千都譲司

千都譲司

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シェアハウス・ロック0703

小林信彦さんで二度笑う  小林信彦さんは、私の好きな作家である。刊行された本もほぼ読んでいる。『週刊文春』で長い間見開きのコラムを書かれていて(前回のお話もこのコラム)、ここ数年は休載している。脳梗塞で入院され、入院記みたいなものをそのコラムで書いた後の休載だから、とても心配している。  このコラムは相当長い間続いた。よって前回、今回の話と、これからする次回の話もいつごろのことだかはよくおぼえていない。  まず、笑いが止まらなくなって苦しむ別の例をあげる。  葬式で、読経す

    • シェアハウス・ロック0702

      小林信彦は危険な作家 「危険な作家」と言われたら、皆さんは誰をお考えになるだろうか。  私だったら、アンリ・バルビュス、ジョリス=カルル・ユイスマンス、マルキ・ド・サド、日本で言えば澁澤龍彦などを考える。  これは一般性があるのだろうか。「Copilot」に聞いてみた。 Q.危険な作家には、どういう人がいますか? A.危険な作家とは、鋭い視点で現実を昇華させる作家を指します。彼らは大衆の愚かしさや情報化社会の本質を鮮やかな想像力で描き、フィクションに昇華します。一人の代表

      • シェアハウス・ロック0701

        【Live】電車の書籍広告  電車の書籍広告は、なんでセミナー本、ノウハウ本、深見東州の本ばっかりなんだろう。ただ、電車と言ってもJRには、「今月の新潮文庫」とか、私にも興味のありそうな書籍広告が出ることもある。  セミナー本、ノウハウ本とは、『マジメに働くと人生はツラくなる』とか、『楽してお金を稼ぐには』とか、『他人にあなたを認めさせる10の方法』とか、そういった類の本である。  さて、つい最近電車のなかで見た『算数 ひみつの7つ道具』(かんき出版)の広告についてが本日の

        • シェアハウス・ロック2406中旬投稿分

          「コペルニクスとボロ―ニャ」(in『規則より思いやりが大事な場所で』)0611  ボローニャはボロ―ニャ大学のことである。若きコペルニクスは、そこの学生になった。1497年のことである。コペルニクスはポーランド人だったんだね。知らなかった。  ちなみに、日本は室町時代。このころ、太田道灌は江戸城を築城し、北海道・渡島半島ではコシャマインの戦いが勃発した。平和に暮らしていたアイヌに、和人は相当悪いことをやったからね。私はアイヌを支持する。  コペルニクスのイタリア滞在中に、

        シェアハウス・ロック0703

          シェアハウス・ロック0630

          【Live】日常雑記・梅雨時編  フレイル防止のため、2日で一万歩歩くようにしている。1日5000歩だと、日によっては完遂できない日ができてしまうので、妥協策である。もちろん、これは「最低でも」ということであって、なにか用事があれば当然それ以上歩くことになる。  梅雨時になると、この日課のクリアがなかなか難しい。傘さして散歩なんてできないもんね。  昨年の梅雨時は、しかたないので最寄り駅近くのビル(一階にスーパーが入っている)に行き、そこの階段を昇り降りした。ただ、これは傍

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          シェアハウス・ロック0629

          沖縄についての涙について4 『毎日新聞』6月24日の夕刊に掲載されたコラム「犬が西向きゃ…」にあった話を今回は紹介する。執筆者は高尾具成さんである。  沖縄シリーズの掉尾を多少なりとも明るい話で締めくくれるのを、とてもうれしく思う。  沖縄戦終結後、住民は住む場所を失い、田畑は荒らされ、食料も衣類も十分にない生活を送らざるを得なかった。米軍による秩序回復後は、米軍からの配給が命綱という状態であったが、配給の列におとなしく並ぶ人たちばかりではなかった。  米軍の物資集積所、保

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          沖縄についての涙について3  日本軍の司令官が自決したことにより、とりあえず終戦となり、その日6月23日は、沖縄戦で犠牲になった人々を悼む「慰霊の日」になった。  だが、混迷を極めていた沖縄戦で、たかだか司令官が自決したくらいで、実質戦闘が終わったとはとても思えない。それ以降でも、散発的な戦闘は多数あったに違いない。  このことは、昭和20年8月11日に書かれた「今後予見すべき情勢判断」と題する東條英機の文書の冒頭からでも十分に推測できる。  その文書冒頭は「第一線将兵は今

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          シェアハウス・ロック0627

          「お兄ちゃん、みんなで死んじゃおうか」  私が小学2年生の三学期に、父親は精神病院に収監された。母親は、和裁の仕立職だった。針一本で、父親の入院費、私と妹、自分の生活費を稼いだことになる。大変な苦労だったと思う。  この期間で、忘れられないことがひとつある。昭和32年(1957年)のことだ。  私は、母親が夜なべの針仕事をしている前で横になっていた。横になってはいたものの、目はさめていた。 「お兄ちゃん」  母が呼びかけた。妹が生まれてから、私は「お兄ちゃん」と呼ばれていた

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          シェアハウス・ロック0626

          沖縄についての涙について2  前回掲げた「戦跡碑」の碑文を読むたびに、私は胸のあたりが熱くなる。怒りのためである。「そこにあるのは愛であった」などと、なぜ言えるのか。  大江健三郎は『定義集』のなかで、 ・追い詰めたのは米軍だけか? ・母親も幼児も自分から死を選んだのか? ・愛というのはこのような言葉か? と言っている。  前二者は、私も同様な思いを持つ。  ただ、後者は、私には多少別の感慨めいたものがある。  このころ、誰が言いだしたかは知らないが、米軍が日本に上陸したら

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          シェアハウス・ロック0625

          沖縄についての涙について1  一昨日6月23日は、第二次世界大戦末期、沖縄戦で犠牲になった人々を悼む「慰霊の日」であった。Wikipediaには、  沖縄戦は1945年(昭和20年)3月26日から始まり、主な戦闘は沖縄本島で行われ、組織的な戦闘は4月2日に開始、6月23日に終了した。 とあるが、それに先立つ3日前、渡嘉敷島では「米軍機の執拗な空爆と、機動部隊艦艇からの艦砲射撃にさらされた」という。だから、Wikipediaの上記の文は、正確ではないことになる。  また、

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          ペコちゃんの受難(続き)  また、Wikipediaでは、「カントリーマアム」(クッキー)について、賞味期限切れ商品の再包装による不正利用が平塚工場で行われているとするVTRの女性証言にもとづく放送(『みのもんたの朝ズバッ!』)もあったという。私はこれを見ていないのでなんとも言えないが、TBSは放送前に不二家に取材を行い、不二家側は「そのような不正利用は行っていない」「平塚工場ではカントリーマアムは製造していない」と回答したにもかかわらず、不二家側の見解にはいっさい触れずに

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          ペコちゃんの受難  2007年(平成19年)だろうか、確かTBSテレビ報道番組『みのもんたの朝ズバッ!』が、「反不二家キャンペーン」みたいなことを始めた。発端は、不二家が製造工程で「消費期限切れの牛乳」を使ったということだったと思う。ただ、この「消費期限」は、当初番組中では「内規」と言っていたと思う。  これは、ちょっと自信がない。ただ、「『内規』の消費期限と、世間一般での消費期限の両方を明示しなければ報道としてダメだろう」と考えたことや、また、「どう考えても、『内規』のほ

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          ペコちゃん牧場 「ヘコむ ペコちゃん牧場」という記事が『毎日新聞』(6月19日夕刊)に出ていた。不二家のペコちゃんは、私が記憶する限り、キャラクター人形としては最古のナショナルブランドのものだ。象のサトちゃん(1959年)や、コルゲンコーワのカエル(1963年)などは、ペコちゃんに比べれば新参者である。カーネル・サンダースなんて、日本上陸は1970年だったはず。新参者もいいところである。  不二家によると、ペコちゃんは1950年に店頭人形としてデビューしている。「最古」は間

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          シェアハウス・ロック0621

          都市計画から見た『振袖火事』  明暦2年10月9日、吉原(当時は日本橋人形町付近にあった)の年寄たちが奉行所に呼び出され、移転を迫られた。市街地再開発の第一号ターゲットであった。ところが、これは、市街地再開発のほんの一端に過ぎなかった。  それに先だって、6月5日に屋敷小割奉行として喜多見五郎左衛門以下4名が任命された。7月11日には、この4名に寺社奉行・安藤重長、松平勝隆、町奉行・神尾元勝(南)、石谷貞清(北)、勘定頭・曾根源右衛門、村越知左衛門が、松平伊豆守信綱邸に集合

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          シェアハウス・ロック2406初旬投稿分

          ネットのエントロピー増大0601 「街頭」の活性、 言い換えると猥雑、もっと言うといかがわしさはネットのなかに移ったのだろうか。  福岡伸一さんは、『週刊文春』連載の「パンタレイパングロス」(5月23日号)で、「動的平衡論」にエントロピー増大をつなげ、以下のように言う。  最近とみにエントロピー増大が顕著なのは、とりもなおさずネット社会。ゴミやノイズだけではなく、毒素や腐敗物が散乱し、罠や落とし穴がいたるところにしかけられている。  こうなると小手先の掃除やメンテ(削除や

          シェアハウス・ロック2406初旬投稿分

          シェアハウス・ロック2405下旬投稿分

          咳ではなく、すすり泣き0521  ウィレム・メンゲルベルク指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団演奏、『マタイ受難曲』(ヨハン・セバスティアン・バッハ)1939年のライブ盤には、すすり泣きが聞こえる。私はLP版で、そのすすり泣きを聞いた。25歳だった。 『マタイ受難曲』は、『マタイによる福音書』の音楽版と考えればよい。そのハイライトは、「ペテロ否認」である。「ペテロ否認」はご存じなくとも、「最後の晩餐」はご存じだろうという前提で話を進める。 「最後の晩餐」の席で、イ

          シェアハウス・ロック2405下旬投稿分