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エッセイ

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ノンフィクション、実録エピソードです。生きづらさ、自己肯定感、悩みが中心。
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2023年4月の記事一覧

家事育児で仕事がうまくいかない人へ

家事育児で仕事がうまくいかない人へ

 私は三人の子どもを育てながら、都内のIT企業で働いている。副業では翻訳やライターや自治体の仕事をしている。夫は夜勤や土日出勤があり、彼も私も実家は遠方だ。今でこそ育児も仕事も楽しいし、夫との仲は悪くない。しかし今に至るまでの道のりは、決して平坦とは言えないものだった。

 半年前に夫から別居の提案をされた時。子どもは五歳、三歳、〇歳だった。彼は「仕事で疲れてるのに家に戻ると『家事やれ』『育児しろ

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いいことを言う奴は、だいたい疑った方が良い

いいことを言う奴は、だいたい疑った方が良い

 思想家・吉本隆明による言葉で「いいことを言う奴は、だいたい疑った方が良いぞ」というものがある。どういった文脈で書かれたのかは忘れたけど、大学時代にこの『教え』に出会い、十年以上経った今でも心に残っている。

 同じような意味で「巧言令色すくなし仁」という四字熟語もあるが、少しニュアンスが違う。「巧言令色~」は「口先八兆でうまいことおだてて、高額の住宅ローンを組ませる不動産営業マン。自分の利益を優

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仕事についてなんて話したくねえよ

仕事についてなんて話したくねえよ

仕事についてなんて話したくねえよ。本当のところ、会社員の誰もがそう思っているんじゃないだろうか。

そもそも労働というのは、大きな嘘である。新卒から一貫して法人営業という詐欺みたいな行為で生計を立てていたから、余計にそう思う。銀行員の頃は、利益率の高い金融商品をひたすら客に売りつけていた。諸事情により詳細は書けないが、別の職場では”こんなサービス買うバカいるのかよ?”と思いながら営業をしていたこと

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NO MORE嫌がらせ,子連れママの護身術

NO MORE嫌がらせ,子連れママの護身術

「金髪ショートにして下さい」と美容院で告げた時。珍しい虫を見るような目をした美容師さんが、鏡に映っていた。

「本当に良いの?」
 美容師さんは、私の髪を手ですいて言った。やっとのことで到達した、念願の茶髪ボブだと知っての発言だった。
「良いんです。強くなりたいから」
 言ってみて、自分でもバカみたいだと思った。美容師という人種は、深入りしない方が良い話題を知っている。美容師さんは頷き、薬剤つくっ

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【エッセイ】エクストリーム・コロナ~医者の家族編~

【エッセイ】エクストリーム・コロナ~医者の家族編~

秋晴れが気持ち良い、ある日曜日の朝。久々に仕事がなくて珍しく家にいる夫と、子どこたちがはしゃぐ声が聴こえる。「朝ご飯を食べがてら、君たちの好きな、大きい公園に行こうか」と提案する夫に、4歳の長男と2歳の長女の歓声が上がった。普段あまり家にいない夫も、家族らしいことができて嬉しいのだろう。
コロナで外出自粛要請は出ているものの、公園なら密ではないし、自分とは無縁の世界だろう。そう思い、出かける準備を

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【エッセイ】1000人に1人の難病

【エッセイ】1000人に1人の難病

あれは長男が五歳になった、夏の終わり。彼の闘病生活が三年目を迎えた頃だった。小児科外来の待合室で、長男の名前が呼ばれた。スマホで動物の動画を観続ける長男を引きずるようにして、私は診察室へ入っていった。白い壁、白いベッド、白衣を着た初老の先生。毎度おなじみの光景だ。前触れなく急変する長男の体調とは正反対で、心休まる場所だった。そのはずだった。

私たちが腰掛けると、先生はにこやかに長男へ尋ねた。

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【エッセイ】ずるい家政婦さん

【エッセイ】ずるい家政婦さん

ガキ共を保育園に預け、満身創痍で家に戻った私の眼前に広がるのは、ぐちゃぐちゃのリビングだった。
 深いため息がリビングと、隣接する子供部屋に広がる。『子供がいても部屋を綺麗に保つ秘訣』というWeb記事を読んだばかりなのに、この有様だ。私は窓を開けた。三月の肌寒い風と共に、駒沢通りの騒音が入り込んでくる。本来なら不快であるはずのそれらは、部屋に満ちた不機嫌な朝の残り香―六歳長男と四歳長女が登園を拒否

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