桑島良紀(住まい・まちづくり研究家)

長く住宅・不動産の専門紙に勤務。2024年に「住宅新報」執行役員編集長の職を辞し、57…

桑島良紀(住まい・まちづくり研究家)

長く住宅・不動産の専門紙に勤務。2024年に「住宅新報」執行役員編集長の職を辞し、57歳にして博士の学位を得るべく大学院に進学しました。空き家に関する研究活動のかたわら、住宅や不動産、まちづくりについての情報発信をしていきます。

記事一覧

食と不動産の密接な関係

 食と不動産は密接な関係があります。商業施設内の飲食店はもちろんですが、最近では飲食店とECとの連携や、オフィステナントなどと共に持続可能な食を目指した取り組み…

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事前の対応が重要な空き家対策に

 増え続ける空き家対策は、問題化する前の対策が重要になっています。国土交通省は6月21日、日本司法書士会連合会と全国空き家対策推進協議会と協力して作成した「住まい…

若い世帯が住む分譲マンションの側に高齢者の住まいが必要な訳

 高齢者向けの住宅である有料老人ホームを、分譲マンションの近くに建設することのメリットは何でしょうか。三菱地所レジデンスは、2023 年10 月に有料老人ホーム「鎌倉…

関西で実験施設付きオフィス 医療系スタートアップ育む

 三井不動産は、2024年6月29日に大阪・中之島にオープンする未来医療国際拠点「Nakanoshima Qross」の3~5階に、関西圏で初となる「三井リンクラボ中之島」を開設します。…

【ニュースの見解】 国立マンション解体 広く報道された理由(追記あり)

 引き渡し直前で解体が決まった積水ハウスの分譲マンション「グランメゾン国立富士見通り」。多くの大手メディアが詳細に報じていますし、これを書いている時点(2024年6…

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【ニュースの見解】 スポーツが与える不動産の価値

 最近、不動産会社がスポーツに力を入れているケースが目立ちます。なぜでしょうか。スポーツが持つ高い集客力もさることながら、それ以上の魅力がスポーツというコンテン…

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外国人と空き家が変える 住宅・不動産業界

 5月に入ってから、住宅・不動産業界の大手企業決算や政府の空き家に関する統計の公表などが相次いでありました。住宅・不動産業界と一言でいっても新築から流通、リノベ…

再エネ事業と地域活性化の意外な関係 東急不動産が北海道・松前町に拠点

 東急不動産は先日、北海道松前町で「TENOHA松前」を2024年5月15日にオープンしたことを発表しました。この施設は、近隣にある「道の駅」との機能補完を目指して、町内外…

【ニュースの見解】 空き家売買仲介手数料アップの意味

 2024年5月22日付の日本経済新聞(ウェブでは5月21日に速報)に「放置空き家の流通促す 国土交通省、仲介料上限上げ」という記事が出ました。この記事が出る少し前に、こ…

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MRは全世代の住まいの選び方を変える 東京・池袋で新たな新築マンション販売

 MR(複合現実)を導入した新築マンション販売が始まっています。三井不動産レジデンシャルは、複数の物件を取り扱っている販売拠点「三井のすまい 池袋サロン」(東京都…

年数経過した郊外住宅団地 DXで新たな価値を

 大和ハウス工業は、4月17日から兵庫県三木市にある戸建て住宅団地「緑が丘ネオポリス」のコミュニティ施設において、仮想空間や遠隔地とつながる空間拡張システムを使い…

都市とイノベーションの深い関係

 都市とイノベーションは深い関係にあります。そのことは不動産会社のみならず、地方自治体や世界各地の都市も意識していることは余り知られていません。4月27日~5月26…

東京・丸の内から世界へ 米国発、東京で世界的なユニコーン企業育成

 三菱地所は5月14日、アメリカ・シリコンバレーでスタートアップ支援を行っている「Alchemist Accelerator LLC」(Ravi Belani CEO)とともに、今年の秋から支援プログラ…

好調な不動産企業決算を支えた背景とは? 企業風土異なる2社が六本木でタッグ

 三井不動産や三菱地所、住友不動産など3月末決算の大手不動産企業5社の決算が出揃いました。一言で言えば各社好調な決算内容でしたが、その評価や財務的な分析は経済紙な…

空き家数は過去最高に 数の多さと制約で劇的な解消難しく

 ゴールデンウィーク最中の4月30日に、総務省は「令和5年住宅・土地統計調査」の速報集計を発表しました。この調査は5年に一度行う大規模な調査で、既に存在する住宅のス…

不動産会社がEV船を建造・所有 新スタジアムだけでない築地再開発とは

 東京・築地市場跡地の新たなまちづくりを行う事業者グループが決定し、その計画が公表されました。東京都は4月22日、「築地地区まちづくり事業」において、三井不動産を…

食と不動産の密接な関係

食と不動産の密接な関係

 食と不動産は密接な関係があります。商業施設内の飲食店はもちろんですが、最近では飲食店とECとの連携や、オフィステナントなどと共に持続可能な食を目指した取り組みが行われています。

 あまり言われていませんが、食は不動産の新たな成長分野の一つです。その理由をいくつかの挙げていきましょう。

 三井不動産は、日本の名店と共創する厳選お取り寄せグルメサービス「mitaseru(ミタセル)」の本格事業化

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事前の対応が重要な空き家対策に

事前の対応が重要な空き家対策に

 増え続ける空き家対策は、問題化する前の対策が重要になっています。国土交通省は6月21日、日本司法書士会連合会と全国空き家対策推進協議会と協力して作成した「住まいのエンディングノート」を公表しました。

 「放置空き家の発生を防ぐため、住まいを相続した方へ住まいや土地などの情報を伝えていくことに加え、元気なうちから住まいの将来をご家族で話し合うきっかけとしていただくことを狙いとしているもの」として

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若い世帯が住む分譲マンションの側に高齢者の住まいが必要な訳

若い世帯が住む分譲マンションの側に高齢者の住まいが必要な訳

 高齢者向けの住宅である有料老人ホームを、分譲マンションの近くに建設することのメリットは何でしょうか。三菱地所レジデンスは、2023 年10 月に有料老人ホーム「鎌倉市岩瀬1丁目計画」(全68室)を着工しましたが、この物件は、SOMPOグループで介護事業を担うSOMPOケアと初めて共同で住宅型有料老人ホームの開発を進めるものです。これは、2024 年3 月にSOMPOケアと同物件の賃貸借に関する

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関西で実験施設付きオフィス 医療系スタートアップ育む

関西で実験施設付きオフィス 医療系スタートアップ育む

 三井不動産は、2024年6月29日に大阪・中之島にオープンする未来医療国際拠点「Nakanoshima Qross」の3~5階に、関西圏で初となる「三井リンクラボ中之島」を開設します。これは、賃貸オフィスですが、実験機器を置いたり、共同の実験設備を備えているもので、創薬や医療系のスタートアップ企業の入居を前提としています。

 オープンデスクやコワーキングスペース、会員制コミュニケーションラウン

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【ニュースの見解】 国立マンション解体 広く報道された理由(追記あり)

【ニュースの見解】 国立マンション解体 広く報道された理由(追記あり)

 引き渡し直前で解体が決まった積水ハウスの分譲マンション「グランメゾン国立富士見通り」。多くの大手メディアが詳細に報じていますし、これを書いている時点(2024年6月11日)では、明らかになっていないこともありますので、報道のされ方に着目して短く見解を述べたいと思います。(2024年6月12日と6月19日に追記)

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【ニュースの見解】 スポーツが与える不動産の価値

【ニュースの見解】 スポーツが与える不動産の価値

 最近、不動産会社がスポーツに力を入れているケースが目立ちます。なぜでしょうか。スポーツが持つ高い集客力もさることながら、それ以上の魅力がスポーツというコンテンツにあるからだと思っています。今回は、そこをひもといていきます。(プロ向けの有料記事です)

 三井不動産とミクシーは、千葉・南船橋で「LaLa arena TOKYO-BAY」を5月29日にお披露目しました。元々は「ららぽーとTOKYO-

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外国人と空き家が変える 住宅・不動産業界

外国人と空き家が変える 住宅・不動産業界

 5月に入ってから、住宅・不動産業界の大手企業決算や政府の空き家に関する統計の公表などが相次いでありました。住宅・不動産業界と一言でいっても新築から流通、リノベーションなど幅広く、つながりつつもそれぞれの分野での大手にも強弱があります。この機会に、外国人と空き家をキーワードに各分野との関わりを示しながら、住宅・不動産業界の全体像を私なりに整理しました。

 まず、住宅・不動産業界の手掛けるビジネス

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再エネ事業と地域活性化の意外な関係 東急不動産が北海道・松前町に拠点

再エネ事業と地域活性化の意外な関係 東急不動産が北海道・松前町に拠点

 東急不動産は先日、北海道松前町で「TENOHA松前」を2024年5月15日にオープンしたことを発表しました。この施設は、近隣にある「道の駅」との機能補完を目指して、町内外の人たちが仕事や勉強などに使える場を提供し、さまざまなイベントを企画して、松前町の情報発信の場とすることを計画しています。「TENOHA松前」は木造2階建てで、主要幹線道路である国道228号線「松城バス停」に隣接して立地。コワー

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【ニュースの見解】 空き家売買仲介手数料アップの意味

【ニュースの見解】 空き家売買仲介手数料アップの意味

 2024年5月22日付の日本経済新聞(ウェブでは5月21日に速報)に「放置空き家の流通促す 国土交通省、仲介料上限上げ」という記事が出ました。この記事が出る少し前に、こうした方向性を検討していることを個人的に関係者から耳にしていましたので、このニュースに関する私なりの見解を示していきたいと思います。なお、この記事については基本的に関係者・プロ向けということを念頭に有料記事としました。

 さて、

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MRは全世代の住まいの選び方を変える 東京・池袋で新たな新築マンション販売

MRは全世代の住まいの選び方を変える 東京・池袋で新たな新築マンション販売

 MR(複合現実)を導入した新築マンション販売が始まっています。三井不動産レジデンシャルは、複数の物件を取り扱っている販売拠点「三井のすまい 池袋サロン」(東京都豊島区東池袋)において、5月中旬からMRを使ったモデルルーム案内を開始しました。日本で初めてだといいます。昨年6月にオープンしたこの販売拠点では、最大幅約7mの3面LEDビジョンを壁および床に配置。VR(仮想現実)モデルルームを展開してき

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年数経過した郊外住宅団地 DXで新たな価値を

年数経過した郊外住宅団地 DXで新たな価値を

 大和ハウス工業は、4月17日から兵庫県三木市にある戸建て住宅団地「緑が丘ネオポリス」のコミュニティ施設において、仮想空間や遠隔地とつながる空間拡張システムを使い、コミュニティ活性化に関する実証実験を開始しました。1971年から入居が始まり、同世代がほぼ同時期に入居したことで、高齢化と人口流出、空き家の増加などといった課題に直面していました。地域住民とともに同社が三木市と連携しながら、住み続けられ

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都市とイノベーションの深い関係

都市とイノベーションの深い関係

 都市とイノベーションは深い関係にあります。そのことは不動産会社のみならず、地方自治体や世界各地の都市も意識していることは余り知られていません。4月27日~5月26日まで東京都によるスタートアップ支援イベント「SusHi Tech Tokyo 2024」が東京ベイエリアで開催されています。このうち、東京ビッグサイトを会場に5月15、16日の2日間に渡って開催されたのが「グローバルスタートアッププロ

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東京・丸の内から世界へ 米国発、東京で世界的なユニコーン企業育成

東京・丸の内から世界へ 米国発、東京で世界的なユニコーン企業育成

 三菱地所は5月14日、アメリカ・シリコンバレーでスタートアップ支援を行っている「Alchemist Accelerator LLC」(Ravi Belani CEO)とともに、今年の秋から支援プログラム「Alchemist Japan」(アルケミスト・ジャパン)を開始します。これはアクセラレーター・プログラムと呼ばれるもので、スタートアップ企業が成長するように専門家による助言など様々な支援を行う

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好調な不動産企業決算を支えた背景とは? 企業風土異なる2社が六本木でタッグ

好調な不動産企業決算を支えた背景とは? 企業風土異なる2社が六本木でタッグ

 三井不動産や三菱地所、住友不動産など3月末決算の大手不動産企業5社の決算が出揃いました。一言で言えば各社好調な決算内容でしたが、その評価や財務的な分析は経済紙などにまかせるとして、ここでは今回の好決算を支えた背景や、今後のトピックスなどについて私なりの見解を示していきます。

 まずは今回の決算内容を支えた背景ですが、大きくは2つのことが指摘できます。一つは、コロナ後のオフィス需要が思っている以

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空き家数は過去最高に 数の多さと制約で劇的な解消難しく

空き家数は過去最高に 数の多さと制約で劇的な解消難しく

 ゴールデンウィーク最中の4月30日に、総務省は「令和5年住宅・土地統計調査」の速報集計を発表しました。この調査は5年に一度行う大規模な調査で、既に存在する住宅のストック状況を示す統計となっています。なお、確定値は9月に公表予定です。日本の総住宅数は、2023年10月1日時点で、6502万戸と、前回調査(2018年)と比べて4.2%(261万戸)増加しました。住宅の総数は増え続けており、過去最高戸

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不動産会社がEV船を建造・所有 新スタジアムだけでない築地再開発とは

不動産会社がEV船を建造・所有 新スタジアムだけでない築地再開発とは

 東京・築地市場跡地の新たなまちづくりを行う事業者グループが決定し、その計画が公表されました。東京都は4月22日、「築地地区まちづくり事業」において、三井不動産を代表企業としてトヨタ不動産、読売新聞グループ本社などの11社が構成企業として参画するコンソーシアムを選定。「ONE PARK×ONE TOWN」をコンセプトに、5万人収容のマルチスタジアムを中核施設として整備します。また、健康長寿社会に向

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