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不動産会社がEV船を建造・所有 新スタジアムだけでない築地再開発とは

 東京・築地市場跡地の新たなまちづくりを行う事業者グループが決定し、その計画が公表されました。東京都は4月22日、「築地地区まちづくり事業」において、三井不動産を代表企業としてトヨタ不動産、読売新聞グループ本社などの11社が構成企業として参画するコンソーシアムを選定。「ONE PARK×ONE TOWN」をコンセプトに、5万人収容のマルチスタジアムを中核施設として整備します。また、健康長寿社会に向けた「ウェルネスイノベーション」「食・体験・にぎわい」「迎賓・ホスピタリティ」の3つの主要機能を導入し、東京の国際競争力を強化するとしています。

 5月1日には、三井不動産、トヨタ不動産、読売新聞グループ本社のそれぞれの社長が登壇して、築地のまちづくりについて記者会見を行いました。三井不動産の植田俊社長は、「これからの東京の競争力を左右する重要なプロジェクト」と話しました。

 中核となるマルチスタジアムは、用途に応じてフィールドと客席が形を変え、スタジアム、アリーナ、劇場、展示場へと専用化。想定されるイベントとしては、野球に加えラグビー、サッカー、バスケットボール、eスポーツ、MICE(ビジネスイベントなどの総称)、音楽ライブ、コンサートなどに使うことを検討しています。

中核施設となるマルチスタジアムのイメージ

 マルチスタジアムについては、巨人軍の本拠地を東京ドームから移転するのではないかということに関心が高まっています。会見で読売新聞グループ本社の山口寿一社長は「巨人軍の本拠地移転前提を検討してきたものではない。スポーツ・音楽・文化の振興発信に貢献できるものにする」としています。マルチスタジアムなどの開業予定は、2030年代前半と10年近く先となります。

 浜離宮恩賜庭園や隅田川といった周辺資源を生かした合計約10万㎡のオープンスペースを整備します。また、陸・海・空のモビリティが乗り入れ可能な広域交通結節点を整備し、築地場外市場と連動したにぎわいと交流を促進。築地の歴史と特性を生かした観光都市としての東京の魅力を向上させるとしています。

参画企業それぞれの新たな挑戦

広域交通結節点のイメージ

 広域交通結節点は、空飛ぶクルマの離発着ポートや新たな船着き場のほか、今後整備が検討されている首都高速道路晴海線出口や地下鉄新線の駅、自動運転などの次世代モビリティ、バス、タクシーなどが乗り入れる交通ターミナルも整備される予定です。トヨタ不動産の山村知秀社長は、「トヨタグループとして参画する意義として、まちづくりとモビリティを結びつけていく役割が重要と考えている」と述べています。

 もう一つ、舟運利便施設に築地の特徴として世界からも評価が高い食を提供する機能やシアターホール機能を持たせます。舟運については、三井不動産が自らEV船を建造・所有し、築地を中心とした新たな舟運ネットワーク構築を行うとしています。

 さらに、医療施設と連携するライフサイエンスコミュニティ施設や迎賓機能としてのMICE及び滞在施設、最先端の環境共生のまちづくりを実施していきます。そのほか、オフィスや国際水準のハイグレードな住宅なども整備する計画です。

 今回の会見では、都民の財産を預かって、東京の国際競争力強化のために使うということを強調していました。環境についても再三会見でしっかり説明していたことも印象的でした。また、トヨタ不動産は自らこのプロジェクトに投資し、デベロッパーとして東京での展開を強化することも主張していました。都心部での大型再開発プロジェクトは、参加企業それぞれの新たな挑戦が垣間見えています。


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