見出し画像

#173 「ビジネス頭の体操」 今週のケーススタディ(1月4日〜1月8日分)

はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。

 →部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。


1月4日(月) 実は幅広く使われている「石」産業は2,000億円規模

「い(1)し(4)」の語呂合せによる「石の日」「ストーンズディ」です。
この日に、地蔵・狛犬・墓石など願いがかけられた石に触れると、願いが叶うと言われているそうです。

さて、石。石に関する産業ですが、実は非常に幅広いものです。
石材は石垣や庭石などに利用されてきましたが、明治以降、西洋建築に使われるようになりました。それに伴って採掘・加工技術も海外から導入され、特に国会議事堂(1936年竣工)の建設にあたり、大理石を採掘できる石切場が全国各地に見出されました。また、戦後、豊かになったことや硬い花崗岩(御影石)の加工技術が進んだこともあって、一般庶民にも石の墓が普及、墓石産業も盛んになりました。
このような、「石」の産業として連想される、「墓石」、大理石などの「建材」以外に、「砕石」というカテゴリがあり、以下のような用途に使われています。

☑️ 道路(アスファルトで砕石を固めて作ります)
☑️ ビルなどのコンクリート(砕石と砂とセメントを混ぜて作ります)
☑️ 線路(敷き詰められているバラストが砕石です)
☑️ 土地の造成(基礎部分に敷き詰められ下地に使われます)
☑️ 護岸整備(コンクリートではなく割栗石と言われる石を並べて整備するのに使われます)

砂や砂利と異なるのは、採石場で採掘した石を用途に合わせて人口的に砕いて使われることです。

その砕石の出荷額は、2019年で2,174億円(約1.6億トン)。1トン当たり単価は1,306円。
2007年と比較すると、出荷額で約2割(557億円)の減少となる一方、1トン当たり単価は1,131円。出荷総額は減っていますが、単価は13%上昇しています。
(出典:経済産業省「令和元年砕石等統計年報」

これは建設投資額と相関性が強くなっています(下図)。

画像1

また、採石に適した採石場の減少や環境意識の高まりにより新規の開発が難しくなっており、採石場自体も減少しています(下図)。

画像2

(出典:「鉱業便覧」と資源エネルギー庁資料より(「公的統計値と業界紙から見る二十世紀後半以降の日本の石材産業」より引用))

→砕石、需要は減少しているなか、単価が上昇している理由は何だろうか?


1月5日(火) 高校の数は増えている?

「いち(1)ご(5)」の語呂合せによる「いちごの日」です。
高校受験を控えた15歳の世代「いちご世代」にエールを送る日。

「高校受験を控えた」、ということで、文部科学省の「高等学校教育の現状について」(令和2年10月1日)から、高校の今、を見てみたいと思います。

まず、高等学校等への進学率の推移と高校の生徒数の推移です。

画像3

昭和25年には42.5%だった高校等進学率は昭和40年に70.7%、昭和49年に90.8%と9割を超え、令和元年には95.8%となっています。
高校の生徒数はいわゆる「団塊ジュニア」が高校在学していた昭和60年代をピークに減少し続けていることが分かります。

こうしたことを背景に高校の数は減少していますが、内訳を見ると、私立高校は横ばいであることがわかります。

画像4

学科別の推移を見てみましょう。「商業」、「家庭」が減る一方で、理数、体育、音楽等の「その他」と「総合学科」が増えていることが分かります。

画像5

高校生の卒業後の進路状況では、大学短大進学率は54.7%、専修学校・各種学校等進学率は17.7%となっています。

画像6

→高校は学科の多様化が進んでいる。15歳から18歳までの時期の教育を担う高校、今後どのような姿が望ましいだろうか?


1月6日(水)  「色」も商標登録できる!?

「い(1)ろ(6)」の語呂合せによる「色の日」です。
色に関係する職業の人の記念日。

色。コーポレートカラー、ブランドカラーなど色というのはビジネス上も非常に重要な要素ですね。

ここでは、2015年4月から登録が認められるようになった、「色彩のみからなる商標」についてみてみたいと思います。

これは特許法等の一部を改正する法律(平成26年5月14日法律第36号)により、商標法が改正されたことで、これまで商標として登録し保護することができなかった以下のようなものについて登録ができるようになったものです。
(出典:特許庁HP

画像7

「色彩」について具体例が分かりやすいので最初に登録された2つをみて見ましょう。

画像8

また、以下のように部分を指定したものも例として挙げられています。
(出典:特許庁HP資料

画像9

色、というのは直接、間接に人間の行動に影響を与えることが分かっていますし(例えば、赤いネクタイは「情熱」、青は「冷静」という印象を与えると言われています)、トンボやセブンの例でも分かります。

なお、この件について以下のHPの解説が非常に分かりやすかったのでご紹介いたします。


→色が収益に直接影響する例として、Googleの例がある。2億ドルもの収益を生み出したとされるが、一体何の色の違いがそれだけの収益の違いを生んだのだろうか?

(答えはこちらのリンク先をご参照ください)


1月7日(木) 爪切り、日本で6割のシェアを持つのはアノ会社

新年になって初めて爪を切る日として、「爪切りの日」とされています。
七種を浸した水に爪をつけ、柔かくして切ると、その年は風邪をひかないと言われています。

さて、7日といえば、七草粥の日、でしょうが、ここでは「爪切りの日」を取り上げます。そんな日あったんだ、というところですが…

「爪切り」の市場規模、裏付けが確認できるデータがありませんでしたが、貝印が日本の爪切り市場の約60%を占めいているそうです。なんと、OEMで提供しているものも合わせると、399種類、810万個もの爪切りを製造、提供しているそうです(2019年5月貝印調べ)。

もともと剃刀ではじまった貝印が、爪切りに参入したのは1959年。改良を重ね1989年に今の爪切りの原型「ニュースタンダードツメキリ」が登場し以降、高いシェアを誇るのだそうです。

さて、爪切り。価格以外にどのような差別化が考えられるでしょうか?

すぐに思いつくのは「機能性」。高機能爪切りというと切れ味だけ考えますが、「使いやすさ」という方向で、1万円もする爪切りを開発、販売しています。

画像11

あとは、「デザイン」。こちらは小さくスリムにしたものです。

画像11

ここまでは貝印さんの製品でしたが、爪切りで検索すると出てくる、「SUWADA」というブランドもご紹介します。

燕三条エリアにある会社で、高いものは1万8千円もするニッパー型の爪切りが海外も含めて売れているそうです。

画像12

なんと同社の工場は見学できるようになっているのですが非常にスタイリッシュです。感染症前は年間3万人もの見学者が来ていたそうです。

画像13

小さいものなので手間の割には値段を低く設定せざるを得なかったところ、職人と相談し、こだわって作った分のコストを反映したら7,000円にもなってしまい、どこの問屋も店も取り扱ってくれないところ、全国に営業し、やっと置くだけなら、ということで置いてもらったお店で、ある有名俳優が購入したことで注文が入るようになった、という嘘のような話です。

他にも工場をおしゃれに改装した経緯なども面白いのでご興味があればこちらの社長のインタビューをご覧ください(フリスクなんです、それも面白いです)。


さて、1つ目がこうした高機能路線だとすると、2つ目は、海外展開です。

また貝印さんの例に戻ってしまうのですが、同社はインドでも爪切りをヒットさせます。その要因はインドの「手食文化」と衛生への意識の高まりと自社の強みをうまく製品に反映したことです。

手で食事するので、爪が伸びていることで不衛生になるという懸念を爪切りで解決(そこは、貝印さんの切れ味の良い爪切りで差別化)、爪切り飛び散り防止ケースで、切った爪が食事に入る懸念も解決、そして、インド仕様として「爪の間の汚れをとるピック」を付けたこと、この3つでヒットしたのです。

画像14

日本マーケティングリテラシー協会でも事例として取り上げられていますのでご興味があればご覧ください。

→売上を増やすには「高機能化」「海外展開」が考えられるが、自社の事業で考えられることは何だろうか?


1月8日(金) ワイヤレスイヤホン市場、5年後には○倍!?

イヤホンの情報サイト「イヤホンナビ」が制定した「イヤホンの日」です。
「い(1)や(8)ほん」の語呂合せ。

さて、イヤホン。
そのルーツは、ソニーが1979年にウォークマンにヘッドホンを付属して発売、大ヒットとなったのち、より小ささを追求した結果、1982年に世界初のインナーイヤー型ヘッドホン(下写真)として発売したことによるそうです(出典:わたしのオト)。

画像15

現在、ワイヤレスイヤホンが話題ですが、2020年上期の状況を見てみると、ヘッドホン/ヘッドセットの販売本数は前年比7%増の1,040万本となっています。特に完全ワイヤレス対応機は63%増で、数量ベースシェアは前年から7ポイント増え、20%を占めます(出典:GFK「2020年上半期家電・IT市場動向」)。

今後も成長が見込まれ、富士キメラ総研によれば、ワイヤレスイヤホンの世界市場は2025年までに2.7倍に拡大すると予想されています。

この流れは、2016年末のAir Podsの発売以降のものです(出典:BNC +R)。

画像16

上位メーカーのシェアを見てもAppleが圧倒的です(出典:BCN +R)。

画像17


これにより、イヤホン市場全体の単価も、2,000円台であったものが、2年間で倍の4,000円となっています(完全ワイヤレスイヤホンの単価は1万7千円)。

→ワイヤレス化で市場が大きく成長することがある。次に考えられるのはどんな製品だろうか?


最後までお読み頂きありがとうございました。

1つでも頭の体操になるネタがあれば嬉しいです。


昨年7月から毎週日曜日にこんな投稿をしています。
だいぶ溜まってきました。
よろしければ過去分も覗いてみてください。
「へぇ〜」がいろいろあると思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?