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象の記憶

5歳のケンスケは象が大好きだ。
何で?と理由を聞くと、
「象はライオンにも負けないぐらい強いのに、とっても優しいから」
と答えた。
いつか読んだ絵本にそんなことが書いてあったらしい。

子どもは強いものに憧れる。
でも、強いだけじゃなく、優しいところもあるから好き、ということが親としては嬉しかった。
優しい人間に育ってくれるといいな、と思った。

ケンスケは象のことを色々質問してくる。
何を食べてるの?
どうやって寝るの?
走るのは速いの?

私はちゃんと答えられない。象のことをよく知らない。

草食動物だから、草を食べているんじゃないかな。
寝る時ぐらい座るのかな。
体が大きいから、走るのは苦手じゃないかな。

私の答えはそんなもんだけど、ユウ君は違う。

「象は草や根っこ、葉っぱ、実、果物、木の枝や木の皮とか、植物の色んなところを食べるんだ。でも、木が枯れて全滅してしまわないように、食べすぎないようにしてるんだよ。木にも優しいんだ」

「寝るときも立ったままで、野生の象は一日2時間ぐらいしか眠らないんだ。でも、子どもの象はゴロンと横になって寝るんだよ。大人の象は子どもを守るために、起きるまでずっと傍に居てあげるんだ」

「象は足が速いよ。普通の人間より早い。オリンピック選手ぐらい速い。だけど、動物の中では速い方とは言えないんだ。キリンにも負ける。ちなみに、鼻だけ水の上に出して泳いだりもできるよ」

ユウ君はそんな風に答える。
ユウ君も象が好きらしい。
どうして象が好きなの?と聞くと、

「だって、象は強いだけじゃなくて、優しいんだよ」だって。

ケンスケと同じ答えだと笑った。

象の寿命は60年ぐらいだということも、ユウ君から教わった。
人間と同じぐらいの寿命を持つ象。
一日2時間ぐらいしか眠らず、肉食動物を警戒してずっと立ったまま生活している象。
生きるのが大変そうだ。

象だけじゃなく、野生動物はやっぱり生きること自体が大変なんだろう。

そう言えば、動物や虫は本能で、誰かに教わることもなく、生まれながらにして、生きる方法を知っている。
ウミガメは卵から孵ると海に向かって歩く。
虫だって卵から孵ると誰に教わるわけでもなく、動き出し、食べ物を探し、他の生き物から身を守りながら生きる。

そう考えると、本能って、なんだか不思議だと思えた。

「本能って不思議だね」

「そうだねー」

ユウ君は、上半身裸になって、ケンスケとライオンキングごっこをしている。父親ライオン役を演じながら、私が唐突に放った言葉に対して、聞き返すこともなく、当たり前のように答えてくれた。


今日も平和だなー。
騒がしい二人を眺めながら、思った。


ケンスケを寝かしつけてリビングに戻ると、ユウ君は座ってお茶を飲んでいた。

「本能って、記憶だと思うんだ」
柔らかい表情でそう言った。

「記憶?」

「うん、先祖から記憶として受け継がれたもの。だって、人間の赤ちゃんだって、誰にも教えられていないのに、泣くってことができるんだよ。乳首を吸って、母乳を飲むこともできる。当たり前に「本能」って言葉で片付けているけど、これって、とても不思議なことだと思うんだ。」

まあ、そうかもしれない。

「遺伝子に情報があるのか、どこにあるのかは分からないけど。なんにせよ、うまれたときから持っている知識と言える」

「じゃあ、もっと他の記憶も受け継いでいるかも?」

「そう。そう思う。こんな感覚、ないかな。
初めて見た木の実や葉っぱだけど、なんとなくそれの味や口に入れたときの感覚が想像できたり。
経験したことがないのに、山の中で目を覚ました感覚が分かったり、葉っぱに付いた朝露の味を想像できたり。
見たことのない人と一緒に生活していたことがある気になったり。
想像や夢なのかもしれないと思いつつ、どこか、感覚として分かっているような感じ」

言っていることは分からないでもない。そう言えば、蛇やクモが怖いのは、先祖が、それに咬まれたり毒を持っていたりしたことがあるから、とか聞いたことがあるような。

「そう考えると、もっといろんな記憶があるはず。アフリカのサバンナのような灼熱の地での生活、象の肌の感触、匂い、象の群れが走ったときの地響きとかも」

象の足音を想像した。

「想像、夢、思い込み、経験、記憶。それは全部、自分にとっては同じものなんだ。真実であり、幻想でもある。でも、いまここには無い。
思考の力を弱めると、それらの境界が曖昧になってくる。
 その先に、変な話なんだけど、

全部を知っているという感覚があったりする」

最近、ときどきユウ君はこういうことを話す。
ちゃんとは分からないけど、なんとなく、分かるような気もする。

「僕は、野生の象を生で見たことが無いけど、象のことをよく知っている気がするんだ」

そう言って、照れくさそうに笑った。

私の体の中にはどんな記憶が眠っているのだろう?
そこにアクセスできるとしたらどんな楽しみがあるのだろう?
縄文時代とかに先祖が体験していたことも、どこかで覚えていたりするのだろうか。

そんなことを考えると、ワクワクしてきた。

窓の外を見ると、月が出ていた。
生まれる前から、月のことを知っていたかもしれない。ふと、そんな感覚になった。



初めてだけど、初めてじゃない感覚。
どこかで知っているような風景。
こうなることが分かっていたような感じ。

単なる想像を超えているような、感覚。

それがあるとしたら。

私たちは、数多くのものを受け継いで、今を生きている。
答えは、ちゃんと、自分が知っている。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました✨✨✨

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