#短編小説
SS『私と共に生きるもの』
前作『校舎はどこかに繋がる』で【暴風】というお題でコラボさせて頂きましたkiiさんの絵の作品に小説をつけさせて貰いました。
「誰が初めに言ったのだろうね、桜の木の下には死体が埋まってるだなんて」
先生はテスト中に外を見てそっと呟いた。窓際最前列の席の私にしか聞こえないようなその優しい声は、体育科の先生とは思えないものだった。
数学をカリカリと解く空間は、嫌悪感と諦めで満たされている。これ
SS『地名が逃げた』
地名が逃げた。きっと嫌気がさしたのだろう。ありとあらゆる看板から各地の地名は逃げてしまった。交差点に差し掛かっても青い板が掲げられているだけになった。通っていた病院はただの『診療所』になってしまった。地域を表していたものは全てが消えた。
ここが何駅かもわからない。
目的地を伝えたとしても、私たちはこことそこの違いを表現出来なくなっていった。
それは今まで言葉に頼りすぎていたからだ
SS『電車の中の平穏』
きぃきぃと音が鳴っている。低音が体の中を走る。視界は白とグレーの間。駅が現れては消え、また現れる。斜めに切れたようなマンションを見て、『日射権』というどっかで習った言葉を思い出す。色つきの不織布マスクをしてる人に高貴さを感じて心も視界と同じ色になる。
男の人が半ズボンを履いている。その足は年老いた大木を思わせた。隣に座るかつては老婆と言われ、社会が長生きすることに慣れたからおばちゃんと形容するよ