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おいしさを開く鍵

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料理が苦手な方、好きだけれど億劫な方、 そして大好きな方へ、私なりの小さな自信の積み重ね方をご紹介します。
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#創作大賞2023

レバーペーストを、ゆっくり仕込む。

レバーペーストを、ゆっくり仕込む。

鶏のレバーペーストは、娘の大好物の一つ。

以前は塩とスパイスで下味をつけて玉ねぎやにんにく、ハーブとともにフライパンで炒め赤ワインを振り、ミキサーでバターと生クリームと混ぜる、というパパッとしたやり方でしたが

レバーを低温調理でゆっくり火を通してみると
箸で挟むだけでグッと食い込むほどにとろりと仕上がり、
ミキサーもいらなくなりました。
仕上がりの風味もより濃くなるので、気に入っています。

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古梅干しと煎り酒

古梅干しと煎り酒

梅仕事の話をする季節ではありませんが、
我が家に残る古い梅干しの話を。

それはもう30年以上も前の、息子の育休中でした。
初めて10キロの梅を漬けたのです。

梅自体の種類も塩のまぶし方も干し方も心許なく、その時に縋るように読み込んでいたのが乗松祥子先生の「梅暦、梅料理」の本。

ページごとにその面白さに魅せられ、
エキス、シロップ、梅酒にカリカリ漬け、甘漬けなど、梅仕事のワクワクする楽しさに、

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残りものが輝くケークサレ

残りものが輝くケークサレ

ケークサレは、
塩味のケーキ。

ケーキという名ですが、
どちらかと言うとお惣菜や酒肴に近く
お菓子よりもずっと気軽に作れること、
そしてその懐の深さに、何だか惹かれています。

仕事のあとに残る、たくさんのいろいろな切れ端。
それを焼いたり炒めたり揚げたりして家の料理にするのですが、
さらにその料理がひとくちずつ残った時、
生地に混ぜて焼いてみると
残り物によって、そのさまざまな仕上がり方が実に

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朝から焼けるシンプルスフレ

朝から焼けるシンプルスフレ

秋になると無性に拵えたくなるのは
何と言ってもあったかスイーツ。

なかでも今日のようにブルっと震える寒い朝、
焼きたてのスフレを、しぼまないうちにハフハフできたら、
鬱陶しい気分も吹き飛んでしまいそう。
(だから痩せたい気持ちも、どこかへ…。)

基本は卵に砂糖、牛乳とバターがあればできますから、思いついた時に取りかかれるのもうれしいところです。

甘くせずに、ベーコンやキノコのソテーを混ぜたり

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小豆を炊く時

小豆を炊く時

これまで何度、小豆を煮ただろう。
と思いながら、ふつふついう鍋の中を眺めています。
毎回少しずつ違う、あんこの奥深さ。
なぜか夜中に炊くと、うまく行く気がしてからは
家族が寝静まった頃にやり出すように。
眠れない夜などにはぴったりなのです。

こうして小豆を炊きながら、色々な思い出が次から次へと心中に去来するのもまた愉し。

小豆の仕事が入り、
とても稀少な備中(びっちゅう)の白小豆を探していたと

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自由が幸せ、タルティーヌ

自由が幸せ、タルティーヌ

タルティーヌというと
響きが巻き毛の女の子みたいで
なんだか気取って聞こえますが
うちのは、まさに上の写真のように至極テキトーなもので、
焼いたバゲットに今あるものや残りもの、なんでもその場のノリで組み合わせてしまうオープンサンドです。
わざわざ作るというより、じゃんじゃんのせて片付けてもらう、イメージ。

バスクのピンチョスに似てはいますが、ソースと具の味を構築していく印象のピンチョスとは、まる

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レモンの愉しみ🍋〜くだものの葉

レモンの愉しみ🍋〜くだものの葉

我が家の小さな庭の左端に、レモンの木が植わっています。

苗木を植えてから6年めでやっとひとつ。
それからはどんどん増えて、毎年の収穫が楽しみになりました。

初めてできたそのレモンは、もう嬉しくてもったいなくて、
家人にいつ食べる?と聞かれても、なかなかもぐ気にならず、
眺めてはニヤニヤほくそ笑んでいたのですが、
そうやってぼやぼやしている隙に、
その尊いレモンがある日忽然と、
姿を消してしまい

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うつわの衣替え

うつわの衣替え

木々の緑も日毎濃くなり、爽やかな初夏の頃がやってきました。
楽しそうな鳥の囀りを聞いていると、なんだかふーっ、と深呼吸したくなります。

江戸料理を教わったある料亭で、
器たちも、衣(?)替えをすると良いと習い、
そこでは四季それぞれにやっておられました。

春の器は使う時期が短いので、我が家ではそれほど大きく入れ替える必要もなく、
夏前のこの時期に、先生に倣った分け方でやり始めています。

特に

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旬のチカラを満喫する〜春

旬のチカラを満喫する〜春

毎日作るいつものおかずに、季節感をひとふり。

すごくささやかなことではありますが、
作る心持ちが、明らかに違ってきます。

料理に割ける間が多くないからこそ、
こうした旬の小さな味方たちは大切。
その心強さに、思いのほか支えられている、と気付かされるようになりました。

また、どうしても元気が出ないとき、
毎年の旬を先取りし、満喫し、名残りを惜しんでみてください。
自然の一部でもある食材を扱って

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メニューが思い浮かばないときは

メニューが思い浮かばないときは

…皆さん、どうされていますか?

先日、料理が億劫になったときの私なりの思いのあらましについて、書かせていただきましたが
今回はさらに具体的な形で、補足してみたいと思っています。
日々の料理についての考え方の一助にしていただけたら嬉しいです。

SNS等を通してご紹介している日々のかんたんご飯をご覧になってくださった方々から、ご相談を受けることが度々あり
その大半が、毎日なにを作るか考えるのが面倒

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食卓の、ハレ(晴れ)とケ(褻)について

食卓の、ハレ(晴れ)とケ(褻)について

ハレとケ。
非日常と日常。
お祭りやお祝い、行事の日と、何気ない普通の日。
英語にするとformalとinformalでしょうか。
どうもそれでは括りきれない、日本ならではの伝統の根底にある一種の祈りのようなものが、確かにそこにあると感じています。

例えば身につけるもの。
元旦、七五三、結婚など、当日に晴れ着を着たり、参拝したり、きちんと形を整えてみると、普段の日とは段違いにスーッと、良い心持ち

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料理が億劫になったとき

料理が億劫になったとき

私は頭の中がほぼ食べものという変わり者のため、作るときにはほぼしんどさや億劫が顔を出すことはありませんが、片付けも料理のうち。
ああ、あの時はしんどかったなあ、なんていう思い出は、やはり沢山、心の奥にあります。

使った道具や鍋、器を洗って拭い、元にあった場所に戻すだけでずっとすっきり片付いていることがわかっているのに、朝も晩もいつもぎりぎり。
頑張っているはずなのにうまく行かず、家事が終わり切ら

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ひとさじの強い味方たち〜スペイン・バスクの料理〜

ひとさじの強い味方たち〜スペイン・バスクの料理〜

それはまだ自由に海外に行けていた頃、
スペイン・バスク地方の街へ訪れた時の話です。

旧市街をそぞろ歩いてみれば、
どの路地にも数多くの魅力溢れるバルが立ち並び、
わくわくしながら覗いてみると、
チーズ専門、肉に強い、シーフード多め、賞を獲得した最先端の店など、それぞれ固有の趣向を凝らしたピンチョスたちが、カウンターの端から端まで数え切れないほどに華やかに並べられ、
その壮観な眺めには、毎回心が躍

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料理のなかの科学

料理のなかの科学

「料理は芸術であり、しかも高尚な科学である」という言葉を聞いたことがあります。
芸術ととらえられるかどうかは、作り手の思い入れや腕によってまちまちなところがあるものの、
科学については実感をもって気づかされることが頻繁にあります。

裏ごし器のざるの目に垂直、平行でなく、斜めにへらを押し付けるとよく潰れるとか、黒豆に鉄の釘を入れると黒く仕上がるとか、酢と油で乳化させてマヨネーズやドレッシングができ

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