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怖い話

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記事一覧

負の人選(短編小説)

負の人選(短編小説)

『はげしく同意』

『はげみたまえよ』

『アハハハハハ〜』

昼休み中に喫煙所で同僚と楽しく会話をしていた。

パーテンションの向こうに禿げたZ部長が居る事にも気づかずに!

それから少ししてプロジェクトリーダーに俺は選ばれた。

成功すれば同期の出世頭になるだろう。

メンバーは俺を含めて6人。

作業を進めだしてメンバーそれぞれの人間性が明らかになってきた。

Aさんは『絶対このやり方の方が

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優しいきみちゃん【短編小説】

優しいきみちゃん【短編小説】

《ドスッ》

『あら?おはよう、やっぱりあなたじゃなかったのね』

『とてもいい子だったから変だとは思っていたのよ』

呑気に母親が笑っている。

僕は夜中のうちに分裂した【僕】に突き立てた出刃包丁を抜き取り、大きな肉塊をゴミ袋に入れた。

いつからだろう、朝起きるとたまに【僕】がもう一人いる。

そのまま放っておいたら、、きっと入れ替わられてしまうのだろう、、

出刃包丁を持ってウロつくのは僕の

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カッコウの托卵(短編小説)

カッコウの托卵(短編小説)

『いよ〜っと!!』

僕は重い石を斜めにずらし中から小さな壺を取り出した。

《バサッ》

蓋をとると壺の中身を近くの草むらに無造作に放り捨てる。

辺りには人っ子一人も無く、真っ暗な中での作業だ。

我が家には昔から特異な習慣があった。

曽祖父から祖父、父へと受け継かれてきた我が家だけの習慣。

そして今回習慣を僕が引き継いだのだ。

中身を捨てて空になった壺に懐から袋を取り出し、コロコロと中

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三歩で忘れる恨み(短編小説)

三歩で忘れる恨み(短編小説)

子供の頃はまだ動けたが身体もどんどん成長して大きくなり、上も下も右も左も前も後ろも壁と身体が接して身動きをとることは出来なくなっていた。

そんな私の所に外から来る小さな奴らが言う。

『外は広いよ!大きいよ!自由に空を飛び大地を歩きみんなと楽しく遊べるよ!君たちは身動きも出来ず食べられるのを待つばかり。可哀想だね!』

小さな奴らは言葉とは裏腹にウキウキニコニコと話しかけて来る。

『うるさい!

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父の教え(短編小説)

父の教え(短編小説)

ツンツン ギュッギュッ

『父ちゃん 魚が釣れたよ!』

見ると糸には小さな魚がぶら下がり、釣り針を外そうとすると魚はしっかりと針を飲み込んでしまっていた。

『これはダメだなぁ〜死んじまう、食って供養するか、、』

小さな頃から父ちゃんからは生命の大切さを教わった。

父ちゃんはどんな小さな魚も死んだら持ち帰って食べて供養した。

それから月日はたち僕も大人になった。

もちろん釣りも続いていて

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短気は(短編小説)

短気は(短編小説)

[ブッブー]

健二はクラクションを鳴らすと直ぐ右足で車のアクセルを踏み込んだ。

『うぉら〜俺の前に入るなゃ〜💢』『クソが〜』

健二の前に入りかけた車はブレーキを踏み、大人しく健二の後ろで車線変更を行った。

兎に角健二は気が短かった。当然人に先を譲るなんてことは思いもしなかった。

ある日健二はいつもの様に車を飛ばし、前へ前へ進んでいった。

『オラァどけや〜チンタラ走るな〜』

右に左に

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イタズラ好きな叔父(短編小説)

イタズラ好きな叔父(短編小説)

《ズサッ》『痛〜って〜』

遥か先でイタズラ好きの叔父が笑っている。

肘は擦れて血が滲み、服は潰れた青草の汁で汚れている。

足元の草は葉と葉の先が縛ってあり、見事に僕は引っかかって転んだのだ。

叔父は子供っぽい性格で怪しい営業の仕事をしていたが、ある時【お化け屋敷】経営に急に乗り出しひと財産築くまでになっていた。

勿論そんな叔父に計画性は無く、お化け屋敷は廃れお金は車や別荘購入で使い果たし

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アジサイ花の心変わり(短編小説)

アジサイ花の心変わり(短編小説)

『とても綺麗なアジサイの花ね、、』

庭にはアジサイの株が沢山植わり、アルカリ性土壌からピンクの花が咲き誇っていた。

僕は妻の傷だらけの腕を見ながら、5月に作ったローズシュガーの紅茶を手渡す。

妻はアジサイの花が好きだ。

アジサイの花ならいつまでも眺めている。

ある日庭に巣立ちしたばかりの小鳥が迷い込んできた。 羽ばたきし過ぎて弱ってしまっている。小鳥は結局動かなくなり、天に召されてしまっ

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冷たい雨に佇む女性(短編小説)

冷たい雨に佇む女性(短編小説)

今年の梅雨の雨は激しく冷たい。傘に当たる雨の振動で手が痺れてきそうだ。

靴に染みる雨水でトプトプと靴の中が洪水になっている。

そんな雨の街中を一人の少女が佇んでいた。

彼女の前髪からは滝のように雨水が流れ、顎から首筋、そして肌色が透けた白いブラウスへと吸い込まれるように流れ下る。

表情はよく見えないが、喜んでいないことだけは確かな様だ。

すれ違った彼女を無視することも出来た。通り過ぎれば

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適任者(グロ短編小説)

適任者(グロ短編小説)

私は今日も工場で働く。沢山の輸送トラックが私達の出番をいつかいつかと待ちかねている。

【かって】トラックからは《モ〜モ〜》と鳴き声が響き、旅の疲れで口の周りが泡だらけの牛達が怯えて待っていた。

そんな牛達を急かし脅し叩きなだめ、仕事現場へ誘導する。

牛達が仕事現場に辿り着くとそこでベテラン、同僚の出番だ。

同僚は牛が一瞬他に気がそれた瞬間に牛の眉間にキャプティブボルト(屠畜銃)を打ち込み、

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熱血先生と冷血生徒(短編小説)

熱血先生と冷血生徒(短編小説)

その先生はまだ30代になったばかりの、男の先生だった。

初の担任であり、色々と生徒と関係を築く為の自分なりの考えも持っていた。

その男の先生は(金八先生)や(熱中時代)(ごくせん)などの学園ドラマを漁って見ていた為に、先生という仕事に夢や希望を抱いてドラマの主人公に自分の姿を重ねていた。

一人一人の生徒に向き合おうと努力し、落ちこぼれそうな生徒には一生懸命に声を掛けた。

ある時ちょっとベタ

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不公平な兄弟差別(短編小説)

兄は沢山沢山沢山沢山人を殺している。

殺しても殺しても罪に問われず、のうのうと暮らしている。

兄は小さい時からそうだった。

兄が虫を殺しても怒られず、僕がネコを殺すと怒られた。

兄がズボンに穴を開けても怒られず、僕が壁に穴を開けると怒られる。

同じ様なことを行っても兄は良くて僕はダメで、不公平この上ない。

兄が人を殺しても良いのなら、僕も人を殺しても良い筈だ。

一人・・二人・・三人・

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悲しみ手当て(短編小説)

悲しみ手当て(短編小説)

2031年、悲しみは数値化され、その年の悲しみに応じて政府から見舞金《悲しみ手当て》が支給されていた。

悲しみ数値1〜30点は5000円、30〜60点は10000円、60〜90点は30000円、90〜100点は破格の1000000円だった。

明日は年間の悲しみ数値締切日。

私の持ち点は55点だった。

あと5点で30000円になる。

過去の経験から5点はペットの死、、

ごめんな、、

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悪魔が乗っています。(短編小説)

悪魔が乗っています。(短編小説)

『遅っせい車だなぁー追い越しを走るなっクソがっ』

『何が【赤ちゃんが乗っています。】だぁっ!ぁん!それが何だー』

俺は強引に左から追い越しをかけ、相手に急ブレーキをかけさせながら前に割り込んだ。

急ブレーキを2回ほど踏んで、相手に車間距離を開けさせる。

アクセルを踏み込んでスピードを出すが、夕方のラッシュでもありまた直ぐ前方が塞がってしまった。

『オラオラッもたもた走んなャっクソボケがっ

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