千都譲司

千都譲司

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シェアハウス・ロック0427

西周(にし あまね)  西周は文政12年生まれなので、福澤諭吉よりもだいぶ年長である。  家柄も、福澤と比べてだいぶいい。西周の祖父の曾孫には森鷗外がいる。津和野藩の御典医の家系である。  西周は幼少期に漢学の素養を身につけるものの、天保12年(1841年)から藩校・養老館で蘭学を学ぶ。安政4年(1857年)には蕃書調所の教授並手伝となり、このころ津田真道と知り合う。  文久2年(1862年)には幕命で津田真道・榎本武揚らとともにオランダに留学し、ライデン大学でシモン・フィ

    • シェアハウス・ロック0426

      福澤諭吉  福澤諭吉は兄の勧めで長崎へ遊学して蘭学を学ぶ。安政元年(1854年)、19歳であった。後、緒方洪庵の「適塾」で学ぶことになり、安政4年(1857年)22歳で適塾の塾頭となる。これは最年少記録である。  それまでは、この時代の人の例にもれず、漢学である。  安政6年(1859年)、英語を修める必要を感じ、開港した横浜に行ってみたが、看板の字すら読めず、衝撃を受ける。同年冬、日米修好通商条約の批准交換のため、幕府は使節団(万延元年遣米使節)をアメリカに派遣することに

      • シェアハウス・ロック0425

        にせ発明語  漢語っぽい単語、漢字二文字のものを目にすると、まず、江戸末期、あるいは明治期の発明なのではないかと疑う習慣ができてしまった。まあ、それだけ江戸時代までの日本語は、近代を扱えないものだったのである。近代ったって、文明開化(これはまだいい)とか、富国強兵とかの近代だけどね。  だから、日本語をやめて、外国語を使うようにすればいいなどと、トンデモを言う人も出て来た。トンデモ中のトンデモは森有礼である。  この人は初代文部大臣だが、明治3年に英語の国語化を提唱した。あ

        • シェアハウス・ロック0424

          発明語一覧  今回やるような、網羅的な発明語紹介は、本当はおもしろくない。でも、たまには俯瞰したり、ある程度の速度をもって発明語を扱うのもいいかもしれないと思い、今回はあえてそうする。  西周は、発明語の世界ではむしろ福沢諭吉をしのぐスーパースターである。哲学関連、心理学関連はほとんどが西の発明になると言って過言ではない。  まず、哲学そのものが、「philosophy」の西による翻訳語である。それ以前、特に江戸時代に同じ位置にいた儒学と区別するため、西周が造語した。これも

        シェアハウス・ロック0427

          シェアハウス・ロック0423

          【Live】絹の道行軍とタケノコ掘り  体の具合が悪い。金曜日からだ。  木曜日、77歳のお爺さんの「宗教的自叙伝」の編集作業を8時間ぶっ続けでやって以来である。その日の夕食は、若干食欲がないものの、一合飲み、パラパラとつまみも食えた。翌日からがいけない。翌金曜日は、朝のコーヒー以外なにも受け付けない。固形物はまったくだめ。食欲がまるでわかない。一日なんにもできなかった。  ところが翌土曜日は、市民講座で、「絹の道を歩く」というものに参加予定の日だったのである。朝コーヒーし

          シェアハウス・ロック0423

          シェアハウス・ロック0422

          写楽  階下にある図書室の本棚に、いま、写楽関係は、『東洲斎写楽』 (渡辺保)、『写楽』(中野三敏)、『写楽仮名の悲劇』(梅原猛)、『東洲斎写楽はもういない』(明石散人・佐々木幹雄)、『新・日本の七不思議』(鯨統一郎)がある。ああ、貧乏でも図書室を持てるってのも、シェアハウスのメリットだね。私なんかには相当に大きなメリットである。  渡辺保さんの本はすばらしいのでずっと捨てずに持っていたが、その他は、ちょっと写楽のことを考えたくなって、ここ一、二年で買い戻したものだ。  こ

          シェアハウス・ロック0422

          シェアハウス・ロック0421

          世界 「世界」は、福澤諭吉が明治2年刊の『西洋事情』において、worldの訳語として用いたのを嚆矢とする。ウソウソ、口から出まかせです。でも、本当にそうだったとしても、それは単なるマグレ当たりだ。  世界は明治以降の言葉と思われるかもしれないが、実は江戸時代から使われている。私は、渡辺保さんの『東洲斎写楽』でそのことを知った。  話がちょっと横道にそれるが、あるキーワードが本のタイトルにあると、私は必ず読むようにしている。「写楽」も、そのキーワードのひとつである。  こうい

          シェアハウス・ロック0421

          シェアハウス・ロック2404初旬投稿分

          【Live】忙しい週の後半0401  忙しいときは、忙しいことが重なる。これはどういうことなのだろう。  先週前半は本当に忙しかった。後半も、金曜日はライブを聴きに行き、土曜日は飲み会である。なにもない週(こっちのほうが、実は多い)は本当になにもない。散歩に出るくらいしか外出しない週すらあるくらいだ。  金曜日は、モリさんというピアニストのソロライブだった。  ここから先は、私の言っていることのわかる人はたぶん相当少ないに違いない。もし、「わかった」と言う人がいたら申し出て

          シェアハウス・ロック2404初旬投稿分

          シェアハウス・ロック0420

          コンピュータ語/カタカナ語  江戸時代の蘭学の熱気を書いていて、「既視感」にとらわれた。よくよく考えたら、なんのことはない。約二百年後、自分も同じような熱気のなかにいたのである。  私は30歳前後から、コンピュータ関連の編集/出版の仕事をしてきた。1980年ごろ、日本にはいっきにコンピュータとその関連がやってきて、「第二の黒船」のような状況を呈していた。40年ほど前のことだ。  まだコンピュータは8ビットだった。当然漢字は扱えない。アルファベット、カタカナがせいぜいだった。

          シェアハウス・ロック0420

          シェアハウス・ロック0419

          『蘭学事始』  蘭学のトップランナー杉田玄白は、高齢になり、自らの記憶する蘭学草創期のことを書き残そうと決意し、文化11年(1814年)に書き終わり、高弟の大槻玄沢に校訂させ、文化12年(1815年)に完成を見る。  内容は、戦国末期の日本と西洋の接触から始まり、蘭方医学の発祥、青木昆陽や野呂元丈によるオランダ語研究など。クライマックスは、オランダの医学書『ターヘル・アナトミア』翻訳の苦心談である。  前野良沢、中川淳庵らと杉田玄白は小塚原の刑場で刑死者の腑分け(解剖)を見

          シェアハウス・ロック0419

          シェアハウス・ロック0418

          渡辺崋山  渡辺崋山は「蛮社の獄」に連座した。天保10年(1839年)5月のことである。これは、言論弾圧事件だ。高野長英、渡辺崋山などが、モリソン号事件と江戸幕府の鎖国政策を批判したため、捕らえられ、獄に入るなど処罰された。  天保年間(1830年代)には、蘭方医グループとは別に、蘭学の研究とその新知識の交換をするグループが成立しており、渡辺崋山はその中心人物であった。高野長英、小関三英などもそのグループ内である。  国学者たちは彼らを「蛮社」(「蛮学社中」の略)と呼んだ。

          シェアハウス・ロック0418

          シェアハウス・ロック0417

          江戸語・東京語・標準語  近代日本語シリーズに戻る。  表題は、『江戸語・東京語・標準語』(講談社現代新書、水原明人著)による。この本も、近代日本語成立事情が書かれているのではないかと思い、読んだものである。ただし、近代日本語成立事情に関してはあまり具体的な収穫はなかった。それでも、周辺事情としていくつか参考になるところはあった。 (しかも、皮肉なことに、)幕末から明治初年にかけてとうとうと流れ込んできた欧米文化と外国語が、逆に漢語の隆盛をもたらしたのである。というのは、

          シェアハウス・ロック0417

          シェアハウス・ロック0416

          【Live】春爛漫  散歩道としてよく使う遊歩道では、ソメイヨシノがほぼ散り、葉桜になった。  気の毒な名前ではあるものの、花自体は可憐なオオイヌノフグリはまだ咲いているが、そろそろ終わる。青系統の他の野草、ブドウムスカリ、ムスカリアルメニアカムももうそろそろ終わりだ。  黄色系統で言うと、カラスノエンドウが咲き始めた。タンポポは強い花なので、このあたりでは2月中から咲いている。  シロツメクサは、もう真っ盛りと言っていい。これからは、遊歩道の散歩が楽しみである。  これら

          シェアハウス・ロック0416

          シェアハウス・ロック0415

          【Live】『シェアハウス・ロック』の由来  私は、同年代のおじさん、おばさんと3人で、シェアハウスで暮らしている。「ロック」のほうは、『ジェイルハウス・ロック』(エルヴィス・プレスリー)の単なる地口合わせだ。私は音楽好きなので、ついついそうしてしまったのである。あまり深い意味はない。  4月12日、国立社会保障・人口問題研究所が、2050年には全世帯数のうち2割超が高齢単身世帯になるという推計値を発表した。この推計値には、団塊ジュニア世代の未婚率の高さが影響しているという

          シェアハウス・ロック0415

          シェアハウス・ロック0414

          写真、博物2 「博物」と「写真」が同じ項になっているのをいぶかしむ方がおられるかもしれない。前回は、「写真」にまったく触れず、「博物」だけで終わってしまったし、同じ項にした事情も説明できなかった。 「写真」に至るまで、ちょっと長いが、まずもう一度「博物」から。 「博物」という語の歴史は古い。三世紀ごろの中国で『博物志』が既に著されている。日本列島では、卑弥呼さんがぶいぶい言わせていたころである。日本人はほとんど、字すら知らなかった。だいいち、日本列島はあったが、日本もなく、

          シェアハウス・ロック0414

          シェアハウス・ロック0413

          博物、写真1  前回「博物学的」と言ってしまったので、ちょっとそのあたりの事情をお話しする。今回のお話は、『江戸の博物学者たち』(杉本つとむ、講談社学術文庫)に教えられたことである。同書はとてもおもしろい本で、近代日本語採集を始めてから出会ったものだ。それまでは浅学ゆえ、杉本つとむさんも存じあげなかったし、ましてや、ご著作に触れたこともない。  さて、標題「博物、写真」を、これはいったいどういうことかと思われるかもしれないが、同書で初めて、「博物(学、館、etc)」と、「写

          シェアハウス・ロック0413