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水木三甫
2023年12月31日 09:05
体中がムズムズすると思ったら突然細胞分裂が始まった僕の体の一部が二つに割れてもう一人の僕が組み立てられていく一瞬頭が真っ白になり気がつくと僕は僕の隣に立っていたクローン人間を作るのは倫理的にいけないことになっていたはずだが自分の意志とは関係なくもう一人の僕が出来てしまったのだから僕が責任を負わなくてはならないとしたらそれは道徳的に問題のはずだとにかく僕が二人存在してはいけな
2023年12月29日 08:33
窓から射しこむ太陽の光が私の胸のあたりを照らしている凍っていた体のその部分だけが熱を帯びる私の体はその熱に向かって収斂されていくまるで外で遊んでいた猫たちが競って炬燵の中へ飛び込むように私は胸の中から指を出してテレビのリモコンをオンにする胸の中から目の高さまで頭を出す昨夜起きた殺人事件について犯罪心理学者が犯人や動機について推測を述べている私はテレビをオフにして風呂に入る温
2023年12月28日 10:15
冬の風に手を引かれて黄葉が宙を流されていく引力に耐えきれなくなった黄葉が地面に積み重なっていく銀杏の木から旅立った黄葉を待っているのは死のみ銀杏の木にとって光合成ができない黄葉はただの排泄物朽ち果てようが気にもしない銀杏の木はまた来年たくさんの緑葉で着飾るだろう
2023年12月26日 08:54
あなたの視線はいつも私の頭上を通りすぎるあなたの心が私の心から遠く引き離されていくように私はいつもあなたの心と視線を追いかけるがある距離に迫ると立ち止まってしまう背の低い女性は嫌いですかおとなしい女性は嫌いですか昨夜胸の奥にしまった言葉たちはいつも唇に行き着くまえにUターンしてしまう私の恋は片思いあなたの胸には届かない
2023年12月25日 16:21
悲しみを流し去った君の少し腫れた瞼が桃色に染まっているのを見て僕は思わずその瞼に唇をあてがう君は最初イヤイヤをした後僕の唇を素直に受け入れた「ごめんね」君は聞こえるか聞こえないかわからないくらいの声で言う僕はまだ潤んでいる君の瞳から涙を舌で掬いとるやや塩からいその一滴で僕は君を愛おしく思う君を力いっぱい抱きしめると君の体重が僕に身をまかせる柔らかい時間が流れた後君はやっ
2023年12月24日 16:12
砂時計の中でしか満たされない時間のように窮屈なこの世界で君は健気に生きているガチャガチャの中のカプセルに収まった商品のように身動きできないこの世界で君は必死に生きている絆という名の校舎に詰め込まれたように息苦しいこの世界で君は苦しみながら生きているそれは君がまだ大人になりきれていないからでも君には世間に溢れているような大人になってほしくない君の辛さの元にある子ども心を捨
2023年12月23日 09:34
君の触れた花びらが散ってしまったよ二人の愛が散ったように季節が来たからしかたないね僕たち二人の季節も終わりだったんだね来年君は誰と花を咲かせるのかな僕はたぶん蕾にもなれないよこのまま枯れたままでもいいから君にはきれいに咲いてほしいな
2023年12月22日 09:12
かすれてゆく景色の中で僕だけが鮮明になってゆく僕を見たくない僕が僕のことしか見えないなんて僕はどんな罪を犯したの?どうして償わなきゃいけないの?過去に戻ってやり直したいのは神様じゃなくて僕のほうさ過去の罪を未来まで引きずらなきゃいけないの?今の変わった僕をもっと見てくれないの?もしそうならば自分が大嫌いだった昔のままで化石にならなきゃいけないよねそんな未来は嫌だから今の
2023年12月21日 16:55
うるさすぎるほど静かな夜に眠りたくないほど眠りたいのに天井を見つめたまま僕は中途半端な世界にいる白か黒か決められないまま長い時を過ごし白か黒かわからないままに年老いた赤や青や黄色もあったはずなのに僕には白と黒しか見えなかったもっと若いときに虹を見ていたならばもっと前向きに生きられたのかもしれないがあの頃は白と黒しか気づかなかったのはまだ僕が若かったからなのかまわりのみ
2023年12月21日 09:08
いくら物語がハッピーエンドで終わったとしても物語のその先までハッピーエンドだとは限らない幸せの次には不幸がやってくる世の中ってそんなもんじゃないかな
2023年12月20日 08:26
観覧車の大きな輪を指差しながら君はこれに乗りたいと言った切符を買って球体の中に二人は入る僕と君は円周となって昇っていく二人は空に近づき小さくなった町を見おろす神様から見たら人間なんてちっぽけなものねと君は言ったせっかく神様に近づいたのだからお祈りをしようと僕は言った一番高いところに着いたとき二人はさらに上を見つめてお祈りをした何をお祈りしたかは二人とも内緒にした僕は君の祈り
2023年12月19日 07:54
いつも風の来る方向を見つめ風を正面から受け止めて風の行方を追うことはないいつも過去から現在までを見つめ現在が過去に変わっていくのを見つめ決して未来の行方を追うことはない君の名は風見鶏
2023年12月18日 10:08
その橋で待ち合わせると出会えないそんな迷信が今でも信じられているその橋で恋を語り合うと結ばれないそんな迷信が今でも信じられているその名はすれ違い橋いつ名付けられたかは記録にないというすでに古くなったため進入禁止の看板が立てられている誰も通ることのないすれ違い橋橋が壊されてしまえば迷信も橋の名前とともに忘れ去られるだろう来年には現代的な橋が出来るというその橋で待ち合わせ
2023年12月15日 08:33
本が逆さまだよと友だちに言われ僕は逆立ちすることにしたでも頭に血が上って本を読むどころではなくなったそこで僕は逆立ちをやめ立って本を読むことにしたでもやはり本を読めなかったなぜならその本はスペイン語で書かれていて僕はスペイン語をまったく理解していなかったから僕は選ぶ本を間違えたのか結局僕はスペイン語の辞書を買い2年かけてその本を読んだそして今ではスペイン人の妻と3人の子供