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空き家数は過去最高に 数の多さと制約で劇的な解消難しく

 ゴールデンウィーク最中の4月30日に、総務省は「令和5年住宅・土地統計調査」の速報集計を発表しました。この調査は5年に一度行う大規模な調査で、既に存在する住宅のストック状況を示す統計となっています。なお、確定値は9月に公表予定です。日本の総住宅数は、2023年10月1日時点で、6502万戸と、前回調査(2018年)と比べて4.2%(261万戸)増加しました。住宅の総数は増え続けており、過去最高戸数を更新しています。

 注目の空き家の戸数も900万戸と過去最多で、前回調査から51万戸の増加。空き家率も13.8%と過去最高を更新しました。賃貸住宅の空き住戸や売却用の住宅、別荘など(二次的住宅)といった使用目的がはっきりしている空き家が一定数あることは健全ですが、問題なのはそれ以外の目的がはっきりない空き家が385万戸、前回調査より37万戸も増加したことです。これは25年前の2倍以上の水準です。放置されて崩れかけていたり、害虫や動物が住み着いたりして周辺への悪影響が問題になるのは、この目的がはっきりしない空き家です。

総務省「令和5年住宅・土地統計調査」の速報集計から作成

 国土交通省の「令和元年空き家所有者実態調査」によれば、相続で取得したケースが半数を超えます。同じ調査で、空き家のままにしておく理由として、「物置として必要」、「解体費用をかけたくない」、「更地にしても使い道がない」という回答が多いです。この調査結果からは、解体費用の補助や空き家の使い道を提供すれば、空き家問題が解決しそうです。実際に空き家の解体費用補助や「空き家バンク」を導入する自治体も数多くあります。なお、「空き家バンク」とは、自治体が空き家を売却したい人と建物を購入したい人とのマッチングを図るために物件情報を提供するシステムのことです。

 これらの取り組みにより、個々の自治体において一定の成果をあげている事例もあります。しかし、全体として空き家数が増加している現状を踏まえると、大きく数を減らすための決定打には至っていないと考えられます。

新築供給を減らすのは有効策か

 空き家問題の議論で、新築供給を減らせばいいのではないかとの指摘もあります。人口が減っているのに新築住宅が年間80万~90万戸も供給されるのはおかしいという指摘です。ただ、急速に変化する社会・経済状況の中で、新築供給数の規制をどのようにすれば、うまく機能するのか難しいところです。危険な古い住宅の更新需要もあります。既存の制度において新築をコントロールする手法である、都市計画制度や建築確認制度なども含めた抜本的な議論も必要になるでしょう。

 空き家の取得理由で相続が多数を占めているのは、家があってもそこに住むことができない理由があるからでしょう。新築に目を向ければ、東京都内では1億円を超える新築マンションが高倍率で人気化しています。こうした物件の購入者は、40代前後で都心部に勤める共働き世帯が多く、地方に実家があっても、そこに住むという選択肢はないと思われます。新規供給を減らしても、この課題は残ります。放置される空き家には、所有者個々の事情が反映されています。

 空き家の保有コストが低いために放置されるという点も指摘されます。自治体は、放置される空き家に対して固定資産税を低く抑える住宅特例を適用しないということができますが、その対象を判断しなければなりません。人手不足の中、空き家問題に当たれる人員が限られる自治体にとって負担が増えるという課題が残ります。

 2015年に空き家対策の法律が実施されました。2023年12月に改正法が実施されましたが、これまで示してきたように空き家問題は一筋縄ではいきません。放置される空き家は385万戸と膨大ですが、解消には個々の問題で丁寧な対応が必要という点が、空き家問題の難しさを表しているのでないでしょうか。

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