【短編 七十二候】 土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)
俺は気ままに、そしてしたたかに生きる野良ネコ。
名前は、かつて俺のペットだった「ニンゲン」が俺を呼ぶときに使っていた「トム」というのをそのまま拝借してる。馴染みあるしね。
野良ネコ生活は長いが、やはり冬はきびしい。食い物は探せばいくらでもあるが、寒さはどうにもならない。冬を越せずに息絶える仲間も多い。
先日も、それまで縄張りを声高に主張していたボスネコの「ひろき」が、急に姿を見せなくなった。
何だか嫌なヤツだったが、どこかでのたれ死んでるかも知れないと思うと複雑な気持ち