記事一覧
スマホは聞いている【ショートショート】
彼女の明美と・・・というより、すでに籍は入れているので、妻の明美と来月に控えている結婚式の準備のために出かけていた。
「それでさぁ、お歳暮でもらったイクラがめちゃめちゃ美味しそうでさ~」
「へ~」
「500グラムってこんなに少ないの?って感じで、100グラムずつ5パックに分けられてたから家族4人で分けて、余った100グラムをジャンケンってことにしたの」
「へ~、それで誰が勝ったの?」
「それ
屈環*【ショートショート】
「ちょっと!待って!」
大きめのバスタオルで身体を覆い、車のドアを叩く女性を無視してエンジンをかける。
やれやれ、とため息を付きながら、助手席側のドアを3cmほど開けた。
「ばいば~い。気持ち良かったよ~ん」
「ちょ、ちょっと!」
女性を振り切るように勢いよく車を出した。
「待って~~~」
溝内は振り返らずラブホテルを後にした。
人生楽勝
世の中、賢く立ち回れば楽勝。
ポイントは1つ
汚いラーメン屋【ショートショート】
「なあ、汚いラーメン屋があるんだけど行かないか?」
同僚の高田がランチに行こうと誘ってきた。
「普通そう言われて行く訳ないんだけど。あれだろ?築50年くらいの小さな店で、看板も暖簾もボロボロ。カウンターに置いてあるラー油もベトベト。古びたテーブルに赤と白のチェックのテーブルクロス。何かの汁がついたメニュー表。頑固そうな店主が、洗濯しても白くならないエプロンしてて、使い込んだ鉄製のフライパン振り
屈環【ショートショート】
まるで、夕焼けのようだった。
普通朝の空気というのは青白く感じるはずだが、密集した竹林にろ過され届いた日光は、オレンジ色に感じた。
靴を脱ぎ、靴下も脱いで、田んぼの脇にある決して清んではいない水路に足を浸け、子供のようにバタバタと動かす。
水しぶきが顔まで飛んできて汚いと思ったが、この水を飲んで育った米を食べてるかと思うと、汚いという認識をどこまで追及するべきか迷い、頬についた水滴もそのまま