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食卓の、ハレ(晴れ)とケ(褻)について

ハレとケ。
非日常と日常。
お祭りやお祝い、行事の日と、何気ない普通の日。
英語にするとformalとinformalでしょうか。
どうもそれでは括りきれない、日本ならではの伝統の根底にある一種の祈りのようなものが、確かにそこにあると感じています。

例えば身につけるもの。
元旦、七五三、結婚など、当日に晴れ着を着たり、参拝したり、きちんと形を整えてみると、普段の日とは段違いにスーッと、良い心持ちに。

食卓でも、記念日などのハレの日のお祝いをするのは、毎年なんとなしにワクワクと心浮き立つものです。
服装と違って、いつもとまるで違う御馳走を並べるというよりは、料理の一隅に、記念日を思わせる型抜き野菜をしのばせたり、食後の甘味の楽しみをプラスしたりと、
ケの日が少し豪華になった程度のささやかな変化の方が長続きすると考えています。

それに対して、ケの日は、ごく普通のいつもの1日。
いつもいつもハレの日では疲れてしまうし、ケの日があるから、たまにあるハレの日が際立ちます。

ケの日の食卓は、ぐんと肩の力を抜いて買い物もあまりせずに、残ったものを形を変えてみたり、冷蔵庫に並ぶご飯のお供を片付けたり。
こういう適当な感じを淡々と繰り返しているようですが、何十年も積み重なったケの日が、最近、ハレの日より輝いて感じる日があります。
歳を経て、きっと永遠に続くことではないと気づいたから、かもしれません。

今日の豆腐は味がしっかりしているね、
糠漬けがうまく漬かってよかった、
お腹が空いて、今日も元気!などなど。

これらは、きっと「ケの中にあるハレ」なのだと思います。

ごく気楽で、
でもなんでも良いわけではなく、
一日一日を大切にしたいとより思わせてくれるのが
ケの日の食卓なのでしょう。


ところで、ハレの日にありがちな、おもてなしや記念日の準備のこつについて。

大変そうなイメージがあるかと思いますが、
私はほぼ完全に仕上げることはなく、最初の酒肴以外はその場にいる人達に手伝ってもらうことも、また楽しみの一つになっています。

例えば、下記の献立。春のおもてなしの一つです。
作るメニューを組み立てたら、一つ一つの仕上げ時間から逆算して、前の日からやることを表にして整理すると、思いのほか隙間時間がたっぷりとあり、料理が上手くなったかも?という気になれたりも。

作る前に、縦軸に時間経過、横軸に各料理名を配した段取り表を書くとわかりやすいです。
(表の形式をこちらに載せられず、見にくいですが、箇条書きで書きますね。)


鯛めし
潮汁
鰆の焼きびたし
春の胡麻和え
炊き合わせ
グリンピース鹿の子

(前日)

炊き合わせの筍の下茹で
グリンピース鹿の子の寒天を水に浸す

(3時間前)

潮汁の白髪ねぎ
甘酢生姜
うずら卵を茹でて皮をむく

(2時間前)

炊き合わせ用の出汁を取る
焼き浸し用の酒とみりんを煮切り冷ます
グリンピースをさやから出し茹でる

(1時間前)

鯛めしの米を研ぎざるにあげる
鰆に塩と酒を振る
炊き合わせの蕗の板ずり、素材の下茹で→筍、蕗、抜いたにんじん、絹さやを切り下茹でし、うずら卵と共に味付けした出汁で煮る
胡麻和えの野菜を茹でて水気を切る
グリンピース鹿の子用の丸めたあんに茹でた豆をのせる

(45分前)

鯛めしの鯛をさばく、塩を振る
炊き合わせを煮汁ごと冷水にあてる
鹿の子用の寒天液を作る

(30分前)

鯛めしを炊き始める、鯛切り身を焼く
潮汁の昆布出汁を火にかけ調味
鹿の子に寒天液を掛け冷やす

(15分前)

鯛めしの鍋に焼いた鯛を入れ火加減
鯛のあらに熱湯をかけ昆布出汁の鍋に加える
焼き浸しの漬け汁を煮立たせる

(10分前)

潮汁を丁寧にあくをひく
鰆を焼き、漬け汁に浸す
胡麻和えの和え衣を作る

(5分前)

鯛めしに木の芽をのせ蒸らす


(テーブルへ)

鯛めしを鍋ごと供する
潮汁を椀に盛り白髪ねぎを天盛りに
胡麻和えを盛り付ける
炊き合わせを盛り付ける
焼き浸しと甘酢しょうがを盛り付ける


(食事が落ち着いて)

冷やした鹿の子を盛りつける


料理屋さんのように完璧なおもてなしを、家庭でされるとかえって疲れたりすることもあります。
そばにいるみんなに手伝ってもらいながら、楽しんで作ると楽になりますよ。

ハレの日のうきうきする楽しさと、ケの日の変わらない安らかさ。
どちらも捨て難い良さに溢れています。

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