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読書

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#読書感想文

うたかたの日々(日々の泡)

うたかたの日々(日々の泡)

「泡沫」。
「うたかた」と読む。
水面に浮かぶ泡。
儚く消えやすいもののたとえ。

ボリス・ヴィアンの「うたかたの日々」。
肺の中に睡蓮が生長してしまう奇病にかかったクロエと、恋人のお話。

毎年、冬に風邪をひいて咳が胸のあたりから出ると、
「肺に睡蓮の蕾がね・・・。」
曇った空の色に、モネの「睡蓮」の薄紫色が思い浮かんで、
そんな風に冗談を言っていた。

しかし、今年はそんな冗談は言えない。

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ルイーズ・ブルジョア 糸とクモの彫刻家(子供と絵本について)

ルイーズ・ブルジョア 糸とクモの彫刻家(子供と絵本について)

まだ、外出制限が出るなどとは思わなかった、昨年のクリスマスあたり。
玄関に飾るリースを買った帰りに、彫刻家ルイーズ・ブルジョアの生涯を描いた絵本をみつけました。
ボローニャ・ラガッツィ賞をとった綺麗な本です。

代表作・大きなクモが、なぜ「ママン」というのかがわかります。
「巨大クモ・ママン」は、六本木ヒルズにいます。

ルイーズ・ブルジョアが、このお話よりずっと厳しい子ども時代を過ごしたことは何

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きものの口

きものの口

きものの口の話。
これは、幸田文さんの『しつけ帖』の中の、「包む括る結ぶ」の中の一文にあります。

父のしつけは、娘に贈る「一生もの」という帯のついたこの本。
小気味の良い文章で綴られていく、幸田露伴の教えの数々のうちのひとつに、このお話があります。

さて、私がきかされた、着物についての教えですが、これは救いの教えといえるか、どうでしょう。
口というものをどう思うか、といいます。

口の話が続い

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Think clearly

Think clearly

どうしたら、シンプルに考えられて、簡潔に説明できて、進む一歩が軽くなるだろうか?と考えていた。
そこを考えてしまう時点で、すでに自分の頭がシンプルでなかったということになるのだが、考え方の癖のようなものを、誰しもが持っているように思う。

私にとっての普通は、他の人にとっての普通ではないし、普通だと感じることを比べること自体に意味はない。
話が通じるか、通じないか、というのは、そもそも避けようがな

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ロバート サブダ とびだす絵本

ロバート サブダ とびだす絵本

とびだししかけ絵本・・・という紹介になっている。
私が小さい時には、とびだす絵本と言っていた。

夢があって、好きなのだ。

その中でも、ロバート サブダ作の絵本は秀逸で、
発想もだが、仕掛けが素晴らしい。
どうしたら、こんな風に考えられるんだろう?と、立体センスのない私は、
ひっくり返したり、裏を見たり・・・大人なのに夢中になる。

不思議の国のアリス、オズの魔法使い、ピーターパンに美女と野獣・

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「花 降る日」という本

「花 降る日」という本

「この本、よかったら・・・。」
清楚な雰囲気で、いつもワンピースでいる先輩が、そっと手渡してくれたのは、
有元利夫・容子さんという画家のご夫婦が書かれた本だった。

「私、この画家がとても好きなの。」

油画科の学生であった先輩には、とても可愛がってもらった。
将来の夢をきらきらした目で語ってくれた時も、
恋の話で泣いてしまった時も、そばにいられるのが嬉しかった。
先輩の素直さには、本当にけがれと

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マレーネ・ディートリッヒのABC

マレーネ・ディートリッヒのABC

本の整理をしていたら出てきた。
20代の頃に買ったもので、もう、頁が茶色く変色している。

驚いたことに、一番後ろに、私が書いたメモが挟まれていた。
当時取引のあった会社名入りのメモ用紙に、とてもとても大事なことが書かれていた。
しかも、このメモは、たった今、必要としていた内容なのだ。
共時性を思わずにいられない。
『この本を開けてみよ!』
と導かれたように。

20代の頃、大人っぽいということに

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りんごは赤じゃない

りんごは赤じゃない

『りんごは赤じゃない 正しいプライドの育て方』
という、この本は2002年5月に発行されている。
再読してみた。
太田惠美子さんという中学校の美術教諭のお話だ。
授業について、生徒が書いている。

美術の中で3年間学んできたことが考えを変え、心を換え、人間を変えてくれました。 

太田先生の美術と出会ってから、今までの小さな世界が一気に吹き飛ばされました。

心が枯れている人たちを少なくするために

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ジョナサン・ボロフスキーと「夢を買う」昔話

ジョナサン・ボロフスキーと「夢を買う」昔話

ジョナサン・ボロフスキー展にいったのは、いくつの時だっただろう。
今も、その時の図録を大事に持っている。

そして、この本は私のイチオシだ。
不思議な、なんの脈略もないような面白い夢の羅列に、
なんとも魅力的な線画の数々。

購入した葉書を額に入れて、飾っている。

I dreamed I was taller than Pi

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