サトウヒロキ

サトウヒロキ

記事一覧

日記

2024年5月半ば。駅に着くまでにTシャツがダメになるあの季節がやってくる、東京。迎えるのは9回目になる。井の頭線の座席は、前より柔らかく感じられた。 わからないこと…

サトウヒロキ
1か月前
22

僕らは星を眺めている

頭の後ろを落として見上げると、言葉は力を失う。 あまりにも壮大で、うそみたいで、近く見えるのに、手の届かない大きな現実。理解と遠いところにある夜空。足元に転がる…

サトウヒロキ
4か月前
19

春一番

心地よい風が吹いている。 寒さのかたちが変わって、木々が揺れる。 べちゃ雪の上をスキップしながら、新しい教室に向かう。ワクワクと少しだけの不安と新品のリュック。 …

サトウヒロキ
4か月前
20

国道1号線

旅をしたい。 知らない街でも、知ってる街でも いや、出来るだけ知らない空気の、 知らない言葉が飛び交う街がいい。 そんなことを思っていた。 「川辺市子のために」 …

サトウヒロキ
6か月前
36

空だって飛べる

燃えるコンクリート。 ソールの剥がれかけた靴。 ほつれた服に、砂まみれの服。 1994年8月7日、北海道札幌市では歴代最高気温36.2℃を記録したらしい。そんな日に生まれた…

サトウヒロキ
9か月前
25

やさしくしてくれた人のことをちゃんと思い出せるだろうか

もしこの人生がずっと先に続くのであれば、今はとっても大きな"点"になると思う。 人間関係、やりたいこと、生活。 一昨年に参加したyoutube生配信ドラマ「マチアイ」の…

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いいわけ

父ちゃんとの温泉旅行は、まだ続く。 心だけ定山渓に取り残されて、 繰り返された先の、先の見えない日常の中にいる。 寝る前に、父親が「ラジオを聞きたい」と言い出した…

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恥ずかしい

「何にも失いたくない人なんですね」 2ヶ月くらい前、信頼する友達にそう言われた。一応、いい意味で捉えたけれど、よくよく考えるとあんまり良い意味じゃない。恥ずかし…

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もうひとつのこころ

夜中の漫画喫茶。 明大前、深夜1時ごろ。 まだ梅雨入りするちょっと前、ワンピースを1巻から読み直したくて、深夜に漫画喫茶に入った。 予備校の自習室を思い出す。 静か…

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ひとりごと

散歩にどハマりしている。というか、散歩に取り憑かれている。休みの日は、着たい服を着て、街を徘徊するだけ徘徊して、疲れたら座って本を読んでいる。映画館に行ってパン…

17

はじめての憧れ

2023年、4月10日、月曜日。 平日の昼間から湯船に浸かって、このことばを書いている。いつか買った防水スピーカーで、「美貌の青空」を流している。外は晴れている。17時…

10

ひとりひとり、街の空気

最近引っ越した。埃の多い町から、日差しが床に跳ね返る明るい街に来た。これは、何度も体験してきたことだけれど。毎日通る道が変わる。買い物する場所、日差しの浴び方か…

11

秋の風

急に涼しくなって、季節の変わり目を感じる。 この季節の夕方は、帰り道って感じがするから、何かとお別れする感じがして、勝手に寂しい気持ちになる。 美しい景色。現実…

11

そこにあった物語 「ゴールド」

この度、長編映画「ゴールド」の製作が始まる。 誰かに簡単に形容されたくない 僕の人生において、とてもとても大きな、大切な物語。 始まって、終わってしまう前に、 今…

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日記

日記

2024年5月半ば。駅に着くまでにTシャツがダメになるあの季節がやってくる、東京。迎えるのは9回目になる。井の頭線の座席は、前より柔らかく感じられた。

わからないことばかりだ。

スマートフォンのメモに残った言葉。そんなことを思うようになった。頭の中を掻き回すような焦りと共に電車が来る。よくこんなにも沢山のことをわからないまま、生きてこれたと思う。もう恥ずかしくもない。嫌で飛び出したバイト先でま

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僕らは星を眺めている

僕らは星を眺めている

頭の後ろを落として見上げると、言葉は力を失う。

あまりにも壮大で、うそみたいで、近く見えるのに、手の届かない大きな現実。理解と遠いところにある夜空。足元に転がる関係性や、昨日の失敗とか、長年の想いなんかも全部飲み込んでいく。

みんな小さくてハイテクなパソコンを持ち歩けて、理由はわからないけど、電波が飛んでるらしくて、街と街をつなぐ大きな橋があって、花粉症の薬を夕方に頼んだら、次の日の昼には僕の

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春一番

春一番

心地よい風が吹いている。

寒さのかたちが変わって、木々が揺れる。
べちゃ雪の上をスキップしながら、新しい教室に向かう。ワクワクと少しだけの不安と新品のリュック。

そんな感じの気分。2月が終わります。

舞台「川辺市子のために」を終えてから約2週間。本当に参加出来てよかった。改めて足を運んで下さった皆さん、気にかけてくださった皆さん、ありがとうございました。

今舞台に立てることは、決して当たり

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国道1号線

国道1号線

旅をしたい。

知らない街でも、知ってる街でも
いや、出来るだけ知らない空気の、
知らない言葉が飛び交う街がいい。
そんなことを思っていた。

「川辺市子のために」

藤原季節くんの企画「春の朗読」に参加して以来、ちょうど4年ぶりに舞台に立つことになった。東大阪で生まれた"市子"という1人の人間のお話。市子のことが知りたい。知らなくてもいいから一緒にいたい。わかるのにわからない。関西弁もわからない

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空だって飛べる

空だって飛べる

燃えるコンクリート。
ソールの剥がれかけた靴。
ほつれた服に、砂まみれの服。
1994年8月7日、北海道札幌市では歴代最高気温36.2℃を記録したらしい。そんな日に生まれた。
誕生日。額から大量の汗。
29歳。

池の見える公園の休憩所に座る。
人が乗ったアヒルが泳いでいる。
連絡で誕生日に気づきお寿司を買って、1人でお祝いをしている。

空を見上げると、果てのない青。
新しい、壮大な夢の空。

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やさしくしてくれた人のことをちゃんと思い出せるだろうか

やさしくしてくれた人のことをちゃんと思い出せるだろうか

もしこの人生がずっと先に続くのであれば、今はとっても大きな"点"になると思う。

人間関係、やりたいこと、生活。

一昨年に参加したyoutube生配信ドラマ「マチアイ」の一節が頭を巡る。2020年に参加した「春の朗読」の台詞を思い返す。『どこにいきたいんだっけ?』

自己嫌悪はドラッグだ。すれ違ったラッパーの人が言ってた。不治の病。

この先に、自分が足りないと思っているものが全部足りたとして、

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いいわけ

いいわけ

父ちゃんとの温泉旅行は、まだ続く。
心だけ定山渓に取り残されて、
繰り返された先の、先の見えない日常の中にいる。

寝る前に、父親が「ラジオを聞きたい」と言い出した。
いつも同じラジオを聞きながら、眠りについているらしい。9時就寝、3時起床。パン屋さん?早起きして朝ごはんを食べて新聞を読んで、1時間歩いて出勤しているらしい。

スマホでダウンロードしてみたら聞けそうだったので、サイドテーブルにスマ

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恥ずかしい

恥ずかしい

「何にも失いたくない人なんですね」

2ヶ月くらい前、信頼する友達にそう言われた。一応、いい意味で捉えたけれど、よくよく考えるとあんまり良い意味じゃない。恥ずかしい事だと思った。

そんな恥ずかしい男は、
父の日に、父の奢りで
父親と初めての温泉旅行に来ている。
恥ずかしい。

6歳から別々に暮らしている父とは、頻度は変われど定期的にご飯に行ったり、お墓参りに行ったり、ご飯に行ったり、お墓参りに行

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もうひとつのこころ

もうひとつのこころ

夜中の漫画喫茶。
明大前、深夜1時ごろ。

まだ梅雨入りするちょっと前、ワンピースを1巻から読み直したくて、深夜に漫画喫茶に入った。
予備校の自習室を思い出す。
静かでゆっくりとした空間。

街は眠っているのに、みんな音を立てないように作り上げた豊かさにつつまれる。

外に出てみる。

眠ったあとの東京は、なんだか優しい気がした。
みんな武器をしまっている。

あの町の戦士もみんな、刀を置いて眠る

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ひとりごと

ひとりごと

散歩にどハマりしている。というか、散歩に取り憑かれている。休みの日は、着たい服を着て、街を徘徊するだけ徘徊して、疲れたら座って本を読んでいる。映画館に行ってパンフレットだけ持って帰ったり、着いたその時間にたまたまやっていた映画を観て帰ったり、やっぱり家でご飯作ろう、となってすぐに帰ることもある。

身体が情報を欲しがっている感覚を強く感じる。音、声、景色、感情。出来るだけ何にでも、感情ごと飛び込ん

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はじめての憧れ

はじめての憧れ

2023年、4月10日、月曜日。

平日の昼間から湯船に浸かって、このことばを書いている。いつか買った防水スピーカーで、「美貌の青空」を流している。外は晴れている。17時ごろから予定がある。

「はじめての憧れ」
あこがれとはなんだろう、と考える。

りっしんべんに、わっぱ
心にこども なので
心が子供に戻る感じかな?

えー、あれずるい!
あれほしい!
かわいい!
あんな風になりたい!
あんな服

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ひとりひとり、街の空気

ひとりひとり、街の空気

最近引っ越した。埃の多い町から、日差しが床に跳ね返る明るい街に来た。これは、何度も体験してきたことだけれど。毎日通る道が変わる。買い物する場所、日差しの浴び方から、星の見え方まで、全部変わる。

これまでの歩き方で、街を歩いてみる。イヤホンを外して街を見てみる。覗いてみる。
街を行く人の服装や髪型。買い物や、会話の内容。自分は浮いている感覚があった。

風来坊は街に座る。周りを見る。自分を見る。あ

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秋の風

秋の風

急に涼しくなって、季節の変わり目を感じる。
この季節の夕方は、帰り道って感じがするから、何かとお別れする感じがして、勝手に寂しい気持ちになる。

美しい景色。現実がわからなくなる。
なんでもない大切な記憶が思い起こされる。

学校が終わって、友達と公園でキックベースをしにいく。月500円のお小遣い。毎月コロコロコミックを買って余った小銭で、コンビニの赤りんご青りんご84円のジュースを買って、公園に

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そこにあった物語 「ゴールド」

そこにあった物語 「ゴールド」

この度、長編映画「ゴールド」の製作が始まる。
誰かに簡単に形容されたくない
僕の人生において、とてもとても大きな、大切な物語。

始まって、終わってしまう前に、
今の気持ちを残しておきたいと思います。

「ゴールド」(監督/知多良)
2020年に製作・公開されたグッナイ小形さんの楽曲「きみは、ぼくの東京だった」のミュージックビデオのリハーサル用脚本から生まれた物語。

監督は、知多良さん。
自分が

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