見出し画像

残り2日:選択

昨日のことが、頭から離れず、なんだか気持ちが晴れない。

部下に対して指導ができない上司と、

それをいいことに自分勝手な接客をする部下、

その両者をただ傍観する自分。

今までは当たり前に感じていた職場の雰囲気が、

徐々に押し寄せる津波のように、

俺の心を侵略していく。

「仕事ってなんなんだろ」

俺はこれでも、人々の生活を豊かにしたいという志をもって、この業界に足を踏み入れた。

それなのに今の社風は、少なくとも顧客ファーストではない。

理想と現実の歪みで、形を保てなくなっている自分の心に気がつく。

俺の居場所はここじゃない。

世間体にビビり散らかしている支店長に辞表を叩きつけ、身勝手部下を見捨てて、

今の会社から足を洗いたい。

だが、情が邪魔をする。

会社を辞めれば、迷惑がかかる。

上司も部下も、俺に対して直接害があるわけではない。

優しい上司でも、可愛い部下でもある…

どうして俺ばかり、こんなに悩まなければいけないんだろうか。


ーーーーーーーーーー


今日は休日なので、

ゆっくり映画を楽しもうと思う。

気持ちが落ち込んでいる時は、

ハイテンションで爽快な作品を

チョイスする人は少なくないが、

それは心理学的にあまりいいとは言えないらしい。

テンションのズレが、心に負荷をかけるからだ。

だから俺は、重厚なサスペンス系を選ぶことにした。

登録しているVODは、アマプラ、U-NEXT、Netflix、Huluだ。

多くの作品から、今日の一本を決める。

とても贅沢な時間だ。

…だがどうだろう

全く見たい作品が決まらない。

面白そうなものはいくつかあるが、

「これだ」という決断まで至らない。

30分弱悩んだあげく、

今まで何度か見たことのある名作「ショーシャンクの空に」を選択した。

選択肢が多いのも、良いのか悪いのか…

映画は好きだが、悩む時間は嫌いだ。


ーーーーーーーーーー


「ショーシャンクの空に」は、

妻殺害の容疑をかけられた銀行員が、無実を主張するも、厳しい刑務所に送り込まれるといった物語だ。

この作中に、ブルックスという老人が登場する。

ブルックスは50年間刑務所生活を続け、

ようやく釈放されたが、

社会生活に馴染むことができず、

自ら命を断つ。

「ブルックスここにありき」

というメッセージを残して…

ブルックスはなぜ「死」を選択したんだろう。

確かに、70歳になって社会に放り出されても

身寄りがいなく、孤独かも知れない。

だが、職も住む家も確保されていて、

生活には困らない環境ではある。

コミュニティーに参加して、新たに友人を作ることだってできたはずだ。

それなのに、なぜ命を絶ったのか…

考えているうちに、主人公のアンディと親友レッドが再開し、エンドロールが流れていた。


ーーーーーーーーーー


映画を見終わった後も、

ブルックスの「死」について考えた。

ブルックスは自殺の方法として「首吊り」を選択したが、

もし、自分がブルックスの立場だとしたら、

どんな死に方を選ぶだろうか。

服薬自殺、飛び降り自殺、銃自殺、入水自殺、焼身自殺…

いろいろな方法があるが、できることなら痛みを感じずに死にたい。

ただ、そんな死に方があるだろうか。

どれを選択したとしても、

少なからず痛みが生じる。

死にきれなかったら激痛が伴う。

後遺症によって、植物状態になるかもしれない。

日本は延命治療に長けた国だから、

きっと長く生きることになるだろう。

自分が「死」を選択したのに、

他人から「生」を押し付けられるはめになるかもしれない。

選択肢が多い世界が辛い。

いっそのこと、誰かに選択してほしい。

俺は生きる価値があるのかないのか、

死ぬべきか生きるべきか、

どうやって生きるか、

どうやって死ぬか。

人がダメなら、AIでも構わない。


ーーーーーENDーーーーー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?