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心象空間 エッセイ・小説

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エッセイは日常の出来事に触れ感じたことを心のままに、書き連ねています。 小説は頭の中のモヤモヤを言葉にする作業です。
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ショートショート「水の国Ⅱ」

ショートショート「水の国Ⅱ」

ショートショート「水の国」
初めの物語はこちら⇩

美しい泉、湧水で遊ぶ子どもたち。水生昆虫があちらこちらに。子どもたちは夢中で虫を捕まえては、抱えていた携帯水槽に入れ、笑った。

水面はキラキラと輝き、親たちは木陰でくつろぐ。ああ、この国はなんと美しく、素晴らしいのだろう。

「大臣」
「ああ、すまぬ、うとうとしていた」
「ガリー会社から、第四工場の申請がきております」
「第四工場か……」

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ショートショート「勇気ある決断」

ショートショート「勇気ある決断」

浅瀬に近い海のなかで、2匹の魚が会話をしていた。魚……といっても、むなびれやおびれの骨格はしっかりとしたつくりで、岸にかなり近い浅瀬まで泳ぐことができる。そこからは陸上の、緑の植物をぼんやりと見ることができた。

1匹の魚が言った。
「おい、きみは本当に挑戦するつもりかい?」

もう1匹の魚が陸を見ながら言った。
「ああ。おれは行く。陸に進出するのだ」

「だがあの世界にはまだわからないことが多い

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ショートショート「水の国」

ショートショート「水の国」

マロン小国は透明な湧き水あふれる美しい国である。
国民は蛇口をひねればすぐに美味しい水が飲めた。緑豊かで、多くの渡り鳥が羽休めにマロン小国に飛んでくる。

日光は木々の間から優しく照り注ぎ、光のマントが国王の住む宮殿に広がる。宮殿の窓辺に立っていたマロン小国の大臣が言った。
「このように素晴らしい自然環境は、他の国には無いに違いない。清らかな水がそこかしこにあふれ、飲み水に困ることはまったくない。

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〈短編小説〉 私の中学生日記

〈短編小説〉 私の中学生日記

授業のチャイムが鳴った。
もう先生は教室に入ったかな、と頭の隅で考えつつ、今は目の前の昼食を選ぶことが私の優先事項だった。

パンが好き。
メロンパン、いちごクリームパン、牛乳パン、チーズパン、‥ああ。目移りしてしまう。けれどやっぱり大きなハム入りのサンドイッチだな。

売店のおばちゃんが「そろそろ授業始まるんじゃないの」というような目で私を見たけれど、私は知らんぷりした。

どうして大人の言うこ

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私たちは愛されていることを忘れている

私たちは愛されていることを忘れている

娘が通う幼稚園から送られてくる定期通信に、目を通すようにしている。

娘はプロテスタント系キリスト教会私立幼稚園に通っているのだが、長男の頃から数えて幼稚園通いは今年で10年目。

兄妹間の歳の差からこんなにも幼児教育を学び続けている母親も、珍しいのではないか・・・と我ながら思う。

だからと言って私自身は10年前と変わらず、今も育児に悩み、あたふたし続けている。

そんな私に有難い育児指南書が、

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天使にラブ・ソングを〜魂を動かすもの

天使にラブ・ソングを〜魂を動かすもの

久しぶりに夜更かしした。

私の大好きな映画「天使にラブ・ソングを」
金曜ロードショーでテレビ放送されており、最初から最後まで目が離せないのはいつものこと。
なんたって、ウーピーゴールドバーグ演じるクラブ歌手・デロリスがたまらなくチャーミングなのだ。

自由奔放でとにかく明るい。その表情はいたずらっ子の少女のよう、一眼見てもう目が離せなくなってしまう。

彼女は偶然目撃した殺人現場の犯人等から身を

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アンという少女を想う

アンという少女を想う

先週、子供が学校から借りてきた本を一気読みした。

「赤毛のアン」

カナダの作家・モンゴメリ作の長編小説、日本でもかなり有名な本だ。
ページを捲るごとに幼いころ憧れていた世界が蘇る。

グリーンゲイブルズの自然豊かな風景、アンという赤毛とそばかすの少女が孤児院から老兄妹の家に引き取られるまでの道のり、アンはこれから始まる新生活に胸を躍らせる。

これまでかなり苦労してきたせいか痩せて枝のような彼

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