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〝色〟が好きなのです。 〝色〟をテーマに書いた物語を…
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闇を溶かした紫の光

闇を溶かした紫の光

壊れちゃうよ、このままじゃ…

暗闇の中。彼の体温だけを全身に感じる。
それから、彼の柔らかくて切なそうな声が静かに
頭の中に染み込んでいった。

壊れてるよ、とっくに。

頭の中で答えて、そのまま眠りについた。

ディエゴに出会うよりずっと前のこと。
休日1人で渋谷を歩いていた。何の目的もなく。
平日だからか多少人は少ない。前から歩いてきた男性とすれ違い、洋服でも見に行こうかなと考えていた時だっ

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yellow afternoon

yellow afternoon

〝近くまで来たからさ、ちょっと寄っちゃった。
休みの午後だもんね、のんびりしてたでしょ?
あれ、模様替えした?〟
〝別にいいけど、出張は?〟
〝いやぁ、実はまたやらかしちゃって、他の人が
行くことになって。色々あってさぁ、今日は急な
休みってわけ!あ、でも用事あるからすぐ帰るよ〟
〝なるほどね。お茶くらいしていけるでしょ?〟
〝うん、ありがと〟

職場の同僚、真希が私の家に突然やってきた。
年も近

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金木犀

金木犀

絶対浮気してるよ
遊んでたらどうするー?
不安じゃないの?
心配じゃない?
よく別れないね
私には無理ぃ~

彼と遠距離になって2年。この2年の間にどれだけ色んな人にこんな言葉を投げ掛けられただろう。
他人からしたら格好のネタでしなないんだ。

私の事なんて何も知らないくせに。
彼の事だって何も知らないくせに。

言ってもムダ。そう思って黙ると今度は、
あっ2人は大丈夫なんだよね~応援してる!なん

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苦味もまた恋の味

苦味もまた恋の味

〝缶コーヒーが似合わないねぇ!〟

雨宿りに入ったカフェでカフェラテを飲みながら、友人に数日前言われた言葉を思い出していた。

似合う、似合わないとかあるのかな?
友人によれば私のイメージは紅茶らしい。
確かにコーヒーを飲むようになったのは割りと最近なんだけど。

大学に入って好きな人ができた。
ゼミが一緒で、一目惚れだった。
よくコーヒー飲みながら本を読んでいる姿を見かける。
いつも彼女と一緒だ

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赤いバラに試される、真実の愛

赤いバラに試される、真実の愛

〝アンタ口固そうだから言うわ。アタシ、ゲイなの。
…何よ、驚かないわね?〟

ポカンとして店長を見ている。ゲイなのは全く問題ない。
初対面の私に、口が固そうって急にカミングアウトされても!

駅前の花屋でバイトすることにした。初めに希望した駅からは3駅離れたけど、
まぁ、良しとして、今日からバイト開始だった。
で、開口一番言われたのがまさかのカミングアウトとは…!

なかなかない、スタートだと

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ここにおいで、いつでも。

ここにおいで、いつでも。

ここのところずっと曇り空。

ベッドに転がって窓の外の雲を眺めている。
寒いけど外の空気が吸いたくて、少しだけ窓を開けた。
冷たい空気が心地よい。こんな天気が丁度いい。
今の私にぴったりだ。


何もしたくない。どこにも行きたくない。
誰にも会いたくない。

そんな日々を送るようになって1年くらいになる
だろうか?







半年前、ばぁばが旅立った。あの曇り空の上へ。

外の世界を見

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消えたグリーンのスカート

消えたグリーンのスカート

あれはたしか、当時私が9歳とか10歳とかそのくらいの頃だったと思う。

毎年夏になるとお出掛け用のお洋服を買ってもらっていた。
お盆に祖父母に会う時や、うちに親戚が集まった時に着るのだ。
普段着ない可愛いワンピースやスカートを着れるから毎年この時期が楽しみだった。

その年に買ってもらったのは、チェック柄で淡いグリーンのフレアスカートだった。
交差するミントグリーンとレモンイエロー、そして
オレン

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白だけの世界を思い出したくて

白だけの世界を思い出したくて

何もない。白以外、何も。



冬が来ない。

関東へ来て1年目の感想だ。10月になっても11月になっても暖かい。
いつになったら寒くなるんだろう。
寒くなりきらないまま、雪が降らないまま、
桜が咲く。

雪のない冬。

冬なんて苦手な季節だった。寒さも嫌いだし雪かきだって大変だし。
冬なんて憂鬱な季節だった。
早く春にならないかな、そればっかり考えてしまう。

それなのに、雪が見たい。


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さくらいろの淡い記憶

さくらいろの淡い記憶

〝ねーねーねー!知ってるー?
桜の下で好きな人を思い浮かべて、両手をぱっと広げたときにね、花びらが1枚手のひらに落ちてきたら両思いなんだって!〟

通学路の途中にある大きな桜の木の下に連れてこられた。

〝やってみようよ!…思い浮かべた?いくよ?せーのっ!!〟

友達と同時に手のひらを出した。

〝あっ〟反射的に左手を握る。
ゆっくり開くと、桜の花びらが1枚あった。

〝あーーー!すごいじゃ

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黒と私

黒と私

黒。なんで黒?
手にしたイヤリングを見つめている。
似合わないよ黒は。買うの?ホントに?
欲しい。可愛い。このイヤリングしてみたい。


最近また黒に惹かれ始めている。
長いこと黒は避けてきたのに。



大学3年の秋。ずっと明るくしていた髪を真っ黒にして教室へ入った。

〝いや、それ違う!〟

私を見つけるなり友人が放った一言。

〝友梨ちゃんはさ、髪の色明るい方が似合うんだからー!〟

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青の遺言

青の遺言

どこまでも広がる青い世界に浮かんでいた。
太陽の光が波の上を転がっている。
こんな晴れた空に青い海、いつもならテンションあがるはずの場所なのに。
なんとも言えない複雑な気分で漂っている。

抱き抱えたツボの中の白い粉を覗き込む。
これがばぁば?骨の形があればばぁばの存在を感じられるのに。
粉となってしまうと、なんだかもうよく分からない。
実は生きてるんじゃないかって気がしてしまう。

ゆっくりとツ

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