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怖い話

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#ショートショート

イタズラ好きな叔父(短編小説)

イタズラ好きな叔父(短編小説)

《ズサッ》『痛〜って〜』

遥か先でイタズラ好きの叔父が笑っている。

肘は擦れて血が滲み、服は潰れた青草の汁で汚れている。

足元の草は葉と葉の先が縛ってあり、見事に僕は引っかかって転んだのだ。

叔父は子供っぽい性格で怪しい営業の仕事をしていたが、ある時【お化け屋敷】経営に急に乗り出しひと財産築くまでになっていた。

勿論そんな叔父に計画性は無く、お化け屋敷は廃れお金は車や別荘購入で使い果たし

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アジサイ花の心変わり(短編小説)

アジサイ花の心変わり(短編小説)

『とても綺麗なアジサイの花ね、、』

庭にはアジサイの株が沢山植わり、アルカリ性土壌からピンクの花が咲き誇っていた。

僕は妻の傷だらけの腕を見ながら、5月に作ったローズシュガーの紅茶を手渡す。

妻はアジサイの花が好きだ。

アジサイの花ならいつまでも眺めている。

ある日庭に巣立ちしたばかりの小鳥が迷い込んできた。 羽ばたきし過ぎて弱ってしまっている。小鳥は結局動かなくなり、天に召されてしまっ

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冷たい雨に佇む女性(短編小説)

冷たい雨に佇む女性(短編小説)

今年の梅雨の雨は激しく冷たい。傘に当たる雨の振動で手が痺れてきそうだ。

靴に染みる雨水でトプトプと靴の中が洪水になっている。

そんな雨の街中を一人の少女が佇んでいた。

彼女の前髪からは滝のように雨水が流れ、顎から首筋、そして肌色が透けた白いブラウスへと吸い込まれるように流れ下る。

表情はよく見えないが、喜んでいないことだけは確かな様だ。

すれ違った彼女を無視することも出来た。通り過ぎれば

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適任者(グロ短編小説)

適任者(グロ短編小説)

私は今日も工場で働く。沢山の輸送トラックが私達の出番をいつかいつかと待ちかねている。

【かって】トラックからは《モ〜モ〜》と鳴き声が響き、旅の疲れで口の周りが泡だらけの牛達が怯えて待っていた。

そんな牛達を急かし脅し叩きなだめ、仕事現場へ誘導する。

牛達が仕事現場に辿り着くとそこでベテラン、同僚の出番だ。

同僚は牛が一瞬他に気がそれた瞬間に牛の眉間にキャプティブボルト(屠畜銃)を打ち込み、

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熱血先生と冷血生徒(短編小説)

熱血先生と冷血生徒(短編小説)

その先生はまだ30代になったばかりの、男の先生だった。

初の担任であり、色々と生徒と関係を築く為の自分なりの考えも持っていた。

その男の先生は(金八先生)や(熱中時代)(ごくせん)などの学園ドラマを漁って見ていた為に、先生という仕事に夢や希望を抱いてドラマの主人公に自分の姿を重ねていた。

一人一人の生徒に向き合おうと努力し、落ちこぼれそうな生徒には一生懸命に声を掛けた。

ある時ちょっとベタ

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不公平な兄弟差別(短編小説)

兄は沢山沢山沢山沢山人を殺している。

殺しても殺しても罪に問われず、のうのうと暮らしている。

兄は小さい時からそうだった。

兄が虫を殺しても怒られず、僕がネコを殺すと怒られた。

兄がズボンに穴を開けても怒られず、僕が壁に穴を開けると怒られる。

同じ様なことを行っても兄は良くて僕はダメで、不公平この上ない。

兄が人を殺しても良いのなら、僕も人を殺しても良い筈だ。

一人・・二人・・三人・

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悲しみ手当て(短編小説)

悲しみ手当て(短編小説)

2031年、悲しみは数値化され、その年の悲しみに応じて政府から見舞金《悲しみ手当て》が支給されていた。

悲しみ数値1〜30点は5000円、30〜60点は10000円、60〜90点は30000円、90〜100点は破格の1000000円だった。

明日は年間の悲しみ数値締切日。

私の持ち点は55点だった。

あと5点で30000円になる。

過去の経験から5点はペットの死、、

ごめんな、、

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悪魔が乗っています。(短編小説)

悪魔が乗っています。(短編小説)

『遅っせい車だなぁー追い越しを走るなっクソがっ』

『何が【赤ちゃんが乗っています。】だぁっ!ぁん!それが何だー』

俺は強引に左から追い越しをかけ、相手に急ブレーキをかけさせながら前に割り込んだ。

急ブレーキを2回ほど踏んで、相手に車間距離を開けさせる。

アクセルを踏み込んでスピードを出すが、夕方のラッシュでもありまた直ぐ前方が塞がってしまった。

『オラオラッもたもた走んなャっクソボケがっ

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粘着男のターゲット(短編小説)

粘着男のターゲット(短編小説)

18時36分金○駅4番線ホーム○津川行き普通電車先頭車両付近。

いつも見慣れたセミロングの女性の後ろ姿が見えた。

《おっ、、今日も俺の嫁と同じ電車だ!》

ホームに滑り込んで来た電車の扉が開き、俺の嫁に続き先頭の車両に乗り込む。

後ろからグイグイ押される力をかわしながら、俺の嫁の右後ろの位置をキープする。

満員電車の人混みで俺の鼠蹊部に密着する俺の嫁のケツの膨らみは、電車の揺れに合わせて俺

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聴・か・せ・て、、お願い、、(短編小説)

聴・か・せ・て、、お願い、、(短編小説)

『ぷぅ〜ぅぅぅッ』

それは僕が初めて聴いた若い女の子のオナラだった。

それはそれは興奮して、、【聴きたい】【また聴きたい】【どうしても聴きたい】【なんとしても聴きたい】【どんな手を使ってでも聴きたい】【絶対聴いてやる】【聴くぞ】【聴かせろ】【屁を出せ】【屁をこけ】【出させてやる】【ふははははははははははははははは】【グギャーーーーー】【ウフウフウフウフウフッ】【グフッグフッグフッグフッグフ】

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公園にゴミを捨てたなら、、(短編小説)

公園にゴミを捨てたなら、、(短編小説)

久しぶりに近所の児童公園に来た。

懐かしの遊具、懐かしのベンチ、、しかし遊具やベンチの周りにはお菓子の空袋や空のペットボトルが散乱し荒れた雰囲気が漂っていた。

僕はポケットからコンビニの空袋を取り出して、丁寧にひとつひとつゴミを片付けていった。

翌日、公園に行くと又ゴミが散乱している。

僕は一計を案じる事にした。

恐怖でゴミ捨てを無くす、、名案だ。

ゴミの横に

【呪うよ?いい?】

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思い出の樹の洞(怖・短編小説)

『ここの奥に秘密の場所があるんだ!!』

『すっげぇークワガタ獲れるんだぜー』

『あれ〜ここの木にでっかい《穴》があったのに、、セメントで埋められてる、、』

『あ〜あぁ〜、、がっかり、、』

子供の頃は一人で虫を獲るのが大好きで、公園、墓地、神社、城跡、木の生えている場所をいつもタモを持って歩いていた。

特に山城跡の奥にある大木には大きな人が入れる程のうろがあり、そこから滲み出る樹液にクワガ

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1.5秒の誤算(怖・短編小説)

1.5秒の誤算(怖・短編小説)

《カン カン カン カン》

黒と黄色の竹竿が警告音と共に下がってくる。

(ハァ ハァ ハァ ハァ)

計画通りいけば大丈夫、、計画では上手くいく。

僕は何度も何度も心で繰り返し、恐怖心を抑えていた。

《カン  カン カン カン》

ツートンカラーの竹竿はすっかり下に下がり切り、上下に揺れて往来を制止する。

《カン カン カン カン》

(ふぅ ふぅ ふぅ ふぅ ふ、、今だ、、)

僕は竹

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見えなくて、見えていなくて(怖・短編小説)

いつからだろう、、子供の頃、、から、、物心がついた頃から、、人と接する様になった頃から、、

コップの中から虫がウジャウジャ出てくる様になった。

水道の蛇口をひねっても虫が出てくる。

ソースを出しても、

靴を履く時も、

お風呂に入る時も、

勿論それは人の顔も同じで、

目も鼻も口も耳も、漏れなく虫が出てきている。

そんなことには慣れてしまい、見た目虫のコーヒーもお茶も飲めるし、ラーメン

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