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大丈夫(詩)

悲しみを流し去った君の少し腫れた瞼が
桃色に染まっているのを見て
僕は思わずその瞼に唇をあてがう
君は最初イヤイヤをした後
僕の唇を素直に受け入れた
「ごめんね」
君は聞こえるか聞こえないかわからないくらいの声で言う
僕はまだ潤んでいる君の瞳から
涙を舌で掬いとる
やや塩からいその一滴で
僕は君を愛おしく思う
君を力いっぱい抱きしめると
君の体重が僕に身をまかせる
柔らかい時間が流れた後
君はやっと笑顔を取り戻す
「ごめんね」
今度は澄んだ声で
君は僕の耳元に唇で触れながら言う
「大丈夫?」
「大丈夫」
「ほんとに大丈夫?」
「ほんとに大丈夫」
君の笑顔に引きずられて
僕は笑い声をあげる
君の笑い声がそれに重なり合う
君はひとつ悲しみを乗り越えた分
大人に見えた

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