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千乃あいみ
2024年5月28日 12:50
「19、18、17、16...」日付を指折り数えた。君に会えるまであと2週間ちょっと。カレンダーが教えてくれた。よしっ。握った拳に、わずかに力が入る。「目に見えるところにあったほうが、きっと次に会えるのがもっと楽しみになるよ」。君がくれたのは、壁掛けの大きいカレンダーだ。1ヶ月ごとにめくるシンプルなもので、僕の部屋によく馴染む。パートナーと呼べる関係になってから、もう1年ほど経つだろうか
のれん。短編小説
2023年11月11日 20:46
妖精とか、そんなものそんなもの信じてなかったというか…今でも正直信じられていないけれども、信じられずを得なくなった。この状況急に聞こえるようになったのだ妖精の声が私が友達とファーストフード店で話しているときの事私はいつもメニューを決められない周りに合わせてしまうって言ったらいいのだろうかみんなが選んでいたからついて私もチーズバーガーを選んだ自分の意見を持つと言うこ
久住ハル
2023年8月9日 23:04
手を広げて漆黒を彷徨うここがどこなのかどこから来たのかこれからどこに行くのか目を開けても目を閉じても何も変わりはしない人差し指に触れる冷たい感触ゆっくりと確かめながら握る丸い物体ドアノブだとわかると回してドアを開ける光の点滅の中で見えるその先私は寝ている何もかも終わったように寝ている周りにいる家族たち孫がおじいちゃんと声をかけるが私は返答
2023年4月9日 23:11
朝日星空孤独忍耐強さあなたの愛未完絶望堕落羨望取るに足らない温和正直静寂風雅常に近く最初続く愛情天国赦し普遍どこまでも完璧な愛の中終わりのない愛の中Touch my heartHeal my heart
ユメノ
2022年11月3日 08:49
狂おしいほど甘やかな花の香りは、容易にユウイの夢に忍び込んで、意識を揺さぶった。遠くから玲瓏と鈴の音がして、ゆっくりと近附いてくる。 すぐ傍らに、跪く人の気配がするけれど、瞼は開けない。瞼は重い。心ゆくまで睡っていたい。目覚めることが尊いとは、とうてい思えないのだし。 ならば飽くまで惰眠を貪っていたい。天成の怠け者の肉躰は、するすると夢の世界へと舞い戻ろうとするけれど、この花の香りが邪魔をす
矢口 慧
2022年10月30日 00:17
ぼんやりと昼寝から目を覚ます。一瞬、ここがどこなのかわからなかった。自分の家ではない天井。ごりごり、と何かを削るような音。漂ってくるコーヒーの香り。 ああ、そうだ。 僕はゆっくりと身体を起こした。「あ、お目覚め?」 僕が起きたことに気付いたのか、キッチンにいた恋人は振り返って微笑んだ。先日買ったばかりのコーヒーミルで、豆を挽いている。 そうだった、昨晩、僕は恋人の家に泊まった。お菓子を
meteo
2022年8月8日 08:30
日々やり過ごすように生きる中で、男には唯一の趣味があった。それがベランダキャンプである。男の家のだだっ広いベランダで、ただテントを立ててキャンプをする。それだけが、なぜか心を満たす。お湯を沸かし、寒い夜空の下でカップラーメンを啜る。厚着をして体を温めながら、暗闇の中、豚骨の味を堪能する。この瞬間こそが、男が生まれてきた意味であり、何者かになれる瞬間だった。ある日、男に取材が入る。誰