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超短編、ショートショート

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書きたいままに貯めていった作品 超短編とショートショートっぽいものはコチラにまとめました。
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記事一覧

【短編】 読了家族

【短編】 読了家族

我が家は「読了家族」。

本を読むことが私の家族全員の生きがいで、家族の一員で居続けるためには、毎日3冊の本や新聞、出版物を読み切らなければならないという、少し変わった「掟」のようなものがある。

まずは父。父は家族の中で一番速読が得意だ。

彼の特技は、新聞をサッと斜め読みするだけで、内容をすべて頭に叩き込むこと。
今朝も食卓でスポーツ紙を手に取り、パラリとめくって「ふむ、今日の試合は阪神が勝つ

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【短編】 吾亦紅とサングラス

【短編】 吾亦紅とサングラス

八月の終わり、山田修二は祖父の墓参りのために小さな村を訪れていた。

山間の静かな村で、祖父の墓は村の外れにある山道を登った先の墓地にあった。
幼いころ、夏休みのたびに祖父の家に泊まりに来たものだが、祖父が亡くなってからは訪れる機会も少なくなっていた。

墓に手を合わせた後、修二はふと山道の脇に咲いている小さな赤黒い花に気づいた。
吾亦紅(われもこう)だった。控えめでひっそりと咲くその姿に、何故か

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【短編】 海を渡ったレインブーツ

【短編】 海を渡ったレインブーツ

大雨が降り続く梅雨のある日。

真衣は長年使っていたレインブーツのソール部分が破損していることに気づいた。
まだ梅雨は続くのに、レインブーツがなければ困る。
急ぎ新しいレインブーツを買おうと、真衣は近所の大型ショッピングモールへ向かった。

ショッピングモールは雨天にもかかわらず、たくさんの人で賑わっていた。
真衣は靴売り場にたどり着くと、棚に並ぶ靴たちを見て回る。
だが、特に目を引くデザインはな

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【短編】 シンフォニーおじいさん

【短編】 シンフォニーおじいさん

町の片隅にある、メタセコイヤがそびえ立つ大きな公園に、ひとりの老紳士がやってきた。

歳のころは80歳を過ぎているだろうか。

薄い白髪に丸いメガネ、そして古びた背広を着て、背中を少し丸めたその姿は、一見するとどこにでもいそうな普通のおじいさんだ。
しかし、このおじいさんにはある特別な特徴があった。それは、彼が毎日、公園で“シンフォニー”を演奏するということだ。

もっとも、この演奏は楽器を使うも

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【短編】 魚と雨傘

【短編】 魚と雨傘

不思議な傘屋は、その日突然現れた。

傘屋は無口な老人で、手には色とりどりの傘を持っていた。
ここは市街地のはずれの魚市場。
ど真ん中にぽつんと立ち、魚の匂いが立ち込める中で、その傘たちは異様なほど鮮やかに輝いて見えた。
なんで市場で傘なんか売ってるんだ?
誰もが怪訝そうに老人を見つめたが、誰も彼に声をかけようとはしなかった。

市場で働く青年、タケシはいつものように魚を並べながら、ぽつぽつと降り

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【短編】 素敵枕でおやすみなさい

【短編】 素敵枕でおやすみなさい

大森佳奈は、最近どうも眠れない日々が続いていた。

どれだけ寝ようとしても、目が冴えてしまうのだ。仕事のストレスも原因かもしれないと感じていた。
彼女は深夜に目覚めるたび、何とも言えない孤独感に襲われた。

ある日、佳奈は学生時代からの友人、古谷から「素敵枕」という噂の枕を勧められた。

「これ、最近すごく流行ってるんだよ。特注で自分の体にフィットして、どんな悩みでも忘れてぐっすり眠れるらしいよ。

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【短編】 攻撃的ドアノブ

【短編】 攻撃的ドアノブ

ベッドタウンの片隅のある一軒家に、世界初の「防犯ドアノブ」が取り付けられた。
このドアノブは、AIと連動し、住人の安全を守るために外部からの侵入を防ぐというものだった。
これまでも似たようなものはあったが、ドアノブ自体が警備員のような役割を果たし、不審者を自動で感知し、撃退する能力が備わっているという点では画期的だ。
防犯対策が進化したこのドアノブは、瞬く間に話題となり、注文が殺到した。

ドアノ

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【短編】 川底から、意見します

【短編】 川底から、意見します

静かな田舎町に、小さな川が流れていた。

その川は町の人々にとって、生活の一部であり、子供たちは夏になるとそこで泳ぎ、大人たちは橋の上からぼんやりと流れを眺めていた。

しかし、その川には少し変わった伝説があった。

町の年寄りたちによると、川底には「意見を言う石」が存在し、その石にお願いをすれば、石が「意見」を聞かせてくれるというのだ。
ただし、その意見を取り入れなければ、必ず不幸が訪れるという

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【短編】   ビストロ  「Le Paresseux」

【短編】 ビストロ  「Le Paresseux」

パリの閑静な裏通りに佇む小さなビストロ、「Le Paresseux」。
「怠け者」という意味のその店は、パリ市民の間では隠れた名店として知られていた。
誰もが知るわけではないが、知っている者にとっては一度訪れたら忘れられない特別な店なのだが・・・

店内はアンティークの家具で揃えられており、照明は控えめで落ち着いた雰囲気を醸し出している。
メニューは日替わりで、シェフのおまかせコースのみ。料理は見

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【短編】 流れる雲とぬいぐるみ

【短編】 流れる雲とぬいぐるみ

夏の終わりのある日。

白い雲がゆっくりと流れていく。タケルは大切にしているぬいぐるみのクマを手に、窓際で外の景色を眺めていた。
クマのぬいぐるみは、小さな頃からの相棒で、今では色が少し褪せ、ところどころ糸がほつれているが、タケルにとってはかけがえのない友だ。
クマの名前は「クッキー」と言った。

その日も、タケルはいつものようにクッキーに話しかけていた。「ねえ、クッキー。雲がこんなにゆっくり流れ

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【短編】 オポロテジュマキュラーべ

【短編】 オポロテジュマキュラーべ

夜の静寂に包まれた森の中、ひとつの奇妙な植物がその存在を主張していた。
この花が咲いた姿を見た者は、その神秘的な美しさに心を奪われ、二度と現実世界に戻ってこられなくなる言われている。

「オポロテジュマキュラーベ」
この地域ではそう呼ばれていた。

その花が咲くと言われる新月の夜、ある学者が森に足を踏み入れた。
彼の名は佐藤秀一、自然界の謎を解き明かすことに生涯を捧げた植物学者である。
オポロテジ

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【短編】 副作用

【短編】 副作用

夜のカフェで、リサはアキラと向かい合って座っていた。

柔らかい間接照明の光が二人の顔を照らしている。テーブルの上には、コーヒーカップが二つ、そして小さなケーキの皿が並んでいる。
リサは何かを決心したように、そして用心深く辺りを見回してからゆっくりと口を開いた。
「アキラ、実は話したいことがあるの。私たちの関係について。」
アキラは驚いたように目を見開き、少し不安げな表情を浮かべた。「リサ、どうし

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【短編】 茶柱、遥か彼方

【短編】 茶柱、遥か彼方

大都市から離れた山奥にある小さな村、楢谷(ならや)。

生産量こそ少ないものの、楢谷村は良質な茶葉の産地だ。

いつしか、楢谷のお茶を淹れた時に立つ「茶柱」は、不思議なパワーを持つとお茶マニアの間でウワサになっていた。

特に、「遥か彼方の茶柱」と呼ばれる茶柱は極めて珍しく、出会った者には幸運が訪れると。

楢谷に住む青年、健一は、村一番の茶農家の息子。
幼い頃から茶畑で働き、祖父から茶の知識を教

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【短編】 都市型登山

【短編】 都市型登山

仲川は、生まれて初めての「都市型登山」を来週にひかえ、ワクワクしていた。

長年のオフィスワークで鈍った体を鍛え直したいと考えたのだ。しかし、いきなり本物の山に登る体力も気力もない。
そこで、都心にある高層ビルを舞台にした登山イベントに参加することにした。
彼が挑むのは、職場の近くにある超高層ビル「メテオタワー」の最上階までの階段登りだった。

当日は、秋晴れのさわやかな日だった。タワーの入り口に

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