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散文 点滅と借り物
街が点滅している。
反射する川の色は、深い愛よりも歪に赤と青を折り合う。
重なり合った空をなぞるように私は見ているのだけど、きっと何も見えていないんだ。
高い場所に来た。街の中でも高い場所。夕焼けを見たいがために歩いた足は不安がある。何でこうなってしまったんだろう、なんて言葉を出せないほどに私の舌は硬く怯えている。
空が燃える。
どこかの放火をいつも毎日大きく写し出していた。
街が点滅している。
誰もその一員であることに気づいてない。
誰かのために照らしたわけじゃない、ただただ自分が生きるためだけの光。
私はそれを俯瞰していたかった。
どうしようもなく泣いた日の記憶。
自分の心が何者かに左右されたようなあの日。
そういう、自分の体もコントロール出来ない私は持ち主として正当じゃないのにな。
私の魂と体という貸し出し物。
空の幾重の中に返す場所がある。
灰色の強い部分、赤みの強い部分、白さがある部分。
行くべき場所が決まっている。
くすんだようなあの色にどうしても心が惹かれるのは、目が離せなくなるのは、きっと元いた場所だから。
お借りしている体を汚して、すみません。
使いきれなくてすみません。
そんな思考をかき消すようにカラスが鳴いた。電車が通過する音が大きく聞こえた。
期間限定な人生を私はこの空と共に生きていく。
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