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春一番

心地よい風が吹いている。

寒さのかたちが変わって、木々が揺れる。
べちゃ雪の上をスキップしながら、新しい教室に向かう。ワクワクと少しだけの不安と新品のリュック。

そんな感じの気分。2月が終わります。

舞台「川辺市子のために」を終えてから約2週間。本当に参加出来てよかった。改めて足を運んで下さった皆さん、気にかけてくださった皆さん、ありがとうございました。

今舞台に立てることは、決して当たり前のことじゃない。もしかしたら間違っているかもしれない。迷いながらもやり続けるしかない。ずっと同じ場所から叫び続けるしかない。

「生きていたい」

市子は叫んでいた。すぐそこで。団地の中の小さい公園で、キキちゃんがいるケーキ屋で、花が飾ってある部屋で、新宿の劇場で。生きることを、生きることの迷いや果てしなさを、諦めたような顔をして見るのはもうやめよう。叫びは劇場を突き抜けて自分にまで突き刺さり、抜けない杭となった。

心が躍る方へいきたい。それを一緒に喜び合える人と出会っていきたい。これからずっと。そうすれば息を続けられる。思えば千秋楽までの毎日は、全ての物事がキラキラと輝いていた。

こどもに戻ったように起きること全部を楽しんだ。走り回り、つまづき、よく食べ、よく眠り、夢を見た。そんな毎日が続く実感が心から嬉しかった。「これがやりたい!」小学校の学習発表会の時、そう思ったことを思い出した。

稽古に向かうとき、バイトをしている時、弁当を作っているとき、台本抱えて1人になるとき。世界の全てがあの舞台に繋がっていっている気がした。またあんな気持ちになれるだろうか。楽しみがまた一つ増えていく。

「撮りたい」と言ってくれた写真家さんと会う。本当に良い出会いに言葉はいらない。たまたま、同じ名前だった。夕日を追いかけるように二人で走ったような気もする。今年は沢山人に会おう。

日が暮れていく。
寒さのかたちが変わって、木々が揺れる。

心地よい風が吹いている。


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