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外国人と空き家が変える 住宅・不動産業界

 5月に入ってから、住宅・不動産業界の大手企業決算や政府の空き家に関する統計の公表などが相次いでありました。住宅・不動産業界と一言でいっても新築から流通、リノベーションなど幅広く、つながりつつもそれぞれの分野での大手にも強弱があります。この機会に、外国人と空き家をキーワードに各分野との関わりを示しながら、住宅・不動産業界の全体像を私なりに整理しました。

 まず、住宅・不動産業界の手掛けるビジネス分野を「不動産開発」「住宅・アパートメーカー」「不動産流通・管理」「リフォーム・リノベーション」に分類していきます。複数の事業分野にまたがっている企業も多いので、この分類を全体をつかむ参考にしていただければと思います。

不動産開発

 オフィスや住宅、商業施設、物流施設などを開発する事業となります。三井不動産や三菱地所、住友不動産などのいわゆるデベロッパーと呼ばれる企業をイメージすれば問題ないでしょう。新築分譲マンションや分譲戸建て住宅を供給している企業もここに含まれます。デベロッパーは土地を取得して、その土地に様々な用途の建物を建てて、そこを貸したり、物件を売却することで収益を上げることが基本的なビジネスモデルとなります。

 土地利用の企画・設計などを担当し、建物の建設自体は鹿島建設などのゼネコンが担当します。大手デベロッパーは、グループ化が進んでおり、開発のみならず、不動産流通や住宅・アパートメーカーを傘下に加えている企業も多いです。また、分譲戸建てを建設・販売するオープンハウスや飯田グループホールディングス、地域の不動産会社なども、規模の小さな開発を手掛けていますので、このカテゴリーに含めることもあります。

 東急㈱やJRグループなどの鉄道企業、積水ハウスや大和ハウス工業のような住宅・アパートメーカー自身が不動産開発を手掛けており、混乱が起きやすい原因にもなっています。

 オフィスなど開発も分譲マンションも、大手企業による供給がメインとなっており、大都市中心部での開発が中心です。そのため、近年では外資系企業やその外国人従業員に向けたオフィスや高級賃貸住宅などの供給が増えています。

住宅・アパートメーカー

 住宅・アパートメーカーは、一般的に身近な存在です。新築で戸建て住宅やアパート、賃貸マンションなどを個人や法人から請け負って建設するのが基本的なビジネスモデルです。積水ハウスや大和ハウス、セキスイハイム、ヘーベルハウスなどといったよくCMで見かける大手住宅メーカーを始め、地域の工務店、アパートを請け負う大東建託などが該当します。

 もちろん、大手企業は不動産開発や流通・管理を始めとして、総合的に事業を手掛けています。また、先ほどの不動産開発で分類した分譲戸建てを建設・販売するオープンハウスや飯田グループホールディングス、地域の不動産会社なども、このカテゴリーに含めることもあります。

 新築建築が減少傾向にある中で、賃貸住宅や分譲戸建てと比べて注文戸建て住宅は苦境に立たされています。都市部ではマンションと比較して、資産性やタイムパフォーマンスを重視する都市のDINKS層の志向を捉えきれていないのが実態です。空き家の多くは戸建て住宅です。空き家が増えるなか、将来の売却や相続も見据えた注文戸建て住宅の提案が必要になっていると思います。

不動産流通・管理

 一般に「不動産」としてイメージされるのが、このカテゴリーです。賃貸住宅やオフィス、店舗などの賃貸の仲介や管理、土地や建物の売買の仲介が基本的なビジネスモデルとなります。賃貸の仲介は、多くの人が住まい探しでお世話になるので身近な存在です。賃貸仲介はフランチャイズなどが多く、売買仲介は大手不動産企業のグループが多いといった特徴がありますが、他のカテゴリーと比べて会社の全体数が多いです。なお、管理は建物オーナーから委託されて賃貸住宅などの管理を行いますが、管理の専門会社のほか不動産仲介会社が行うこともあります。

 賃貸住宅の入居者として外国人も増えています。各種書類を外国語対応とするなど、外国人の入居を支援する仲介会社もあります。また、地方では、空き家や賃貸の空き部屋が埋まらないことが問題になっています。仲介は手数料ビジネスですので、物件が動かないと商売になりません。国や自治体の空き家対策の一つである空き家バンクに地域の不動産会社が協力するなど、空き家対策で役割を果たすことが期待されています。

リフォーム・リノベーション

 近年注目されているカテゴリーです。既存の住宅やオフィスの内装や構造部分を強化する工事を行って、現代の用途やニーズにあった建物に刷新するビジネスです。古民家を宿泊施設に変えたり、空き家や空き店舗をコミュニティ施設やシェアハウスなどに変更します。設計事務所や新進の不動産会社などが中心で手掛けている企業の規模は大きくありません。リビタやUDSなど比較的規模が大きな企業は、鉄道会社や大手不動産企業の関連会社となっています。

 古民家をリノベーションした宿泊施設は外国人観光客に人気があります。自治体などの空き家対策としてもリフォーム・リノベーションへの期待は高いです。ただし、空き家対策として効果があるようなリフォーム・リノベーションは丁寧な事前調査がかかせず、担い手の数も限られています。数が多い空き家への対応として過度な期待は禁物だと思います。

 

 

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