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なんとなくいいな、の世界 (読ませていただいてる長編小説のしおりにも使用しています🍀)
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小説『インタビューパンチマンを捕まえて、そして大人になった。』

小説『インタビューパンチマンを捕まえて、そして大人になった。』

「えと、僕の頬に当たってる、この拳は何?」

「だーかーらー、聞いてなかったのかよ」

「うん、ごめん」

夕方になると、最近行くのを辞めた塾のことを考えしまう。
勉強も手についていない。

「インタビューパンチマンだよ」

「ああ、そんな話してたね」

そうそう、最近、僕らが住む辺鄙な街で世間を賑わせている連続事件の話だった。

てっちゃんは、テレビのリポーターみたいに背筋をシャンとして、僕にエ

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タクトト

タクトト

ノート。

君がまだ3歳の頃、かかは君を連れて家を出た。場所は知らされなかった。

その場所に君のおもちゃはあるのか?

それが真っ先に気になった。家には君のおもちゃが散らかったままだった。

その1週間後、ファミレスで君と会える可能性があると告げられる。

僕は古本屋に走り、君が好きな乗り物やキャラクター、動物の本をたくさん買った。その絵をハサミで切り取って、のりで貼り付けて1つのノートを作り始

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短編小説 | バースデーバルーン | 創作大賞2024

短編小説 | バースデーバルーン | 創作大賞2024

 妹の頭が徐々に大きくなっていく。病気じゃない。
 わかっているんだ。家族の誰もが。だけど何も言えやしない。
 傷ついても、恥ずかしくても、怒っても、どうしたって、妹の頭は大きくなって、その成長を止めることは出来ない。

 (一)

 妹は僕の八つ下で、ぼくにとっては目に入れても痛くない存在だった。だけど、そんな例えですら口にするのも憚られるくらい、妹の頭は大きくなっていた。
その始まりはた

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親孝行、させてくれてありがとう。

親孝行、させてくれてありがとう。

私事ですが、先週、父が他界しました。
個人的な価値観として、死というものに対して、全く悪い感情を持っていないことや、孫まで含めた家族全員の見守る中で、父が最期を迎えられたこと、もう三年以上、透析治療や認知症の症状を抱えながら、ほぼ寝たきりで父が過ごしてきたこと……などから、いまは、父が清々しく自由になったという感覚のほうが強く、心穏やかに毎日を過ごしています。

氣分転換も兼ねて、noteもちょく

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議論で愛💝を語るな!

議論で愛💝を語るな!

 この度、「議論で愛を語るな!」(わたしの現代新書)という本を上梓した。

 課題が山積する現代ほど、多様な議論が必要とされる時代はない。
 しかしながら、「人に優しい」「癒される」「共感できる!」ことばかり追求して、物事の本質に迫る徹底的な議論というものが欠如している。
 
 議論は喧嘩ではない。殴り合いでもない。人を論破して打ちのめすためにあるのでもない。
 議論とは、絶対的な真理に近づいて行

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短編小説 | Message~私はあなたを許す~

短編小説 | Message~私はあなたを許す~

どこかの、やさしい、だれかは
わかっているよ。

あなたが、こどもをあいせなくて
くるしんだこと。
そのことを、だれにも、うちあけられずに
くるしんだこと。

こどもから、にげるように
トイレにこもったこと。
SNSにいぞんして、げんじつから
にげていたこと。

ゆうがた、なきさけぶ、こどものこえに
みみをふさいで、ないたこと。

こどもの、ねがおに
なきながらあやまった、ひび。

どこかの、だれ

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