死にたい世界;ビオタナトス

生と死に近い仕事をしています。

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はじめに

希死念慮とは、 「死にたい」と思うことです。 現在日本では、 約2人に1人が希死念慮を抱いた経験があり、 それは、年々増加傾向にあります。 「死にたい」と思うこ…

あれから:彼氏

俺は高校2年生。 3ヶ月ほど前から、 同じクラスのユカと付き合っている。 その彼女がさっき、 学校の屋上から飛び降りて 死んだ。 コンクリートの地面に、 膝から…

残り0日:回想

朝起きてカーテンを開けると いつもより太陽が眩しい。 暗く淀んだ自分の心とのギャップが そう感じさせるのかもしれない。 だめだ、 「カーテンを開ける」というポジ…

残り1日:評価

人間は、世間体を気にする生き物だ。 義務教育を通じて「普通」であることの大切さを、 脳に焼き付けられている。 少しでも道を逸れようものなら、 後ろ指を刺されて嘲…

残り2日:選択

昨日のことが、頭から離れず、なんだか気持ちが晴れない。 部下に対して指導ができない上司と、 それをいいことに自分勝手な接客をする部下、 その両者をただ傍観する自…

残り3日:衆愚

朝から気分が悪い。 昨夜は寝ると決意してからも、 頭の中で小蝿が、無造作に飛び回り 眠りにつくことができなかった。 原因は「SNSへの依存」だとわかっていても、 …

残り4日:依存

俺は不動産会社で勤務する34歳独身。 一橋大学工学部を卒業後、 それなりに志を持って就職した。 勤続12年にもなると、 上司と部下の狭間で息苦しい状況を 容易に想像…

ベルト:自責

俺は地方の高校生。 一人っ子ということもあり、 親からはだいぶ甘やかされて生きてきた。 ただ、ある日を境に 俺への関心は薄れ、 何も口出ししなくなった。 少し悲…

ベルト:過労

私は、仙台のとある運送会社を経営している。 立ち上げたばかりの会社で、 スタッフは私を含め8人しかいない。 そんな弱小会社に、 青木という21歳の青年が面接に来た…

ベルト:無関心

私の息子は、高校を卒業して東京へ旅立った。 「東京で起業したい」 と言う息子に対して、 「自分のやりたいようにやりなさい」 と言って送り出した。 今思うと、 ろ…

ベルト:浮気

私は、飲食店でウェイトレスをしている。 3年ほど前にマッチングアプリで知り合った 「青木」という男性とお付き合いしている。 彼には大きな夢があり、 今の仕事で資…

ベルト:負けず嫌い

僕は地方の高校三年生。 勉強はできる方だが、 内向的な性格で友達が少ない。 そんな僕には「青木」という親友がいた。 青木とは高校一年の時に、 席が隣同士だったこ…

はじめに

はじめに


希死念慮とは、

「死にたい」と思うことです。

現在日本では、

約2人に1人が希死念慮を抱いた経験があり、

それは、年々増加傾向にあります。

「死にたい」と思うことが当たり前な世界で、

なぜ私たちは生きるのか…

私は、生死に近い仕事をしています。

病気や事故で亡くなった方を何度も見ました。

自ら命を絶った友人も数名います。

そして、私自身

希死念慮を抱いた経験があります。

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あれから:彼氏

あれから:彼氏

俺は高校2年生。

3ヶ月ほど前から、

同じクラスのユカと付き合っている。

その彼女がさっき、

学校の屋上から飛び降りて

死んだ。

コンクリートの地面に、

膝から落ちたのだろう。

大腿骨が脇腹から突き出て、

大量に出血している。

さらに、

顔面を地面に強打し、

鼻が陥没している。

頭頂部からは脳が飛び出し、

正直、人間の形を保っていない。

朝、一緒に登校した時は、

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残り0日:回想

残り0日:回想

朝起きてカーテンを開けると

いつもより太陽が眩しい。

暗く淀んだ自分の心とのギャップが

そう感じさせるのかもしれない。

だめだ、

「カーテンを開ける」というポジティブな行動ですら、

世界からの「皮肉」と捉えてしまう。

さて、顔を洗って

今日を清々しくスタートさせよう。

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ふと、数日前に経済学YouTuberにコメントしたのを思い出した。

軽い気持ちで冷やか

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残り1日:評価

残り1日:評価

人間は、世間体を気にする生き物だ。

義務教育を通じて「普通」であることの大切さを、

脳に焼き付けられている。

少しでも道を逸れようものなら、

後ろ指を刺されて嘲笑され、場合によっては罵倒される。

トラブルの種を植えるくらいなら、

世間に慣れ親しんだ種を植えた方が、

楽に生きていけると「錯覚」する。

そう、あくまで錯覚なのだ。

他人が作った世間体という小さなプランターに、

自分と

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残り2日:選択

残り2日:選択

昨日のことが、頭から離れず、なんだか気持ちが晴れない。

部下に対して指導ができない上司と、

それをいいことに自分勝手な接客をする部下、

その両者をただ傍観する自分。

今までは当たり前に感じていた職場の雰囲気が、

徐々に押し寄せる津波のように、

俺の心を侵略していく。

「仕事ってなんなんだろ」

俺はこれでも、人々の生活を豊かにしたいという志をもって、この業界に足を踏み入れた。

それ

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残り3日:衆愚

残り3日:衆愚

朝から気分が悪い。

昨夜は寝ると決意してからも、

頭の中で小蝿が、無造作に飛び回り

眠りにつくことができなかった。

原因は「SNSへの依存」だとわかっていても、

なかなか抜け出すことができない。

ズーダラ節に「わかっちゃいるけどやめられねぇ」という歌詞があるが、

これは、中毒に陥っている状態である。

SNSは「繋がり」を目的としているのだろうが、

果たしてその目的は達成されている

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残り4日:依存

残り4日:依存

俺は不動産会社で勤務する34歳独身。

一橋大学工学部を卒業後、

それなりに志を持って就職した。

勤続12年にもなると、

上司と部下の狭間で息苦しい状況を

容易に想像できると思うが、

俺の場合は両者に恵まれている。

上司は穏やかで、パワハラどころか愚痴の一つも言わない。

部下は文句をたれるものの、向上心があり、仕事を覚えるのも早い。

そんな職場環境に、俺は何ひとつ不満を感じていなか

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ベルト:自責

ベルト:自責

俺は地方の高校生。

一人っ子ということもあり、

親からはだいぶ甘やかされて生きてきた。

ただ、ある日を境に

俺への関心は薄れ、

何も口出ししなくなった。

少し悲しいが、慣れると楽なものだ。

勉強はできる方ではないが、

運動は何をやっても人並み以上にはできる。

周りからは「とっつきやすく、明るい性格」

と思われているが、

実際のところ

根暗なやつだと思われないために

努力し

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ベルト:過労

ベルト:過労

私は、仙台のとある運送会社を経営している。

立ち上げたばかりの会社で、

スタッフは私を含め8人しかいない。

そんな弱小会社に、

青木という21歳の青年が面接に来た。

彼は高校を卒業してから、

数年間空白の時間があった。

そのことについて尋ねると、

「起業をするために上京したのですが、なかなか上手くいかず、アルバイトの給料で生活していました。」

無鉄砲で後先考えない若輩者…

とは

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ベルト:無関心

ベルト:無関心

私の息子は、高校を卒業して東京へ旅立った。

「東京で起業したい」

と言う息子に対して、

「自分のやりたいようにやりなさい」

と言って送り出した。

今思うと、

ろくに話も聞かずに

責任を放棄した自分が憎々しい。

私が即答で容認した時、

息子の目は薄墨色になった。

きっと落胆したのだろう。

露ほどの興味すら示さなかった

私の対応に…

ーーーーーーーーーー

東京に行った息子に

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ベルト:浮気

ベルト:浮気

私は、飲食店でウェイトレスをしている。

3年ほど前にマッチングアプリで知り合った

「青木」という男性とお付き合いしている。

彼には大きな夢があり、

今の仕事で資金を貯めたら、

東京で起業をするといつも言っている。

「どんなことで起業するの?」

と聞いても、青木は

「今はまだ内緒」

と言われたので、深くは聞かないことにしている。

ポジティブな性格に惹かれて付き合ったものの

後先

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ベルト:負けず嫌い

ベルト:負けず嫌い

僕は地方の高校三年生。

勉強はできる方だが、

内向的な性格で友達が少ない。

そんな僕には「青木」という親友がいた。

青木とは高校一年の時に、

席が隣同士だったことがきっかけで、

仲良くなった。

青木は、勉強はいまいちだが、

スポーツ万能で、

太陽のように明るい性格だった。

僕とはまるで正反対…

そんな青木から、

「お前、卒業したらどうすんの?」

と、聞かれた。

僕は、

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