患者Pの日記

精神科医Tです。 患者Pの精神記録の情報漏洩アカです。

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記事一覧

カルテ25:言葉の党派性

クソクレーマーの「お客様は神様だろ」という言葉がありますが、あの言葉の本来の意味は三波春夫の「芸をする上で雑念払って最高の芸に仕上げる。だからお客様は神様という…

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カルテ24:積極的ニヒリズムへの違和感

生きる意味は自分のような人間だけではなく誰もが考えると思うのですが、みんなどうやって紡ぎ出してるんでしょうか。 生きる意味の苦悩をいなす考えとしてよく聞くのが積…

患者Pの日記
1か月前
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カルテ23:主人たる奴隷

前母と「Pって働くってことは奴隷になることってよく言うじゃん」って何かの話の流れで言われたんですよ。 その時は「まぁ…その…うーん…そだね」って歯切れの悪い肯定…

患者Pの日記
1か月前
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カルテ22:自分の加害姓

最近「そんなに邪悪ではないはずが何の因果か他人を踏みにじる・尊厳を奪う側になる人物」という要素を持つ作品をよく観る気がします。 パッとあげるだけでも、進撃の巨人…

患者Pの日記
1か月前
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カルテ21:人類滅亡(妄想)に打ち克ててた子ども時代

前回の話をした後ふと昔のことを思い出しましてね。 2012年のマヤ文明の人類滅亡を覚えてますでしょうか? 当然今みんな生きてるので起きなかったわけだし、そもそもマヤ暦…

患者Pの日記
2か月前
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カルテ20:バブルとか高度経済成長期に生まれてたら

高度経済成長の時かバブル経済の時かはちょっと記憶になくて申し訳ないんですけど、その時代っていい大学までいけば後はエスカレーター式でいい企業につけるみたいな神話が…

患者Pの日記
2か月前
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カルテ19:グレーゾーン

やっぱり世にいうグレーゾーンというのが苦手です。 前にも同じことを言ったと思いますが、正直「いずれ出すための答えの保留」という側面がすっぽり抜けて「理屈をとっか…

患者Pの日記
3か月前
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カルテ18:夢で多分民族主義者になった話

また夢の話なんですが、今回は夢の内容そのものに触れるわけではありません。 何を見たかは正直忘れました。というか見てない可能性もあります。夢見てないのって確かヤバ…

患者Pの日記
3か月前

カルテ17:救われた夢

なんだか今朝は変な夢を見ましてね。 いくつかの断章のように場面が切り替わっていって大半は覚えてないんですけど、ひとつだけ夜中に目が覚める直前のは明確に覚えてます…

患者Pの日記
3か月前
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カルテ16:絶望すら無価値にせよ

前に自分は「この世界は剥き出しの状態だと、無意義の集まりだ」みたいなこと言った(もしかしたら違う言葉かも)と思いますが、そこにある種の価値を見てる面があるのは一種…

患者Pの日記
3か月前
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カルテ15:霧の中

今日少し雨だったのですが少々霧の中にいる自分というのを頭のなかで幻視しました。 あの先行きの見えないあの感じが逆に世界から隔絶を与えてきて何故か安心する気がしま…

患者Pの日記
4か月前

カルテ14:「人間はどこまで家畜か」を読んだ

今回診察というより読んだ本についての感想ですかね。 熊代亨の「人間はどこまで家畜か」という本です。 生物進化学で「自己家畜化」というものがあって、「人間が生み出…

患者Pの日記
4か月前
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カルテ13:可惜夢

可惜(あたら)という言葉がありまして、意味が「残念なことに」という副詞でこれに夜を付け足した「可惜夜(あたらよ)」という「明けてほしくない夜」になります。万葉集で出…

患者Pの日記
4か月前
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カルテ12:ローティのせいだ

前に「精神障害を持ってる人の方が世界を正しく捉えていて、健常者の方が好意的に歪めて世界を捉えてる」という仮説があるらしいという話をどっかで聞いたことがあります。…

患者Pの日記
4か月前

カルテ11:石とならまほしき夜の歌と希死念慮

石とならまほしき夜の歌という中島敦の作品を知っているでしょうか。山月記で有名な方です。「その声は、我が友、李徴子ではないか?」の人の短歌です。R.Dレインの「好き…

患者Pの日記
4か月前
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カルテ10:幸せを科学で代替したい

幸せは気持ち次第というなら、身体全体を幸せホルモンで充たす手(副作用はここでは考慮しないものとします)もその範疇にあると思うのですが、こちらは薬漬けのような印象を…

患者Pの日記
5か月前
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カルテ25:言葉の党派性

クソクレーマーの「お客様は神様だろ」という言葉がありますが、あの言葉の本来の意味は三波春夫の「芸をする上で雑念払って最高の芸に仕上げる。だからお客様は神様という絶対者だとみて臨む」なんですよね。

同じように「健全な精神は健全な肉体に宿る」というのも元は「願いごとをするならあまり大欲を抱かずに健全な肉体に健全な精神が宿ってほしいぐらいにしましょう」みたいなものだったはず。

最近だと「置かれた場所

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カルテ24:積極的ニヒリズムへの違和感

生きる意味は自分のような人間だけではなく誰もが考えると思うのですが、みんなどうやって紡ぎ出してるんでしょうか。

生きる意味の苦悩をいなす考えとしてよく聞くのが積極的ニヒリズム(能動的、楽観的ニヒリズム)がいいというもの。
ニーチェのいう「超人思想」のように「この世は無意味だ虚無だ。故に我々自身が価値を想像するのだ」という思想です。
あるいはサルトルの実存主義も広い意味で入るのかな。

しかし自分

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カルテ23:主人たる奴隷

前母と「Pって働くってことは奴隷になることってよく言うじゃん」って何かの話の流れで言われたんですよ。

その時は「まぁ…その…うーん…そだね」って歯切れの悪い肯定の仕方をしたんですけども、しばらくして「もしかすると下手すりゃ奴隷より質悪くない?」みたいなことを考えました。

一般的に奴隷と主人という関係において主人は奴隷という存在がいないと主人としてのアイデンティティーが確立できない点で奴隷に依存

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カルテ22:自分の加害姓

最近「そんなに邪悪ではないはずが何の因果か他人を踏みにじる・尊厳を奪う側になる人物」という要素を持つ作品をよく観る気がします。
パッとあげるだけでも、進撃の巨人、歌われなかった海賊へ、ゲゲゲの謎、そして最近「ここはすべての夜明け前」が加わりました。
ちょっとネタバレになってしまうのですが、作中の主人公もかつて搾取される側だったのですが、愛の渇望ゆえにある人物の人生を搾取した(してしまった)という要

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カルテ21:人類滅亡(妄想)に打ち克ててた子ども時代

前回の話をした後ふと昔のことを思い出しましてね。
2012年のマヤ文明の人類滅亡を覚えてますでしょうか?
当然今みんな生きてるので起きなかったわけだし、そもそもマヤ暦のひとつの循環が終わるって話であって人類の滅亡に関して何も言ってないということだったんですよね。

でも2012年当時恥ずかしながら100%信じるとはいわないまでも「自分の人生が唐突に終わるのかもしれないのか、それが本当なら残りの人生

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カルテ20:バブルとか高度経済成長期に生まれてたら

高度経済成長の時かバブル経済の時かはちょっと記憶になくて申し訳ないんですけど、その時代っていい大学までいけば後はエスカレーター式でいい企業につけるみたいな神話があったはずです。
それこそ社会契約のごとき物語のパワーがあったように見受けられます。
今の時世を見るとどうかというと親ガチャとか出生地ガチャをはじめとした「まず努力の土俵に立つために壁となってるもの」みたいな論があるような気がします。

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カルテ19:グレーゾーン

やっぱり世にいうグレーゾーンというのが苦手です。
前にも同じことを言ったと思いますが、正直「いずれ出すための答えの保留」という側面がすっぽり抜けて「理屈をとっかえひっかえする場合わけ的思考」あるいは「ジョージ・オーウェル的な二重思考の産物」とごちゃごちゃになってないかというのがあります。

曖昧で世が成り立っているならせめてこのグレーゾーン定義自体をごちゃごちゃにしないで欲しいなという思いがありま

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カルテ18:夢で多分民族主義者になった話

また夢の話なんですが、今回は夢の内容そのものに触れるわけではありません。
何を見たかは正直忘れました。というか見てない可能性もあります。夢見てないのって確かヤバイんでしたっけ?

それはともかくとして。
自分は最近起きようとしても、ずっともぞもぞと夢の中のカオスな世界に戻りたいと起きられなかったりするんですが、
そのもぞもぞするなかで「変なエネルギー」が沸いたんですよね。
もぞもぞしてるので身体的

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カルテ17:救われた夢

なんだか今朝は変な夢を見ましてね。
いくつかの断章のように場面が切り替わっていって大半は覚えてないんですけど、ひとつだけ夜中に目が覚める直前のは明確に覚えてます。

どうやら自分はストレッチャーかなんかに運ばれてたんですけど、どうも姿勢からして起き上がってるようだけども視点が地面に置いたカメラから見たように低かったです。
それで看護師っぽい方が「少し注射をしますね」といって両方の人差し指に注射をぶ

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カルテ16:絶望すら無価値にせよ

前に自分は「この世界は剥き出しの状態だと、無意義の集まりだ」みたいなこと言った(もしかしたら違う言葉かも)と思いますが、そこにある種の価値を見てる面があるのは一種の矛盾じゃないかと思います。
最近だと物語の作劇上で「負のご都合主義」という言葉があるので、その方面の比喩を用いた方が実像として近くなるかもしれません。

この世が無意義というなら、その無意義さすらも特権性があるわけもなく、無意義さを優位

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カルテ15:霧の中

今日少し雨だったのですが少々霧の中にいる自分というのを頭のなかで幻視しました。

あの先行きの見えないあの感じが逆に世界から隔絶を与えてきて何故か安心する気がします。
といっても草っぱらのなかで先行きが見えないと本当の隔絶に実像が近いがゆえに怖いかもしれません。

集合住宅の中の霧が望ましい。
人間のためにつくられたというデザインから剥奪されたものが周りにあるとより隔絶感が増すからかなのか。
ほん

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カルテ14:「人間はどこまで家畜か」を読んだ

今回診察というより読んだ本についての感想ですかね。

熊代亨の「人間はどこまで家畜か」という本です。

生物進化学で「自己家畜化」というものがあって、「人間が生み出した環境の中でより穏やかに、群れやすく進化していく」とのことで、それが人間にも、ひいては文化的な事象をとおしておこる"文化的な自己家畜化"について書いています。むやみやたらに殺しては奪うより、コミュニティ内でルールを築いて穏やかにするの

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カルテ13:可惜夢

可惜(あたら)という言葉がありまして、意味が「残念なことに」という副詞でこれに夜を付け足した「可惜夜(あたらよ)」という「明けてほしくない夜」になります。万葉集で出てくるそうです。

万葉集なら情緒ありますが、気分が落ち込んでる人間にとっては全く違う切実なもんになるんじゃあないでしょうか。

最近夜が明ける、というか目を覚ます時に「起きなきゃならんのか」ってなります。
寝ぼけと言われればそれまでな

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カルテ12:ローティのせいだ

前に「精神障害を持ってる人の方が世界を正しく捉えていて、健常者の方が好意的に歪めて世界を捉えてる」という仮説があるらしいという話をどっかで聞いたことがあります。

正直これに関しては正しく捉えてる云々は思ってなかったわけですけど、バイアス抜きに世界を捉えるということは、「世界の側が美しくある義理はない」というように、この世界に対しての期待の一切が意義をなさなくなるようなことだと思います。

先ほど

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カルテ11:石とならまほしき夜の歌と希死念慮

石とならまほしき夜の歌という中島敦の作品を知っているでしょうか。山月記で有名な方です。「その声は、我が友、李徴子ではないか?」の人の短歌です。R.Dレインの「好き?好き?大好き?」の訳者解説の中で引用されてたものなのですが、気になってその歌を読んで見るとその歌の中の石は有情の有機体と違って穏やかそうだなと思いました。

この石になりたいというのは自殺願望(というより希死念慮に近い)の形態近いものが

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カルテ10:幸せを科学で代替したい

幸せは気持ち次第というなら、身体全体を幸せホルモンで充たす手(副作用はここでは考慮しないものとします)もその範疇にあると思うのですが、こちらは薬漬けのような印象を多くの人が抱くのではないのでしょうか。

しかし「気持ち次第」とて現実を改変できているわけではなく自分の精神のなかで完結してる点で自己洗脳の側面も多いはずなのに、なぜこちらを人間ならではの営為のように言われてるのか前々から疑問なのです。

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