エックハルトという名が哲学研究や宗教研究の世界でほとんど口にされなくなったのは偶然ではない。彼の思想は、常時問題にされるような事柄を扱うものではないのだ。古代アテネが、その最盛期にソクラテスやプラトンを産んだように、本当の哲学、純粋な真理の探究には、それに適当な時期が必要なのだ。
(Mエックハルト)神はその人間が過去にどうであったかというようなことには頓着しないのである。神はあくまで現在の神なのである。神は現在汝を見出しているとおりに汝を受取り、そうして汝が過去にどうであったかということではなく、今汝がどうであるかということに留意して、汝を受容れるのである