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半世紀前から普通の人生に挑戦した車椅子おばあちゃんの物語

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語1~58
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#おばあちゃん

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊱

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊱

「落ち着いて、落ち着いて」

1999年の早春
「あ~、し・あ・わ・せ」
と、1日の家事を終え、子供達が寝静まった後
真夜中に一人で浴槽に浸かっている時でした
「ふ~」
そういえばさっきテレビでやってたなぁ
ふと思い出し
『乳がんの自己診断方法』とやらをやってみました
「あるわけないけどね~」
・・・
「え?」
「ん?」
右の乳房に小豆ぐらいのしこりが…
「まさか…ね」
何度触りなおしても
やっぱ

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊸

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「初めて愛情を注いだ小さな命」


この頃、15歳になる長男たつのりくん(トイプードル)は心臓が弱り、
お散歩は行かないようにと獣医から言われ、
さらに、ひどい歯槽膿漏で度々口から出血するという状態でした。

仕事から帰ると娘が
「ママ、タッチがまた口から血が出てるよ」と言い
急いで、かかりつけの病院へ連れていくという繰り返しです。
「もう病院は連れてくるのもかわいそうだから、お家で静かに過ごさ

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊺

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「チャンスの神様の前髪をわしづかみ」


状況は極めて困難
僅かな失業手当もあっという間に期限切れとなってしまい
職業相談にハローワーク通いも始めました
障害者求人で何かいい求人ないかなぁ
と僅かな希望を持ちつつ、職探しです

新聞折り込みの求人広告を隅から隅まで見ていた
そんなある日、求人広告の隅っこに小さな小さな記事を発見
「事務員募集」
普通の事務員募集は大体が車椅子NGだったのですが

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊿

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ピカピカのバリアフリーオフィス

2012年
56歳、四捨五入すると60歳で
再びフルタイム勤務の始まりです。

通勤時間は渋滞もあり1時間弱はかかります。
朝3人分のお弁当を作り(長女は友人とルームシェア中)
会社の制服姿で出勤です
本社が都内にあるためでしょうか、胸元に大きなリボンが付いたオシャレな女子事務員の制服は56歳の私にはかなり抵抗があるデザインでしたが、
鏡に映った制服姿にちょっと

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語51

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語51

「死んじゃうかもしれない」

途切れてしまった電話
しばらく待っても再度の着信はありませんでした
「どうしよう」
とりあえず、専門学校の先生に連絡を取りました
状況を説明し、先生も情報を集めて、現地と連絡を取ってくださるということになりましたがなかなか難しいようです。
仕事中でしたが、Twitterで現地の状況を調べ続けました。
大きな地震があったことは分かりますが、ほかには何の情報もつかめずに

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語53

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語53

「何一つ恩返しが出来なかった」

その朝は珍しく雪が降り始め、大雪の予報が出ていました。
出勤時間にはまだあまり積もっていなかったので、
とりあえず出勤したのですが職場に近づくにつれて雪は激しさを増し、
いつもの通勤路はあっという間に雪景色に変わってしまいました
慣れない雪道を慎重に運転している時に妹から着信がありました。
「もしもし、おはよう、どうした?」
「じいじいが危ないんだけど、この雪じゃ

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語54

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語54

「そうだ、ハワイに行こう!」

還暦を迎えました。
いよいよ、普通のおばあちゃんデビューです、
定年退職後の雇用延長はお給料が大幅に下がってしまうので
「もういいかな」と、退職するつもりでした。
ところが、会社からのご厚意で仕事を続けることになりました。
定年は定年なので、少しだけ退職金と、残っていた有給休暇をとれるので
「どこかに旅行でもしたいな」
とソワソワし始めました。
「よし、決めた」

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語57

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語57

「花嫁が大好きなおばあさま」

翌年、長女の結婚式がありました。

「ママ、ドレスでいいかなぁ」
「お着物はちょっと無理だし」
「え、でもね、友達の結婚式で花嫁のお母さんがドレス着てたら
スタッフに一般参列者と間違われちゃったみたいよ」
「着物、着れないかなぁ」

数日後、長女がLINEでURLを送ってきました。
「これ、どうかな」

ホームページを見てみると「明日櫻」という車いす用着物のレンタル

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語58

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語58

「母が私の指を思い切り嚙みます」

「おめでとうございます」
「今年もよろしく」
いつものお正月のように実家の玄関先には
母の得意な煮物の美味しそうな匂いが漂っています。
「ああ、おめでとう」
そういう母の弱々しい声が返ってきました。
部屋を覗くと、ベッドに腰かけている母が辛そうにしています。
「具合悪い?」と聞くと
「ちょっとね、お腹がね」
みると、腹水がたまり、おなかがパンパンに張っています。

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