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都市とイノベーションの深い関係

 都市とイノベーションは深い関係にあります。そのことは不動産会社のみならず、地方自治体や世界各地の都市も意識していることは余り知られていません。4月27日~5月26日まで東京都によるスタートアップ支援イベント「SusHi Tech Tokyo 2024」が東京ベイエリアで開催されています。このうち、東京ビッグサイトを会場に5月15、16日の2日間に渡って開催されたのが「グローバルスタートアッププログラム」。都市が抱える課題を国内外の都市やスタートアップ企業をつないで「持続可能な新しい価値」を生み出すきっかけになるようなイベントとしました。GAFAMの例を出すまでもなく、近年起きているイノベーションはスタートアップ企業が引っ張っています。

会場入り口付近の三菱地所や東京建物のブース
現役学生が企画・運営した学生パビリオンでのピッチコンテント

 会場内には、三井不動産をはじめとした大手・中堅デベロッパー8社や東急㈱やJR東日本などもブースを出展し、このイベントへの期待の高さを示しました。また、東京だけでなく関西圏や中京圏、九州、スイス、香港など40以上の都市もブースを出展。投資家など海外からの参加者に加え、環境やヘルスケア、AI関連のビジネスを手掛けるスタートアップ企業の出展も目立ちました。

 大企業経営者や大学教授、地方自治体の首長、官僚、投資家などが登壇した同時通訳によるトークセッションや学生によるピッチコンテストもあり、参加したある大手ゼネコンの社員は「非常に刺激を受けた、有意義だった」との声もありました。出展を見送った中堅不動産企業の幹部は、会場の様子を見て「出展しておくべきだった」と後悔の念もあったと言います。

世界中の都市は資金や人材の獲得を争っている

香港のブースでは、スタートアップ企業20社が自社の商品・サービスを紹介
大阪や兵庫・神戸などの関西パビリオン

 地方自治体が高い関心を示している都市とイノベーションにはどのような関係があるのでしょうか?都市がイノベーションに関心を向けることで、不動産企業にはどのような影響があるのでしょうか?まず、首都である東京は、世界各国の都市との間で、熾烈な国際競争を余儀なくされています。今後、都市の価値を高める有力な手段としてスタートアップ企業を生み出し、成長させる環境が整っていることがあげられます。

 東京でスタートアップ企業が産声を上げ、資金や人材を世界中から集め、企業として大きく成長するイメージです。地方都市についても、東京とは異なる特色を持つことで、やはり世界から資金や人材を集める必要があります。少子高齢化の日本では、地方都市といえども、世界を相手にしなければ生き残りは難しいといえます。

不動産会社のスタートアップ支援の背景

 不動産会社が再開発の際に、スタートアップ企業支援に力を入れているのは、都市の競争力を強化するという目的が背景となっています。そして、スタートアップ支援は、地方自治体も後押しをしていることも大きいです。ある不動産企業は、再開発事業に採択されるために地方自治体のこうした意向を組んだ提案をする必要があると本音を聞かせてくれました。

 不動産会社によるスタートアップ支援は、再開発事業を進める上での必要性ももちろんですが、スタートアップ企業が成長することで未来のテナントを確保するという面もあります。未来のまちづくりを手掛けることは、不動産会社のビジネスとして定着しつつあると言えます。


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