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たどり着いた先祖の地には、とんでもない◯◯があった!【ファミリーヒストリー入門】

~前回までのあらすじ~
いい歳(27歳)して両親と会話をしない四ツ谷氏は、家族の絆を取り戻すため、否、永遠と思われる思春期を終わらせるため、知られざる先祖を探す旅に出るのであった。ついにルーツの地・隠岐島に上陸した我々は、現地調査を開始する。先祖の足跡をもとめて、除籍謄本に記載されている本籍地にむかうが……。
案内人:北山

四ツ谷:本籍地の住所はこの辺なんだけど。豪邸はどこ?

北山:新しめの民家はあるけど。四ツ谷さんの家かな? ちょっと直撃してみてよ。俺が行くと怪しいから四ツ谷が行ってこい。

四ツ谷家の本籍地には、綺麗な住宅が建っていた

四ツ谷:すみませーん。ごめんくださーい。……。

北山:いなかったか。表札もないし、インターホンもない。

四ツ谷:なんでインターホンがないんだよ!

北山:向かいのコンビニで話を聞いてみようか。

あまり見たことがないコンビニエンスストア

四ツ谷:このあたりで、四ツ谷さんという家はありますか?

コンビニのおじさん:四ツ谷さん? 〇〇ちゃんって子の家かな? 地図見せてあげるよ。

四ツ谷:すぐ近くですね。ありがとうございます。俺の本籍地に住んでるのは四ツ谷さんじゃないみたいだ……。

北山:親切な店員さんだったね。では、また直撃しよう。直撃する時はいかに怪しまれないようにするかが大事。「調査」とか言っちゃうと怪しいから、「観光でこのあたりに来たんですけど、近くに親戚が住んでいたこと思い出して」くらいのことを言っておこう。
がんばれ四ツ谷、心に営業マンを宿すんだ。

四ツ谷:行かないと後悔するから、行ってくるよ。

四ツ谷:すみません。観光でこのあたりに来たんですけど、曾祖父の家が近かったことを思い出して。「四ツ谷継雄」ってご存じですか?

おばあさん:いや、知らないわねぇ。うちも四ツ谷だけど、わりと最近に出雲から来たのよ。

四ツ谷:これがうちの家系図なんですけど、見覚えのある名前はありますか?

おばあさん:うーん、ちょっとひとりも分からないわ。

四ツ谷:北山、ということでした。

北山:残念ながらはずれか。近所をもう少し探索してみよう。何か知っている人がいるかもしれない。

〜近所を捜索中〜

四ツ谷:おい、こっち! なんか廃墟がある!父親から聞いた他人に譲渡した土地って、たぶんここだよ!

しばらく人が住んでいないと思われる廃墟
中に入ることはできない

高端:やっぱり廃墟じゃねーか。

北山:本籍地と隣接していたか。もとは四ツ谷家のものとはいえ、一応他人の土地だから、不法侵入にならないように様子を見てこよう。

四ツ谷:あ! 譲渡した人の名前が表札に書いてある!

北山:この人は親戚なの?

四ツ谷:どうやら、分からないらしい。親戚かもしれない。

かつて親戚が住んでいたかもしれない住宅に手を合わせる四ツ谷氏

北山:近所の人に事情を聞いてみるのが良いね。隣の家に直撃してこい!

四ツ谷:もう慣れたもんだ。任せろよ。

四ツ谷:畑仕事中すみません。隣の廃墟なんですけど、持ち主の方についてご存じですか?

おじいさん:〇〇さんって人だけど、ずいぶん前に出て行ったよ。いまは大阪にいるみたい。

四ツ谷:「四ツ谷」という家についてご存じですか?

おじいさん:聞いたことあるなあ。小さい頃の記憶だけど。

四ツ谷:!? 実は僕は隣の家を所有していた四ツ谷家の子孫なんです。四ツ谷家がなにをしていたかご存じですか?

おじいさん:そうなの? 分からないなあ。子どものころの記憶だから。でも、五箇村ってところから来たって言ってた記憶があるような……。

四ツ谷:隠岐島内の集落ですね。ありがとうございます。

四ツ谷家の本籍地近く

北山:重要な証言が出たな。あのおじいさんが80歳として、70年くらい前には、四ツ谷家はこの家に出入りしていた。

四ツ谷:土地を譲渡したのが、1991年。そのころには四ツ谷家は確実に隠岐を離れていたけど、時々顔を出していた可能性がある。他人に譲渡する時には隣の家にも挨拶するだろうし。

北山:もうちょっと聞き込みをしてみるか。ちょうど庭で植木の剪定をしてるおじいさんがいるから、行ってきてよ。

四ツ谷:ほいさ。

四ツ谷:すみません、ちょっとお話を伺いたいんですけど。

おじいさん:………。

四ツ谷:(あれ、耳が遠いのかな)すみませーん!

おじいさん:………。

四ツ谷:(目は合ってるんだけどな) あの……。少しお時間よろしいでしょうか。

おじいさん:(剪定ばさみパチン!)

北山:どうだった?

四ツ谷:ガン無視された挙句、剪定ばさみで威嚇された。あれは殺意があったよ。マジで。

四ツ谷氏の先祖はこの町で暮らしていた

北山:セールスマン……には見えないわな。顔が気にくわなかったんじゃない?「まさかこの顔は、追い出したはずの四ツ谷家の末裔が戻ってきやがった……!」的なさ。

四ツ谷:なら、命拾いしたよ。

北山:本籍地の調査はこんなもんかな。次は四ツ谷家の墓を探してみよう。

隠岐牛を食べて疲労回復

北山:1994年生まれ。ライター/歴史研究者。一橋大学大学院社会学研究科修了。中学時代に先祖調査に夢中になり、そのまま日本家系図学会に入会。その後は大学院で日本近世史・村落史・由緒論を学ぶ。署名は(円)。

四ツ谷:1996年生まれ。学術書編集者。弟と父親のLINEを知らないくらいには、家族と没交渉。署名は(四)。

高端:1994年生まれ。医療系メーカー勤務。何も事情を知らないまま、北山と四ツ谷に隠岐島へと連れて行かれた。署名は(高)。


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