて27club(27歳でこの世を去った天才たちの総称)に入会できる年齢を迎えたわけですが、僕とジミ・ヘンドリクスの一番の違いは人の心に届く仕事をひとつも果たし…

椋本湧也
3年前
82
「8月15日の日記」を綴り、一緒に読み合いませんか? @秋田市文化創造館

「8月15日の日記」を綴り、一緒に読み合いませんか? @秋田市文化創造館

長い雨が上がり、ようやく夏ですね。学生たちは夏休み、大人はお盆でひと休み。少し立ち止まって、考える。そんな月だと思います。

今から79年前の8月15日、ポツダム宣言を受諾した日本は終戦を迎えました。日本全国に玉音放送が流れたこの日、市井の人々は一体どんな一日を過ごしたか、想像したことはありますか?

当時の記録をみると「魂が抜けたようだった」と語る人もいれば、「無言で台所に立ち続けた」人もいたそ

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26歳。人生が旅なのだとしたら、旅はまだ始まったばかりだ。

26歳。人生が旅なのだとしたら、旅はまだ始まったばかりだ。

沢木耕太郎さんが「この本を読めて幸せでした」とJ-Waveの番組で紹介してくださったのが去年の暮れでした。その言葉をラジオ越しに聴いた瞬間、ひとつの旅の終わりを感じたんです。もう自分が手をかけなくても、この本は人から人へ渡り継がれていくだろう、と。

26歳は「旅の適齢期」と言われています。社会人になって数年経って、なんとなく社会のことが分かってきたけれど、まだ何者でもなくて、何者にでもなれる。そ

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僕たちはなぜ記憶を形に残すのか

僕たちはなぜ記憶を形に残すのか

渡英前夜、西日が射す部屋でお互いの本について言葉を交わした帰り道、「僕たちはなぜ記憶を形に残すのか」という問いに思いをめぐらせていた。

一つは、今この時が存在したことの証を残すため。確かに過ごした時間、目にした景色、交わした会話、生まれた感情は、形にしなければすぐにどこかへ消えてしまう。ひどく忘れっぽい僕たちは、言葉や写真を駆使して確かに存在した「今」が忘れ去られることに抵抗する。

ただし、そ

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旅に帰る

旅に帰る

僕はいま、会いたい人に会いに行く短い旅の途上だ。それも「必ず会える」ではなく、「運がよければ会える」という目的地のあってないような曖昧な旅である。

ここ数年、仕事や旅行でたびたび移動はしていたけれど、旅程も時計もいらない旅は久しぶりで気分がいい。旅の本質は「道ゆきを楽しみながら歩けること」であり「気になる路地を気兼ねなく曲がれること」ではないかと、人が波のように行き交う品川駅を歩きながらぼんやり

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「本に呼ばれる」ということがある

「本に呼ばれる」ということがある

「本に呼ばれる」ということがある。

たとえば本棚に雑然と並ぶ本の一群をながめるとき、一冊の本からするどく発される声なき声。人は誰しも、意識の奥底にその孤独な声を聴きわける耳をもっている。聴覚は自身の経験やタイミングと呼応して、「いま読むべき本」との出会いをみちびく。

同じ一冊の本でも、スルスルと流れるように読めるときと、ページをめくる手が全く進まないときがある。「いま読むべき本」は、まるで生涯

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インテリアに個性をもたらす「コラージュ」のススメ 〜ヴィトラに息づくイームズのデザイン哲学〜

インテリアに個性をもたらす「コラージュ」のススメ 〜ヴィトラに息づくイームズのデザイン哲学〜

こんにちは!
暑い日が続いておりますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

今回の北欧デザインコラムでは、地域を少し南下して、Vitra(ヴィトラ)社が提案する「コラージュ」のコンセプトについて考えてみたいと思います。

(この記事の内容は公式の見解ではありませんので何卒ご留意ください。)

1. Vitraを知っていますか?ヴィトラは日本だと知名度がまだまだ低いですが、ヨーロッパでは誰しもが知

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イッタラを支える「知られざる20年間」~カイフランクとオイバトイッカの友情~

イッタラを支える「知られざる20年間」~カイフランクとオイバトイッカの友情~

みなさんこんにちは!
気づけばもう年の瀬、2021年はどんな年でしたでしょうか?
僕はというと、表参道のイッタラストアで「フィンランドデザイン」をテーマにしたイベントをたくさんやった一年でした。

今年さいごの北欧デザインコラムでは、フィンランドを代表する二人のデザイナー、カイ・フランクとオイバ・トイッカの関係性を入口にして、「今のイッタラを支える20年間」を一緒に探っていきたいと思います。

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失敗から生まれるデザインの「個性」 ~オイバ・トイッカ : 北欧モダニズムを超えて~

失敗から生まれるデザインの「個性」 ~オイバ・トイッカ : 北欧モダニズムを超えて~

イッタラのバードやカステヘルミをデザインした、フィンランド人のデザイナー〈オイバ・トイッカ〉をご存知ですか?

日本ではアルヴァ・アアルトやカイ・フランクと比べると知名度は低いものの、フィンランドでは伝説的なデザイナーとして誰しもがその名を知る人物です。オイバが生み出すプロダクトは、いわゆる北欧デザインの「シンプルさ」とは一線を画す、ユニークでユーモラスな表現が特徴です。

今回の北欧デザインコラ

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映画館をめぐる旅

映画館をめぐる旅

一人で見知らぬ土地を歩いていると、その土地の映画館に無性に訪れたくなることがある。

映画監督のジム・ジャームッシュは、処女作『パーマネント・バケーション』中で〈「ここからそこ」ではなく「ここからここ」へ至る映画を描きたい〉というセリフを残した。旅が「ここからそこ」への身体的な移動だとするならば、僕にとって旅先で映画を観ることは「そこからここ」への精神的な帰還であるように思える。異国の地で孤独を強

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【会話劇】 そらのおくゆき

【会話劇】 そらのおくゆき

あらすじ
2026年、夏。日本では空前の「詩」のブームが巻き起こっていた。この物語は、詩の魅力に取り憑かれた三人の女子高生が、自作の詩集のタイトルを探すだけの、これといって特別なことはなにも起こらない会話劇である。

登場人物
・ミナモ‥ロマンチスト、食いしんぼう
・ソヨカゼ‥マイペース、お嬢さま気質
・コムギ‥メガネ、愛読書は「ネイチャー」誌
・百年のお兄さん‥やさしい

0どんな鳥だって、想像

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Road to Nowhere : ユートピアは客席を越えて(『アメリカン・ユートピア』 )

Road to Nowhere : ユートピアは客席を越えて(『アメリカン・ユートピア』 )

デイヴィッド・バーンもトーキング・ヘッズも、いつかどこかで名前を聞いたくらいにしか覚えがなかった。けれども、渋谷のシネクイントでこの映画を文字どおり「浴びて」からというもの、僕のアップルミュージックのプレイリストは彼の曲で埋まってしまったというわけだ。

冒頭、舞台に一人で登場したバーンは、奇妙な脳みその模型を抱えながら観客に語りかけるように歌い始める。そしてショーが進むにつれ、舞台上には徐々にバ

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宮沢賢治考:「ほんとうのさいわい」とは何か

宮沢賢治考:「ほんとうのさいわい」とは何か

宮沢賢治の作品のなかには、「ほんとうのさいわい」というフレーズがたびたび登場する。今回は、『銀河鉄道の夜』『春と修羅<序>』『学者アラムハラドの見た着物』『マグノリアの木』の4つの作品を辿りながら、賢治の思想を5000字の駆け足で紐解いていこうと思う。

1.『銀河鉄道の夜』~<ほんとうのさいわい>を探す旅賢治は生涯をかけて「<ほんとうのさいわい>とは何か」という問いを追求し続けた作家である。ジョ

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フィンランドデザインの質の高さは「工業」と「アート」の往復運動から生まれる 〜アアルトとカイフランクのデザインアプローチ〜

フィンランドデザインの質の高さは「工業」と「アート」の往復運動から生まれる 〜アアルトとカイフランクのデザインアプローチ〜

みなさんこんにちは!
暑い日が続いておりますがいかがお過ごしでしょうか?

今回の北欧デザインコラムでは、フィンランドデザインのクオリティの源泉を、アルヴァ・アアルトとカイ・フランクの二人の名デザイナーの事例を引きながら「工業」と「アート」という二つの視点から紐解いてみたいと思います。

1.アアルトのデザインにおける「遊び」の役割先日、世田谷美術館で開催されていたアルヴァ・アアルト展に行ったとき

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「マンキウィッツ」という名の鳥ははばたく(デヴィッド・フィンチャー『Mank マンク』 )

「マンキウィッツ」という名の鳥ははばたく(デヴィッド・フィンチャー『Mank マンク』 )

たとえば同じ一本の映画だとしても、その背後に隠されたストーリーを知ることで作品の見え方がまったく変わってしまうということがある。この映画を観るまで、僕にとってオーソン・ウェルズの『市民ケーン』はいわゆる「映画史に残る名作」でしかなかった。けれどもその脚本を描いたマンクウィッツのストーリーを知ったがさいご、『市民ケーン』は僕にとって特別な作品に様変わりしてしまった。デヴィッド・フィンチャーの『Man

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カイ・フランクが目指した「無名のデザイン」  〜1956年 日本への旅から見えてくるもの〜

カイ・フランクが目指した「無名のデザイン」 〜1956年 日本への旅から見えてくるもの〜

「フィンランドデザインの良心」と称され、1952年の発表以来「ティーマ」や「カルティオ」の人気が今なお衰えることを知らないデザイナーのカイ・フランク。日本では藤森健次さんや長久智子さんの研究の中で、フランクのシンプルなデザインが生まれた背景にはバウハウスや出自の影響があったことが言及されています。

カイ・フランクは日本との関わりも深く、1956年から1970年にかけて三度の来日を果たしています。

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よりみちを道とすること(あるいは27歳の決意表明)

よりみちを道とすること(あるいは27歳の決意表明)

先日、晴れて27club(27歳でこの世を去った天才たちの総称)に入会できる年齢を迎えたわけですが、僕とジミ・ヘンドリクスの一番の違いは人の心に届く仕事をひとつも果たしていないことであって、引き続き見知らぬ誰かの心の片隅を目指してしぶとく生き抜いてやろうと思います。

27歳のコンセプトは「よりみち」

『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』といういささか意味の渋滞が起きて

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