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散文

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#日記

写真詩『始まりは地球』

写真詩『始まりは地球』



いたずらに始まったその熱は
過去の人の途切れた思い
夢の出来事は思い出になっている
丸窓から飛び出したカエルのような
突飛な日々こそが人生かもしれないのに
みんな現実じゃないって言う
君もそう思うかい?

写真詩集の『冬』の制作を始めました。
前作『はみ出す青』は、夏から秋にかけてのものでした。

なので、今作は秋から冬にかけてのものにしたいと思っています。

今回はフィルム写真のみでお送りし

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散文 私を生きる場所

散文 私を生きる場所

泣いていた。

私は泣いていた。

丁寧に家の片付けをして、洗濯物を畳み、お風呂を洗って、私の食べないご飯を作った。

二十歳を超えてもう数ヶ月。
夜の街にフラフラと歩き出す。

そういえば、猫は鳴かなかった。私が出ていく時、ケージに入れた猫は何も訴えなかった。いつもは切なそうに鳴くのに今日は何も鳴かないで、私が出ていくことに気付きもしないようだった。

それが悲しかった。きっと鳴いたら鳴いたで、

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詩『入道雲の残党』

詩『入道雲の残党』



夏戻り醒めない夢を届ける雲の微かなエグ味
泣けない子供に注ぐ青はただならぬ
自分の生命力を奪われて
さて、という

はじめましてはここにない

散文 外眺る君の輪郭線は青と緑

散文 外眺る君の輪郭線は青と緑

とりとめもなく、私の心には不愉快という靄がかかる。空の青さがその曇をより汚いものとするから、もういいかなって思い始める。

ベッドの上、何もせず、ただ嫌悪する。

自分に嫌気がさし、気を逸らす為に、音で頭を埋める。

そんな時間を過ごしていた。ふかふかと当たる空気の質量が夏を思わせて、夏休みがとうの昔に終わっていることを思い出し、また怪訝になる。

私は闇に引っ張られているのだ。影の方が心地が良か

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散文 点滅と借り物

散文 点滅と借り物



街が点滅している。

反射する川の色は、深い愛よりも歪に赤と青を折り合う。
重なり合った空をなぞるように私は見ているのだけど、きっと何も見えていないんだ。

高い場所に来た。街の中でも高い場所。夕焼けを見たいがために歩いた足は不安がある。何でこうなってしまったんだろう、なんて言葉を出せないほどに私の舌は硬く怯えている。

空が燃える。

どこかの放火をいつも毎日大きく写し出していた。

街が点

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散文 空気の色と駆け抜ける

散文 空気の色と駆け抜ける

風が優しくなった。それは、世界が私に優しくなったのか、私が世界に優しくなったのか。

自転車で駆け抜ける街を私はよく見ててこなかったんだと気づく。コンクリートを突き抜けて生えていた雑草の強さが少しだけ自分の身に着いてきた、と言えたらいいけど、そこまで私は意思がない。

黒猫が路地をゆく。

それを私も横目に見て、気にしなかった道を進む。駆け抜けて、駆け抜けてなお、私の街。何故、この街を自分のものだ

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写真詩『愛おしさと風』

写真詩『愛おしさと風』



滑り台の下に置かれたカバンたち
どこかから聞こえる工事の音
待ち合わせ場所だったカーブミラー

蘇るようになぞるように
風になる

自転車はキィキィ鳴るけど
それも全てこの秋の奏でる一部で
ふと生きた感覚が指先に
鼻の先の冷たさをすぐに忘れる

秋のいつの日かを思い出すとき
この目に映るものが
息衝いていたことを理解するのだろう

散文 ずっと見ていたい

散文 ずっと見ていたい



愛情は足ることがなかった
ずっと君を見ていたい

一方的にならないように
迷惑にならないように
そう思ってはいるものの
寝ている時は構いたくなる
触れ合っていたい
君の鼓動を聞いていたい
トクトク鳴るのが気持ちよかった
私を愛して欲しかった

愛が伝わる膝の上の温かさ
猫のモーター音は私に響く

「猫かいなっ!!!」というツッコミであってます😊😊

猫が可愛いんです。ナギが可愛いのです。

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散文 夏色に乞う

散文 夏色に乞う

進行方向に向かって座ったまま何キロで進んでいるかも分からないで、目的地に行こうとする。そんな私と同じようにスマホをいじるだけの乗客もみな、いつの間にか半袖に衣替えをしていた。

世界には黒と白しかないのかと思うぐらい彼らの服装は無彩色であった。色があるのは私だけなのか。多数に流される方がきっと楽だ。でも、私は色が好きだ。夏の毒々しいほどの名前の知らない赤い花とか、遊びに行くからと玄関に投げ捨てられ

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散文 夏を撒く

散文 夏を撒く

私は今、蚊に刺されている。左の肘に少しの痛みを感じたから目をやると細い足と胴、そして翅がそのサイズよりも存在感を表していた。すぐに腕を動かすと消えた。ぎりぎり噛まれていなかったのだろう。だけど、先の痛みを意識してしまって、痒くなってきた気がする。気の所為かもしれないけど、痒い気がする。こそばゆくて、痛い。

私はきっと思い込んでいるだけ。痛みを作り出しているだけでしかないんだろう。今もずっとジーっ

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文体練習 比喩の坩堝はどこに

文体練習 比喩の坩堝はどこに

一文を長くしようのコーナーです。
比喩に比喩を重ねる文体をやってみます。

もう戻れないと知っていても、僕はただ使われることの無い公園のベンチに我が物顔で眠り込む猫のような君を見つめることしか出来なかった。

空はどこまでも青くて、息が止まりそうなほどの夏を受け止めるためだけに肺を膨らませる。

ああ、と言うだけのアイツは、俺の事を心底嫌いなのに全てを包み隠そうとしたあの女に似ていて吐き気がした。

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散文 丘の上の夜

散文 丘の上の夜

ただ信号が青から赤へと変わる。

車が通っていくのが、ここからでも見てとれた。

夜とはこんなにも明るいのか。遠くの景色は赤の点の光。赤、赤、赤。きっとビルの屋上の光だ。

カタカタカタと草がなっていたはずなのに何故か今は聞こえない。風だってこうして吹いているのに、あの音はしない。先程まで人が来たのかとドキドキするぐらい気になっていたのに、いつ音がしなくなったのかわかっていない。

空は明るい。月

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散文 描けない感情はないも同然

散文 描けない感情はないも同然

嬉しい感情を描きたくても、私は言葉で遊べない。暗いことなら、色々な表現を思いつくのに……。
やはり、人の心は闇のことを強く保持しようとするのだろうな。
最近喜んだ記憶が無い。日々それなりに楽しくやっているのに、何故か沸き立つ思いが見当たらない。
だから、私はぐるぐると。
ぐるぐると、ただ一つの傷をぐるぐると。
いつのまにか
新たにできた傷を
ぐりぐりと。
忘れないうちにまたあの傷を、痛みを理

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夕焼けに心惹かれすぎる人は西方浄土の住民なの【散文+短歌】

夕焼けに心惹かれすぎる人は西方浄土の住民なの【散文+短歌】



空から何かが変わった。
それは誰にとってのものではなく、ただ完全に変わった。
全ての変化は空から変わる。
変化は全てきれいなもの。
何もかもが変わるというのに、空を見上げていない人がいる。
世界中の何人がこの空を見上げているだろうか。多くの人がみているはずだ。
こんな世界はそうそうない。
そんなことはない。
これはいつもだ。
毎日、世界は変わっている。
このような変化を日々をこなっている。

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