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エゾラノ短編マガジン

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蝦空千鶴が書いた短編小説。
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記事一覧

『キャンバスとゴミ箱が花になった話』シュールレアリスム“Advanced”(短篇)+実験詩『四季色花の話』

『キャンバスとゴミ箱が花になった話』シュールレアリスム“Advanced”(短篇)+実験詩『四季色花の話』

☆『キャンバスとゴミ箱が花になった話』
シュールレアリスム“Advanced”(実験短編小説) というわけで、オレは物騒な爆発音で無情にも叩き起こされた。
 ドコ――――――ッッ……! バコ―――ンッッッ!!
 一体どこの馬鹿が、こんな朝っぱらに騒いでいるのだろうか。
 オレは、ハッと目を開けた。
 すると──。
 なんとなんとなんとぉ!!
 オレの部屋の天井が、
たった今、撤去と解体作業が行われ

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幻想短篇:『花の世界で暮らす少女の話』

幻想短篇:『花の世界で暮らす少女の話』

(原作:ジュール・シュペルヴィエル)

 優しい朝の光と、遠くから聞こえてくる鳥のさえずりで、
わたしは目が覚めました。
 視界に入ってくる最初の光景は、
天使が優美に舞うフレスコ画の天井です。
 誰が描いたフレスコ画なのかは、わかりません。
 それにしても――。
 とてもとても、とーっても、高い天井です。
 おそらく、わたしには一生、
手が届きそうにない――と言ってもいいくらい天井は高いです。

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すぐ読める!忙しい人向けのためのシュールレアリスム二篇(12/31追記更新♫) New!!

すぐ読める!忙しい人向けのためのシュールレアリスム二篇(12/31追記更新♫) New!!

『考えるな、感じろ!(Don't you think,feel!)』
 ブルース・リー主演映画 “燃えよドラゴン”より

第一篇:『シュレディンガーのニャンコドン』←新作!(New!)
そんなわけで、ようやく、わたしは大好きな彼と婚約をし、
結婚式当日を迎えることが出来た。
 教会では、神父様を真ん中に、わたしとフィアンセは向かい合う。
『さぁ、誓いのキスを』
 神父さまにそう言われて、愛しの彼は

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前衛ラノベ『ちーちゃんの青春混沌日和・登校編』

前衛ラノベ『ちーちゃんの青春混沌日和・登校編』

「時間と空間は昨日すでに死んだ。
 われわれは永遠にして普遍なる速力を創造した。
 故に、もはやわれわれは絶対の中に生きている。」
(フィリッポ・T・マリネッティ著『イタリア未来派宣言』より
 訳:鈴木重吉 )

     ☆     ☆     ☆  朝起きたら自分の部屋に、自分の仏壇があって、
トイレに入ったら、自分の骨壷があって、
テレビをつけたら蝦空千鶴とかいう、
中二病をこじらせたような

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短編小説『ちーちゃんの青春混沌日和』

短編小説『ちーちゃんの青春混沌日和』

「きっぱりいいきろう。不可思議はつねに美しい、どのような不可思議も美しい、それどころか不可思議のほかに美しいものはない。」
(アンドレ・ブルトン著『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』より 
 訳:巖谷國士)

 これは朝の段階で既に始まっている話だった。
 なんだかドロネバのヘドロみたいな長くて厭な夢の沼から脱出し――、
 ようやく目覚めたあたしの視界に入ってきたのは、
いつものあたしの住む狭いボロ

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書き初め短編『最初の終わりから、初めの日の始まり』※〈意識の流れ〉の描写あり。

書き初め短編『最初の終わりから、初めの日の始まり』※〈意識の流れ〉の描写あり。

『新年、あけましておめでとう!』
 何も見えない、暗闇の世界から舞い降りた一雫の声。
 それは翼を広げるように光輝き、やがて、波紋が広がるように、
暗闇の世界は光の世界へと生まれ変わった。
 ――誰の声かしら?
 その声の主が誰なのかわからない。
 わからない――けど、遠い昔から、
その声が“何か”をわたしは知っていた。
 そして声の主は一人ではなかった。
 一人のようだけど、二人三人四人五人六人

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『わたしの物語美術館へようこそ!』 後編(途中まで発表)

『わたしの物語美術館へようこそ!』 後編(途中まで発表)

【まずは年末の挨拶】

ごきげんよう、愛しき諸君! 蝦空千鶴じゃ。
超お久しぶりで、そして、ただいまである。
わらわの更新が急に途絶え、今までどこで何をしていたのか、
それは何を隠そう、11月頃から、わらわは放浪の旅をしておったのじゃ。

そのため、人間界の関係者とやらとは、必要最小限以外、
ほぼ誰とも連絡をとらず、
noteはもちろん、ネットも何も繋ぐことはなく、
あらゆる世界を文字通り飛んで旅

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『わたしの物語美術館へようこそ!』前編(note短編小説)

『わたしの物語美術館へようこそ!』前編(note短編小説)

 わたしの初恋の場所は、“物語美術館”だった。
 なぜ、花弁が舞い踊る、満開の桜の木の下ではなく、歓声と熱気が渦巻く学園のグラウンドでもなく、蜂蜜色の光に包まれた放課後の教室でもなく、森閑の森と化した夕暮れの図書室でもなく、
無邪気な音たちが戯れる音楽室でもなく、“物語美術館”という摩訶不思議で聞き慣れない場所なのか、それはわたしにもわからない。
 けど、その摩訶不思議で聞き慣れない場所で、わたし

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序章短編:「わたしにとっての、初めての“出発”の始まり」

序章短編:「わたしにとっての、初めての“出発”の始まり」

 わたしは、かつて鳥でした。
 わたしが鳥だった時の無垢な記憶は、生まれたての赤子のように目をつむって今の“新しき”〈私〉の心に、優しく抱擁しています。
 かつて鳥だった――鳥として生きてきた――という記憶に優しく抱擁された状態で、かつての〈わたし〉は今の〈私〉として生まれ、現在を生きているのです。

 わたしは次のような時、かつて鳥だった時のことを思い出します。
・毎朝、起き抜けに、ベランダに出

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