悲しみ手当て(短編小説)
2031年、悲しみは数値化され、その年の悲しみに応じて政府から見舞金《悲しみ手当て》が支給されていた。
悲しみ数値1〜30点は5000円、30〜60点は10000円、60〜90点は30000円、90〜100点は破格の1000000円だった。
明日は年間の悲しみ数値締切日。
私の持ち点は55点だった。
あと5点で30000円になる。
過去の経験から5点はペットの死、、
ごめんな、、
私のペット、、日本で唯一の5本指ガエル、鹿児島県の奄美大島と加計呂麻島に棲息するオットンガエル(名前はフロチン)
私は愛していたよ、、フロチン
(これで30000円)
『チ〜〜ン ナンマイダブ〜♪』
私は目覚まし時計を7時にセットして就寝した。
(チュン チュン チュン チュン)
《ん〜? なんだ?なんだ?なんだ?なんだ?》
私の手足を息子2人が押さえ込んでいる。
枕元には妻の由美が佇んでいる。
『なんだ?どうした?なんだ?なんだ?』
戸惑う私に妻は一言『ごめんね!』と言うと私の鼻を摘まんできた。
『ふんが?だでぃだってる?』
妻は必死で口呼吸している私の口に【トロットロの餅】を流しこんできた。
《ゲホッ ゴボッ ウグッ ウグッ ガハッ》
《ふんグッ ウグッ ウグッ ゲッゲッ》
《ンガッ ンガッ ・ ンガッ・ ・ ・ンガッ・》
『母さん、これで30000円だね♪』
『あと5点なら大丈夫だよね、、父さんで5点あるかな、、』
『焼き肉〜焼き肉〜♪』
《私はカエルと同じか、、》
薄れゆく意識の中で、妻と息子達の家族団欒の会話に一人突っ込みチャチャを入れていた。
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